* ハムレットを殺せ！ - 表題作
* ジェシカのひみつ
* 呪われた谷
* 死の谷
* 恋の不時着
* かあさんの休診日
「ハムレットを殺せ！」
→ 法的にブレイク家の次期当主に定められたヘルムートは、莫大な財産と美しい恋人アニエスと愛人の息子とはいえ優しい異母兄モルダー=ブラウンに囲まれ我が世の春を謳歌していた。しかし、誕生日の芝居「ハムレット」で転落事故に見せかけてモルダーに殺されかけ、一命を取り留めるも正気を失い自身をハムレットだと思い込んでしまう。使用人達が薄情にもヘルムートを見捨てて屋敷を去ってゆく中で、ただ1人だけヘルムートに寄り添うのはメイドで彼とは幼馴染のフランセスカだけだった。ふとしたことで正気に戻ったヘルムートは復讐を企むもフランセスカに止められ、妾腹ゆえに財産の相続から外されたことを逆恨みするモルダーと善人すぎて面白くないと早々にヘルムートに見切りをつけ野心があって魅力的だとモルダーに乗り換えたアニエスは今度こそと2人を殺そうとするが、有頂天になっていたことを差し引いても2人の身勝手すぎる言い分にヘルムートは激怒する。2人が危うい瀬戸際、天罰のように落雷がアニエスの振り翳した長剣を直撃して感電死し、驚いたモルダーはベランダから転落して死んだ。フランセスカはショックで正気を失ってしまう。しかし、いつの日かきっとフランセスカは正気を取り戻す、今度は自身が彼女の心を治す番だ！ そう決意してヘルムートは彼女に寄り添って生きてゆく。
「ジェシカのひみつ」
→ ニューヨーク病院に勤務する内科医ジョエル=グレイは高名な小説家アマンダ=ジャクソンの往診で彼女の屋敷を訪れた際、アマンダのゴーストをさせられているというジェシカ=フランクリンに助けを求められるも彼女はアマンダの下僕グレダに連れ戻されてしまう。後にアマンダが書いた筈の小説に2人の出会いのシーンがあることを知り、ジェシカの訴えこそが事実だと確信したジョエルは彼女を連れ出して匿う。再びジェシカを自身のゴーストに貶めようとするアマンダだったが、5年前のジェシカの兄ロバートとアマンダの妹マリリンの事故死はロバートを求めても彼はマリリンを愛して一顧だにしなかったことを恨んだアマンダによる他殺であることをジョエルは調べ上げた。罪の報いゆえにアマンダが末期癌による余命幾ばくもない身であることを告げて彼女に罪を償うようにとジョエルは諭すのだったが、絶望と怒りからアマンダは車に飛び込んで自殺してしまう。死の宣告により患者を死に追いやったジョエルは病院を追われてしまうが、ジェシカは小説家としての栄光よりも自身を救ってくれたジョエルとの愛を選ぶのだった。
「呪われた谷」
→ アクミームの谷にあるという王妃メリトアテンに惨殺されたタルカス三世の墓を探して失踪した富豪の夫ギルバート=ロータスを殺したと彼のおじのチャールズに責められるアナベラだったが、そのおじと催眠術師の姪ミカエラが図ったロータス家の財産を奪おうとする陰謀だった。ギルバートが無事に戻り警察によりチャールズとミカエラの2人は逮捕されてめでたしめでたしと思いきや、竪琴を彼がかき鳴らしている内に呪われた王妃メリトアテンに“夫を殺せ”と囁かれ操られたアナベラは正気を失いギルバートを殺してしまう。
「かあさんの休診日」
→ 内容とは無関係だが、作者は自身の母親をモデルに主人公・牧の養母である佐伯医院の女医・佐伯愛子を描いた。嘗て、父親をモデルに『拝啓おやじ殿』を描いたが、今度は母をモデルにしたいと編集部に希望してのことだという。
牧は或る日、自身が父の不義の子であることを知ってしまう。育ての親の愛子が体を壊して療養中、父は寂しさのあまり看護師と過ちを犯してしまったのだ。事情を知った愛子はそれを承知で牧を実子・邦彦と同様に我が子として慈しみ、夫の死後は父親役も兼ねて子供達を守るべく“仁王”になったのだった。牧はふとしたことで実母に会うが、産んだだけで15年も離れて生きて他の幸福を手に入れた女性は彼女を娘だと気づく筈もなかった。当然だ！ 出会って何かを感じるなんて絵空事だけのタワゴトにすぎないのだから。
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