労作である。民主党は2009年総選挙で「任期中の4年間は消費税増税はない」と言い切り政権についたが、首相の政治生命を懸けてでも、党を割ってでも、消費税増税へと邁進する。これはなぜだったのかというのが、本書の問題意識であり、2010-06-17の菅直人首相「消費税10%」発言から法案成立までの786日間を追っている。概ね朝日新聞記者は何かの絵を描いたうえでのチームプレーには長けていると思うが、著者は一人でこの謎に切り込んでいる。その描写はスリリングであり、貴重な記録として読める。
結論からいうと、本書は、民主・野田―自民・谷垣が党内事情を超え、日本の将来のためぎりぎりまで歩み寄った奇跡だと捉えるが、残念ながら、キーマンとなった菅直人、野田佳彦らがなぜ増税への問題意識を高めたのかというところにまでは至っていない。
菅、野田とも当初は行政改革・歳出削減路線だったが、政権に入ってみると、歳入改革が急務だと思うようになったとしており、ギリシャ危機後の国際会議で各国首脳から財政規律の危機意識を共有したことを挙げている。ただし、客観的にみても、社会保障関係費が毎年1兆円積み上がるのは危機的状況であったはずで「政権に入ってから気づいた」はあまりに不自然である。
本書で藤井裕久は「マニフェスト通りでは無理だった」と率直に語る。また、常に付きまとう財務省主導・陰謀論については「財務省の根回し」を肯定している。
著者は明確に結論を出していないものの、全体を通してみれば、こうしたことが複合的に動いた結果なのだと読める。
細部だが面白かった点を2つ。
著者は経済記者だが、本書に財政的視点や経済政策分析はほとんどない。政治部記者の手法でひたすら政局のみを追いかけている。これは皮肉を言っているのではない。近年の政治部取材は現場の若い記者はメモ出しするだけで、それをもとにキャップ・デスクが総合判断する傾向がより強まっており、バイアスがかかりやすく現場の思考能力も衰えている。この意味で、自らの問題意識に基づき政局を追っているのは貴重なのである。また、本書に安倍晋三は一切登場しない。安倍は消費税については否定的であり、増税をめぐる攻防では「浦島太郎」のような部外者だった。今では忘れてしまったこの点に気付かされたのはよかった。
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消費税日記〜検証 増税786日の攻防〜 単行本 – 2013/5/30
伊藤 裕香子
(著)
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- 本の長さ344ページ
- 言語日本語
- 出版社プレジデント社
- 発売日2013/5/30
- ISBN-10483342049X
- ISBN-13978-4833420495
登録情報
- 出版社 : プレジデント社 (2013/5/30)
- 発売日 : 2013/5/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 344ページ
- ISBN-10 : 483342049X
- ISBN-13 : 978-4833420495
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,054,591位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 594位政治家
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年6月11日に日本でレビュー済み
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2016年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は消費増税法を「なぜ、成立したのだろうか」と問う。それは「常に答えの出ない問いだった」、と。常に取材してきた記者がそう言うのである。(8,9頁)
本書の中から一箇所を結論として上げれば、藤井裕久民主党税調会長(当時)へインタビューした著者の問い掛けが答えになっている。「スケジュールづくり、段取りや根回しという点では、民主党が苦手な面を財務省が相当カバーしていたように見えます」。これに対し藤井氏の応えは、「反論は、何もありません」。(260頁)
他に特に気になるのは、「財務省は、「戦車の購入」など、増税で政府の歳出に上乗せされる消費税分も「消費税引き上げに伴う支出増」の中に入ると考えていた」。(73頁)
谷垣野党自民党総裁(当時)が「大震災発生直後にいち早く提唱し」(326頁)、「財務官僚たちは、むしろ歓迎した」(114頁)復興増税が三党合意により成立し消費増税の「予行演習」になった(128頁)。
野田佳彦前総理について斉藤鉄夫公明党税調会長は「名を残す」(240頁)とし、新浪剛史ローソン社長(当時)は「立派だった」(175頁)、五百旗頭真復興会議議長(当時)は「一人目の総理だったら、長期政権になっていた」(117頁)、と軒並み異様に高く評価する。
消費税で社会保障をするという基本的かつ根本的な論理矛盾=政策欠陥を傲岸に犯し続ける政権、行政が真っ当な政治、正当な税政に取って代わられるのはいつのことになるだろうか。
本書の中から一箇所を結論として上げれば、藤井裕久民主党税調会長(当時)へインタビューした著者の問い掛けが答えになっている。「スケジュールづくり、段取りや根回しという点では、民主党が苦手な面を財務省が相当カバーしていたように見えます」。これに対し藤井氏の応えは、「反論は、何もありません」。(260頁)
他に特に気になるのは、「財務省は、「戦車の購入」など、増税で政府の歳出に上乗せされる消費税分も「消費税引き上げに伴う支出増」の中に入ると考えていた」。(73頁)
谷垣野党自民党総裁(当時)が「大震災発生直後にいち早く提唱し」(326頁)、「財務官僚たちは、むしろ歓迎した」(114頁)復興増税が三党合意により成立し消費増税の「予行演習」になった(128頁)。
野田佳彦前総理について斉藤鉄夫公明党税調会長は「名を残す」(240頁)とし、新浪剛史ローソン社長(当時)は「立派だった」(175頁)、五百旗頭真復興会議議長(当時)は「一人目の総理だったら、長期政権になっていた」(117頁)、と軒並み異様に高く評価する。
消費税で社会保障をするという基本的かつ根本的な論理矛盾=政策欠陥を傲岸に犯し続ける政権、行政が真っ当な政治、正当な税政に取って代わられるのはいつのことになるだろうか。
2013年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読後、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を思い出した。微に入り細を穿つ描写、膨大な資料と証言の再構築、すべての関係者へのインタビュー。現場記者ならではの著者の筆により、「786日間」をタイムマシンで覗いてきたかのごとき臨場感に引き込まれる。本書では、消費税増税の重要な意思決定過程が、野田総理、谷垣総裁という二人の主人公の言動を中心に主観を排して淡々と描写される。
消費税増税を誰がどのように決めたのか、著者自身の疑問もさることながら、膨大な借金を抱え子や孫につけを回している我々自身が知っておく義務があるのではないか?本書はその恰好の教科書である。
それにしても、(野田、谷垣を除き)出てくる政治家が皆いかに自分が財政再建に熱心であるか語ること、語ること。これまでずっと先送りしてきたのは自公であり、財政のことを何も考えていなかったのは民主党ではないのか。何をかいわんや、野田総理を矢面に立たせておいて恰好つけるなと言いたくなる。
ところで、この難事業が成就する間の安部現総理の言動が著者により暴露されている点は秀逸である。
消費税増税を誰がどのように決めたのか、著者自身の疑問もさることながら、膨大な借金を抱え子や孫につけを回している我々自身が知っておく義務があるのではないか?本書はその恰好の教科書である。
それにしても、(野田、谷垣を除き)出てくる政治家が皆いかに自分が財政再建に熱心であるか語ること、語ること。これまでずっと先送りしてきたのは自公であり、財政のことを何も考えていなかったのは民主党ではないのか。何をかいわんや、野田総理を矢面に立たせておいて恰好つけるなと言いたくなる。
ところで、この難事業が成就する間の安部現総理の言動が著者により暴露されている点は秀逸である。
2014年8月20日に日本でレビュー済み
自民・公明・民主の三党合意による消費増税が決まるまでに、永田町・霞ケ関で一体何が起こっていたのか。
TVはそもそもこうした絵になりづらい報道には向かないし、新聞もそうそう内幕報道ばかりやるには紙面がなさ過ぎる。
だから、こういう本が必要になる。
筆者は現役の新聞記者として、消費増5%からの増税という歴史的瞬間をつぶさに取材し、その成果を極めて冷静な筆致で再現することで、この極上のノンフィクションを仕立てることに成功している。
野田総理(当時)、谷垣自民党総裁(同)らキーマンへのインタビューをはさみながら、消費増税という一大政治課題について、あくまで、綿密な取材に基づいたファクト(事実)をつなぎ合わせて、当時、日本の中心で起こっていたことを再構成してみせている。歴代政権が志向しては頓挫してきたこの難題事を、青色吐息の民主党政権がなぜ成し遂げられたのか。その答えがここにある。第一級の歴史的史料として、後生の評価にも十分耐えうるジャーナリズムの仕事と言えるだろう。
一読して、読者はきっと、あたかも自分が首相官邸や財務省で、政治家や官僚たちが密談したり、記者団に苦しい言い訳をしたりしている場面に居合わせているような錯覚を覚えるだろう、と感じた。なんといっても、実際に自分がそうだったのだから。
三党合意の成立を眼前にしながら、安住さんが岡田さんに「奇蹟だ」とささやいた。そんな徹底した取材をうかがわせるエピソードが盛りだくさんだ。そのなかで、あえてこの本の白眉を挙げるとすれば、筆者の鋭い「観察眼」が、そうした取材対象者だけにとどまらず、当時の空気感のようなもの、そういうものまでをも捉えている点だ。
たとえば、重要な記者会見の場で、会場に並べられたパイプ椅子の様子はどうだったか。窓から見た外の天気はどうだったか・・・。
新聞記者として、会見内容をスピーディーに記事にしなければならない責任を負いながら、一方で、筆者の五感は、そうした緊迫の場を丸ごと正確に記録していた。真実は細部に宿ると言うが、まさに、読者はこうした細かい記述の積み重ねを通して、この筆者のことを信頼し、このノンフィクションを信頼することになるんじゃないか、などと感じた。
民主党政権を受け継いだ安倍自民党政権は、敷かれたレール通りに消費税を8%に上げた。次いで、近く10%に上げるか否かの判断をすることになる。10%に上がれば、消費税は当初の「5%」の2倍となる。政権としても重い判断になるだろう。負担増。その通りだ。アベノミクスの恩恵が大企業や一部のお金持ちにのみもたらされているように見える今、国民としては、新たな支出に文句も言いたくなるだろう。
だが、10%への消費増税が決まったのは、あくまで当時の与党と野党第一党が、七転八倒の末に合意したためだ。消費税10%に賛成するにせよ、反対するにせよ、それまでに何があったのかを正確に知ること。それは、私たち国民にとっても有益であるだろう。
この三党合意は、昨今の集団的自衛権などのように、与党内のお友達だけでシャンシャンで決めたわけではない。少なくない読者が、自公民の綱引きが続いたあの時代を思い出して(といってもほんの2年前なのだが)、あの頃は政党政治がまだかろうじてこの国で機能していたのだな、などと思って、妙な郷愁にかられるかもしれない。
TVはそもそもこうした絵になりづらい報道には向かないし、新聞もそうそう内幕報道ばかりやるには紙面がなさ過ぎる。
だから、こういう本が必要になる。
筆者は現役の新聞記者として、消費増5%からの増税という歴史的瞬間をつぶさに取材し、その成果を極めて冷静な筆致で再現することで、この極上のノンフィクションを仕立てることに成功している。
野田総理(当時)、谷垣自民党総裁(同)らキーマンへのインタビューをはさみながら、消費増税という一大政治課題について、あくまで、綿密な取材に基づいたファクト(事実)をつなぎ合わせて、当時、日本の中心で起こっていたことを再構成してみせている。歴代政権が志向しては頓挫してきたこの難題事を、青色吐息の民主党政権がなぜ成し遂げられたのか。その答えがここにある。第一級の歴史的史料として、後生の評価にも十分耐えうるジャーナリズムの仕事と言えるだろう。
一読して、読者はきっと、あたかも自分が首相官邸や財務省で、政治家や官僚たちが密談したり、記者団に苦しい言い訳をしたりしている場面に居合わせているような錯覚を覚えるだろう、と感じた。なんといっても、実際に自分がそうだったのだから。
三党合意の成立を眼前にしながら、安住さんが岡田さんに「奇蹟だ」とささやいた。そんな徹底した取材をうかがわせるエピソードが盛りだくさんだ。そのなかで、あえてこの本の白眉を挙げるとすれば、筆者の鋭い「観察眼」が、そうした取材対象者だけにとどまらず、当時の空気感のようなもの、そういうものまでをも捉えている点だ。
たとえば、重要な記者会見の場で、会場に並べられたパイプ椅子の様子はどうだったか。窓から見た外の天気はどうだったか・・・。
新聞記者として、会見内容をスピーディーに記事にしなければならない責任を負いながら、一方で、筆者の五感は、そうした緊迫の場を丸ごと正確に記録していた。真実は細部に宿ると言うが、まさに、読者はこうした細かい記述の積み重ねを通して、この筆者のことを信頼し、このノンフィクションを信頼することになるんじゃないか、などと感じた。
民主党政権を受け継いだ安倍自民党政権は、敷かれたレール通りに消費税を8%に上げた。次いで、近く10%に上げるか否かの判断をすることになる。10%に上がれば、消費税は当初の「5%」の2倍となる。政権としても重い判断になるだろう。負担増。その通りだ。アベノミクスの恩恵が大企業や一部のお金持ちにのみもたらされているように見える今、国民としては、新たな支出に文句も言いたくなるだろう。
だが、10%への消費増税が決まったのは、あくまで当時の与党と野党第一党が、七転八倒の末に合意したためだ。消費税10%に賛成するにせよ、反対するにせよ、それまでに何があったのかを正確に知ること。それは、私たち国民にとっても有益であるだろう。
この三党合意は、昨今の集団的自衛権などのように、与党内のお友達だけでシャンシャンで決めたわけではない。少なくない読者が、自公民の綱引きが続いたあの時代を思い出して(といってもほんの2年前なのだが)、あの頃は政党政治がまだかろうじてこの国で機能していたのだな、などと思って、妙な郷愁にかられるかもしれない。
2013年6月5日に日本でレビュー済み
消費税増税という意思決定が「なぜ、成立したのだろう」という素朴な疑問に、新聞記者である筆者は、自分自身が納得できる答えを見つけようとするかのごとくペンを進めたのではないか。
2010年6月17日の菅総理の増税宣言から2012年8月10日の法案成立に至る786日。
その中から節目となる日を取り上げ、何がうごめいていたのか「真実」を浮き彫りにする。
読者は、その日の記憶を呼び覚まされるとともに、その現場に居合わせたかのような感覚に襲われる。
本は、「証言」としてキーパーソンへのインタビューがところどころに挿入される構成になっている。
菅元総理・野田前総理や谷垣前総裁、そして憂国の情により自民党から民主党へ立ち位置を変え担当大臣を務めた与謝野さんなどに対し、聞き難いがどうしても聞いておきたいことを筆者が問い、それぞれが真摯に応えている姿は興味深い。
2010年6月17日の菅総理の増税宣言から2012年8月10日の法案成立に至る786日。
その中から節目となる日を取り上げ、何がうごめいていたのか「真実」を浮き彫りにする。
読者は、その日の記憶を呼び覚まされるとともに、その現場に居合わせたかのような感覚に襲われる。
本は、「証言」としてキーパーソンへのインタビューがところどころに挿入される構成になっている。
菅元総理・野田前総理や谷垣前総裁、そして憂国の情により自民党から民主党へ立ち位置を変え担当大臣を務めた与謝野さんなどに対し、聞き難いがどうしても聞いておきたいことを筆者が問い、それぞれが真摯に応えている姿は興味深い。
2013年6月5日に日本でレビュー済み
税は政治そのものと言われる。
さまざまな利害がぶつかり合う中、税制改革が成就するのは、責任を引き受ける覚悟を持った政治家がいるからだ。
消費税率引き上げともなれば、なおさらである。
彼らの苦悩や決断の軌跡を記録することは、信頼関係の構築と膨大な取材の積み重ねがなければできないが、著者は、見事にそれを成し遂げた。
淡々と主観を排して語られる事実経過に加え、野田前総理、谷垣前総裁をはじめ、関係者の肉声を通じて税制改革の過程を振り返り、複雑な意思決定過程を浮き彫りにしている。
将来、租税政策の歴史を振り返る上で、第一級の史料となることは間違いないだろう。
さまざまな利害がぶつかり合う中、税制改革が成就するのは、責任を引き受ける覚悟を持った政治家がいるからだ。
消費税率引き上げともなれば、なおさらである。
彼らの苦悩や決断の軌跡を記録することは、信頼関係の構築と膨大な取材の積み重ねがなければできないが、著者は、見事にそれを成し遂げた。
淡々と主観を排して語られる事実経過に加え、野田前総理、谷垣前総裁をはじめ、関係者の肉声を通じて税制改革の過程を振り返り、複雑な意思決定過程を浮き彫りにしている。
将来、租税政策の歴史を振り返る上で、第一級の史料となることは間違いないだろう。
2013年7月12日に日本でレビュー済み
近頃これほどエキサイティングな本は稀だ。何よりも話のもって行き方が抜群に巧い。政権党のマニュアルに載ってないのに、「増税法はなぜ成立したのだろうか」との素朴な疑問は同感だ。国の財政はギリシャやイタリアの後を追うのか?とも懸念され、対策は急がれる。だが、与党は「学級崩壊」状態だし、野党は「解散を叫ぶ」ばかり、しかも衆・参院はねじれ状態で見通しは全く立たない。それにも係らず、昨年8月10日にこの法律は民自公三党の合意で成立したのだった。そして正にその瞬間、安住財務相は隣にいた岡田副総理に囁いた「奇跡のようだ」と。この本のハイライトだ。「世の中の予想を覆したのは、何かの偶然が折り重なったのか、あるいは歴史の必然であったのだろうか」と著者は考え検証を進める。詳しくは本書をじっくりとお読みあれ。平易な文章でことの顛末を真摯に読者へ届けようとする姿勢、ここに本当のジャーナリストがいる。素晴しい才能を持った書き手が
現れたものだ。政治や経済を勉強する若者にも是非読んで欲しい。生きた教科書だから。
現れたものだ。政治や経済を勉強する若者にも是非読んで欲しい。生きた教科書だから。