この作家らしい視点で市川雷蔵という個性ある俳優を、ある面で分析しています。著者自身の生い立ちを描いて「鎌倉のおばさん」を背景として、雷蔵の生い立ちからくる影を指摘し、その心理を推測し、面白く興味深く読ませる、ある意味での軽い評伝に仕上げています。軽いというのは、歌舞伎界の環境や大映のスタッフ等雷蔵さんの周辺人物にはよく取材しているのですが、肝心の雷蔵さん当人にはインタビューをしていない様です。そのためか、最後の詰めを欠いたものとなっており、どうしても隔靴掻痒な感じが拭えないのは自分だけでしょうか?
それにしても、当時の映画界の「普通」の凄さというのを、文学の世界に広げて言及している記述(P134~135,6)は、さすがに作家らしい鋭い指摘で、この部分だけでもこの一冊を読む価値があるでしょう。ただ、雷蔵さんの性格を描写するために、何度も姓名が変わり、寿海さんの養子となった経過の説明が、あまりに繰り返えされており、少しくどい感があります。もっと個々の作品自体に関して、作者の感慨を述べて欲しかった感です。例えば「炎上」「ぼんち」「中野学校」等(特に「ぼんち」「中野学校」にはまったく触れていません)
それでも、さすがに村松さんが書いただけのことはあり、そこらの映画評論家やエッセイストが書いたものよりは、はるかに読ませました。しかし、雷蔵さんご自身に会っておいて欲しかった・・・。
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雷蔵好み 単行本 – 2002/11/26
村松 友視
(著)
昭和44年、この世を去りながら、「RAIZO」ブームで、世紀を超え、不死鳥のごとく甦る市川雷蔵。翳りをおびた永遠の輝きとは何か。直木賞作家・松村友視が精緻な筆で、37年の生涯を辿る。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社ホーム社
- 発売日2002/11/26
- ISBN-10483425075X
- ISBN-13978-4834250756
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
忽然とこの世を去りながら、いま世紀をこえて不死鳥のごとくよみがえる、市川雷蔵。その翳りをおびた永遠の輝きとは何か。なぞ多き37年間の生涯に村松友視が初めて光をあてた人物ドキュメンタリー。
登録情報
- 出版社 : ホーム社 (2002/11/26)
- 発売日 : 2002/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 483425075X
- ISBN-13 : 978-4834250756
- Amazon 売れ筋ランキング: - 78,387位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
筆者は市川雷蔵ファンのようだが、贔屓の引き倒しに陥ることなく、冷静な視座から稀代の映画スターの実像に肉薄している。
2005年5月15日に日本でレビュー済み
残念ながら雷蔵本の中ではダントツに内容が薄い。著者自身の家庭環境が雷蔵に似て複雑であることをひとつの(と言うか唯一の)売りにしているようで、しかしそれだけではいくらなんでも一冊の本になる筈もなく、生前の雷蔵を知る数人にインタビューした内容をちりばめているのだが、特段目新しい情報があるわけでもなく、いっそのこと下手に構成することなく、インタビューの内容をそのまま書き下ろしてしまったほうが価値があったのでは??
2015年3月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中古品と言うことで,コンディションを少し心配していましたが,何の問題もなく,すばらしい状態でした。
2013年7月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
市川雷蔵、普段はただの人、役に入ると凄い魅力的です。役者はほとんどの人が個性がありますが雷蔵さんは、眠狂四郎、ある殺し屋、
陸軍中野学校、炎上、他の作品にも役に完全になりきり不思議な人で稀に見る人でした。
癌で早く他界されたのが惜しまれます。m(_ _)m
陸軍中野学校、炎上、他の作品にも役に完全になりきり不思議な人で稀に見る人でした。
癌で早く他界されたのが惜しまれます。m(_ _)m
2003年2月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
雷蔵関連の本を手に入れたくてもなかなか出来ないので
ネットで調べるくらいで満足できずにいたのですが
この本を読んで大分満足できた次第です。
雷蔵の表紙絵だけでも十分見ごたえがありますが
内容もそれに負けず劣らずすばらしい物でした。
生い立ちからはじまり死の間際まで
感傷におぼれず、淡々と雷蔵を描きだしていて
読後も後を引きました、
文字も大きく読みやすかったのが良かったです。
ネットで調べるくらいで満足できずにいたのですが
この本を読んで大分満足できた次第です。
雷蔵の表紙絵だけでも十分見ごたえがありますが
内容もそれに負けず劣らずすばらしい物でした。
生い立ちからはじまり死の間際まで
感傷におぼれず、淡々と雷蔵を描きだしていて
読後も後を引きました、
文字も大きく読みやすかったのが良かったです。
2007年3月23日に日本でレビュー済み
市川雷蔵を最初に見た作品が何であったか、記憶に残っていません。あるのは、「眠狂四郎」の感情を見せないニヒルな風貌であり、「炎上」のラストでの泣き顔で炎を見つめ呆然としている姿です。
37歳という若さで亡くなったというのに、今も多くのファンがおり、何度も再上映の機会が設けられ、TVでも盛んに放送される市川雷蔵の魅力の一端を、この本で垣間見たような気がします。
二回の養子縁組による三つの本名という複雑な出自から、歌舞伎界という特殊な世界での立場、そして映画スターとしての時代と、雷蔵の生涯を追いながら、彼の心の内に迫ってゆきます。
「眠狂四郎」の持つ「虚無感」「孤独感」が生まれてくる土壌は、そうした彼の生きてきた決して順調でなかった道いあったのかもしれません。
雷蔵の「千羽鶴」「春の雪」。見てみたかったなあとつくづく思います。
37歳という若さで亡くなったというのに、今も多くのファンがおり、何度も再上映の機会が設けられ、TVでも盛んに放送される市川雷蔵の魅力の一端を、この本で垣間見たような気がします。
二回の養子縁組による三つの本名という複雑な出自から、歌舞伎界という特殊な世界での立場、そして映画スターとしての時代と、雷蔵の生涯を追いながら、彼の心の内に迫ってゆきます。
「眠狂四郎」の持つ「虚無感」「孤独感」が生まれてくる土壌は、そうした彼の生きてきた決して順調でなかった道いあったのかもしれません。
雷蔵の「千羽鶴」「春の雪」。見てみたかったなあとつくづく思います。
2003年5月24日に日本でレビュー済み
私たちのような、市川雷蔵の活躍をリアルタイムで見ていない、まったく別世代の雷蔵ファン(特に、雷蔵映画祭以降の)にとって、雷蔵の人生や人となりを知るための教科書になる本だと思います。
特に、歌舞伎界から映画界に転進するときの、雷蔵を取り巻くまわりの事情について。それから、彼が死の直前まで熱心に準備を進めていた、自分の劇団に関する部分が充実していて、わかりやすく解説されています。
ただ、この本の主要部分は、雷蔵本人のエッセイや、彼に関する過去の主要な著作物(悲しいくらい少ない)から、引用も含めて、総合的に編纂されたかたちになっています。
ですから、これに村松友視的なものを多く期待すると「?」なのかもしれません。また、昔からの雷蔵ファンにとっては、「目新しいものがない」となるのかもしれません。
特に、歌舞伎界から映画界に転進するときの、雷蔵を取り巻くまわりの事情について。それから、彼が死の直前まで熱心に準備を進めていた、自分の劇団に関する部分が充実していて、わかりやすく解説されています。
ただ、この本の主要部分は、雷蔵本人のエッセイや、彼に関する過去の主要な著作物(悲しいくらい少ない)から、引用も含めて、総合的に編纂されたかたちになっています。
ですから、これに村松友視的なものを多く期待すると「?」なのかもしれません。また、昔からの雷蔵ファンにとっては、「目新しいものがない」となるのかもしれません。