〈ハイヒールのこつこつ〉…1998年4月に読んだ『はだか』の〈みちをあるいてくるくつおとがする でもあれはおかあさんじゃない〉というフレーズを思い出した。
〈おとうさんの しんぞうのおとに みみをすます〉…幼い頃、両親の背中に耳をあてた。なんの音がするの？ 心臓の音だよ。
〈はじめての くうきのつめたさに ひめいをあげ ぼくはうまれた〉…生まれた日に限って、父は来なかったと母はぶつぶつ。鼻におできが出きたら、身内に子供ができるというけれど、私だった。駆けつけた父の鼻におできがあったらしい。
〈めにみえない たくさんの プランクトンをかく〉…土筆を採りに行ったついでに、淀川の水を汲んだ。家にあった古い顕微鏡で見たらゾウリムシがいたよ。
〈あなたとであわなかったら わたしはいない／あなたと いいあいをしなかったら／わたしのことばは むなしくそらにきえる〉…言いあいとまでは行かないけれど、自分の存在を認めてくださった多くの人と出会わなかったら、今の私はいないかな。
〈かたすみに そのおとこはたっている／わらわない なかない おこらない おとこ／どこにもかえるところのない おとこ〉隣人を愛し、隣人に仕えなさいという派遣の言葉（『讃美歌21』）を考えた。
〈いつか どこかのまちかどの ろじおくから きこえてくる うた〉…たぶん神戸を歩いていた時に聞いた。それは〈おもいだしかけて おもいだせない むかしの うた〉かもしれない。
〈みみをすます〉 〈えをかく〉 〈ぼく〉 〈あなた〉 〈そのおとこ〉 〈じゅうにつき〉…どれから読んでも、5つの詩が生涯という意味でつながっているように感じた。
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