かの大戦が終わった2年後、石井桃子さんが40歳の時に本書は刊行された。
それから70年経った名作なのでネタバレとかはさほど気にせずに進めると、本書の主人公は8歳の児童の「ノンちゃん」で、冒頭、彼女が大泣きしている場面から物語は始まる。
本作のキーポイントは彼女が5才の時に大病を患い生死の境を彷徨う期間が数カ月あったことで、端折ると、母と兄が黙って東京へ行った日、いろいろあってタイトル回収して彼女はおじいさん(≠祖父)が操縦する雲に乗ることになり、8歳ながらに自分の生い立ちと家族のプロフィールをおじいさんに語ることにより、視界がサーっと晴れてスッキリした状態で家族の元へ戻ってくるという、こう話すと、けっこうシンプルなストーリーになっている。
ただし、つくりは複雑だ。
構成は7章立てで、内、第3章「ノンちゃんのお話」が更に9パート、第4章「おじいさんのお話」が2パートに分かれる。
時代的には「いまから何十年かまえの、ある晴れた春の朝」からはじまり、その後メインの第3章「ノンちゃんのお話」の部分で、末っ子による父、母、兄の解釈が描かれ、これにより時系列的に複数のエピソードが交差することになる。
子供の話はあっちこっちに飛ぶ。
だからエピソードの挿入もやや唐突で、母についてのパートにある、遊ぶ約束をした友達がしばしば約束やぶりをするという話や、母から父や祖父の昔話を聞いている内に「昔(≒未来)」という概念に気づきその瞬間母にしがみつくシーンとか、なにこのメタファーとしばしば驚くとともに、唸る。
繰り返し出てくる「児童が言葉を覚えていく景色」も鮮やかだ。
一方、兄との算術のやりとりでは大笑いする。
著者はユーモアも忘れない。
頁をめくる内に、うーん、これは泣く展開になるなと身構えてたら、第6章「家へ」で彼女が雲に乗っている間、現実の世界ではどのようなことが起こっていたのかが描かれ、中でも兄のタケシのあるセリフにノックアウトされる。
著者は、この家族が今も抱える恐怖心を、意図的に散りばめる。
物語の視点をレイヤー昇順で並べると、
1.ノンちゃん
2.おじいさん(第3章~第5章)
3.ナレーター
となり、この「子供がよくやる話があっちこっちにいく展開」をおじいさんとナレーターが整理してくれる。
特にナレーターは福音館版p46のようにいきなりレイヤーから降りてきて読者の隣に座るので、これがドキっとするのだった。
と思っていたら、最終章「それから」のラスト10頁で第4のレイヤー、すなわち、このナレーターの正体が明かされる。
思わず「えっ」と声が出た。
そしてこの第4のレイヤーにより、物語の色が劇的に変わる。
残りたったの10頁なのに。
で、この10頁が無くても、つまり3つのレイヤーだけでも物語はきれいに成り立つように著者はつくっている。
なので謎だ。
著者は創作の最初の段階から、この第4のレイヤーを書くことを前提にしていたのだろうか?
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ノンちゃん雲に乗る (福音館創作童話シリーズ) 単行本 – 1967/1/20
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女の子のノンちゃんは神社の境内にある大きなモミジの木に登りますが……。戦後出版されると同時に多くの読者に感銘を与えた名作。今も変わらぬ新鮮さに溢れた日本童話の古典です。
- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社福音館書店
- 発売日1967/1/20
- 寸法13 x 1.8 x 18 cm
- ISBN-104834000796
- ISBN-13978-4834000795
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商品の説明
出版社からのコメント
ノンちゃんは、雲の上の世界のおじいさんに、自分の家族のことを話します。
おじいさんは、いじわるなにいちゃんのことを「いい子だ」と褒め、優等生のノンちゃんのことはあんまり褒めてくれません。
それどころか、「そういう子は、よくよく気をつけんと、しくじるぞ! 」というのです。
おどろくノンちゃんでしたが、家族のことをじっくり思い出して話しているうちに、自分の思い込みに気付きます……。
『くまのプーさん』や「ピーターラビット」のシリーズなどの翻訳で知られ、日本の児童文学の発展につくした石井桃子さんによるファンタジー。
子どもの心の動きが、繊細に、リアリティを持って描かれています。
子どもが読めば、ノンちゃんやにいちゃんなどそれぞれの立場で共感し、大人が読めば、自分の子ども時代を懐かしく思い出すことでしょう。
おじいさんは、いじわるなにいちゃんのことを「いい子だ」と褒め、優等生のノンちゃんのことはあんまり褒めてくれません。
それどころか、「そういう子は、よくよく気をつけんと、しくじるぞ! 」というのです。
おどろくノンちゃんでしたが、家族のことをじっくり思い出して話しているうちに、自分の思い込みに気付きます……。
『くまのプーさん』や「ピーターラビット」のシリーズなどの翻訳で知られ、日本の児童文学の発展につくした石井桃子さんによるファンタジー。
子どもの心の動きが、繊細に、リアリティを持って描かれています。
子どもが読めば、ノンちゃんやにいちゃんなどそれぞれの立場で共感し、大人が読めば、自分の子ども時代を懐かしく思い出すことでしょう。
著者について
石井桃子
中川宗弥
中川宗弥
登録情報
- 出版社 : 福音館書店 (1967/1/20)
- 発売日 : 1967/1/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 278ページ
- ISBN-10 : 4834000796
- ISBN-13 : 978-4834000795
- 寸法 : 13 x 1.8 x 18 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,966位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,948位絵本・児童書 (本)
- - 12,855位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年12月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
孫へのクリスマスプレゼント
2014年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
懐かしい本が手に入り
嬉しくて読み直しています
孫にも渡せると思うと嬉しく思っています。
嬉しくて読み直しています
孫にも渡せると思うと嬉しく思っています。
2017年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子どもの頃に読んで、大好きだった本です。ずっと持っていたのになくしてしまい、今回娘のために購入しました。
しかし、新品のはずなのに表紙に糊が付いたような汚れがあり、がっかりしました。せっかく手に入れたのに、出鼻をくじかれたような…。大変残念です。
是非、今後はこのようなことがないよう、よろしくおねがいします。
同時に購入した本たちは、なんの問題もなかったです。
しかし、新品のはずなのに表紙に糊が付いたような汚れがあり、がっかりしました。せっかく手に入れたのに、出鼻をくじかれたような…。大変残念です。
是非、今後はこのようなことがないよう、よろしくおねがいします。
同時に購入した本たちは、なんの問題もなかったです。
2010年11月13日に日本でレビュー済み
私は、自分の幼い頃の事を思い出しながら読みました。
優等生でいわゆる「おりこうさん」のノンちゃん。
だけど、子供特有の「分からなさ」で、まだまだまわりの事が見えていない。
ある日、ノンちゃんはかんしゃくを起こして池に落ちてしまう…
いえ、池の中の空に落ちて、そこで雲に乗ったお爺さんに会うのです。
お爺さんに聞かれるままに自分の「生い立ちの記」を話す内に、
家族や自分の事、たくさんの大切な事に気づかされていく。
ノンちゃんの見ているもの、聴いている音、感じている世界が
とても爽やかで気持ちがいいです。光が溢れているようです。
これが戦時中の暗い世相の中で書かれたものだということが驚きです。
子供にも大人にも読んで欲しい名作です。
優等生でいわゆる「おりこうさん」のノンちゃん。
だけど、子供特有の「分からなさ」で、まだまだまわりの事が見えていない。
ある日、ノンちゃんはかんしゃくを起こして池に落ちてしまう…
いえ、池の中の空に落ちて、そこで雲に乗ったお爺さんに会うのです。
お爺さんに聞かれるままに自分の「生い立ちの記」を話す内に、
家族や自分の事、たくさんの大切な事に気づかされていく。
ノンちゃんの見ているもの、聴いている音、感じている世界が
とても爽やかで気持ちがいいです。光が溢れているようです。
これが戦時中の暗い世相の中で書かれたものだということが驚きです。
子供にも大人にも読んで欲しい名作です。
2020年10月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
課題にあがったので購入。懐かしかったです。
2006年2月6日に日本でレビュー済み
冒頭は、ノンちゃんが泣いている所から始まります。日曜日の朝、目覚めてみると、お母さんと兄ちゃんのタケシが、ノンちゃんにはだまって、東京へ買い物に行ったことを知りました。ノンちゃんは、おいてきぼりです。お父さんが、大病をしたノンちゃんの体を気づかってのことなのですが、なにくわぬ顔をして、自分だけのけものにしたみんなを、ノンちゃんはゆるすことができません。
ノンちゃんは、「だまされたぁ」と泣きつづけます。おとうさんやおばさんが、ノンちゃんを懸命になだめますが、効き目はありません。「だれもこの気持ちをわかってくれないのなら、、、ひとりでどこかへいってしまおう」と家を出て、近所の神社のひょうたん池の方へやってきた。
さて、ノンちゃんはひょうたん池で、紅葉の木に登ります。ふと池を見ると、空がきれいに映って、ノンちゃんはまるで空に登ってゆくような気になります。そしてノンちゃんは手をすべらして池に落ちてしまいました。
ここから物語が始まります。落っこちた空はふわふわの雲で埋まっています。ノンちゃんはその中を泳いで、髭のおじいさんの熊手につかまって救われる。おじいさんは雛飾りの高砂のじじばばのじじにそっくり。テニスラケットのような雲ぐつを履いているので、雲には沈みません。そこへあくたれ坊主の長吉がやってくる。あさってから二年生クラスの級長になる予定のノンちゃんはここで負けてはいけないと、、、。
これは絵本ではなくて、子供向けの童話です。
久しぶりに休みがとれた日曜日の朝。
窓の外は青空に白い雲。
この本を読むには絶好のタイミング。
窓を開けて、風を感じながら読みたい気分だけど、
まだ寒いのであきらめて、紅茶を飲みながら、
ときどき空を見上げて、ノンちゃんの世界に浸る。
どうぞ楽しんで下さい。
ノンちゃんは、「だまされたぁ」と泣きつづけます。おとうさんやおばさんが、ノンちゃんを懸命になだめますが、効き目はありません。「だれもこの気持ちをわかってくれないのなら、、、ひとりでどこかへいってしまおう」と家を出て、近所の神社のひょうたん池の方へやってきた。
さて、ノンちゃんはひょうたん池で、紅葉の木に登ります。ふと池を見ると、空がきれいに映って、ノンちゃんはまるで空に登ってゆくような気になります。そしてノンちゃんは手をすべらして池に落ちてしまいました。
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まだ寒いのであきらめて、紅茶を飲みながら、
ときどき空を見上げて、ノンちゃんの世界に浸る。
どうぞ楽しんで下さい。
2002年10月11日に日本でレビュー済み
ノンちゃんは小学一年生、楽しみにしていた<東京までのお出かけ>を、まだ小さいからとお留守番に回されて、悲しくて仕方がないノンちゃんは池のほとりの大きな木に登りました。
木の上からおそるおそる池をのぞき込んでみると、池の表面にはぽっかりと白い雲が浮かんでいました。あっというまにノンちゃんは・・池の中の雲に落っこちて・・
気がついたら、そこは本当の雲の上、ふわふわの綿のような雲の中には船頭?のお爺さんと他にも沢山の人がいるらしい。クラスメートのいじめっ子までいます。
この本は60年くらい前に書かれているんですよね。
読んだ後が爽やかな、お話しです。おとなのかたにもぜひ読んで頂きたいと思います。
木の上からおそるおそる池をのぞき込んでみると、池の表面にはぽっかりと白い雲が浮かんでいました。あっというまにノンちゃんは・・池の中の雲に落っこちて・・
気がついたら、そこは本当の雲の上、ふわふわの綿のような雲の中には船頭?のお爺さんと他にも沢山の人がいるらしい。クラスメートのいじめっ子までいます。
この本は60年くらい前に書かれているんですよね。
読んだ後が爽やかな、お話しです。おとなのかたにもぜひ読んで頂きたいと思います。