1983年から1987年にかけて小池一夫主催の「スタジオ・シップ」刊行の＜コミック劇画村塾＞に連載されていた著者の出世作。
全6巻はすでに絶版であり、電子書籍（Jコミ、で検索推奨）としてしか読めなかったが、今回めでたく復刊の運びとなった。
基本的には金持ち（世界を支配する三大ファミリーのひとつの「一人娘」）で超絶頭脳（IQ測定不可能）を持つオーバーテクノロジー
（異世界や未来まで含む）使いである極楽院和泉子（いづみこ）が巻き起こすトラブルに周囲が巻き込まれていくSF。
・・・とまとめにくい作品ではある。
ギャク／スラップスティックな一面とシリアスな一面（今回の収録作では「曠野のむこうがわ」「のぼるほし」「CONFUSION」
など）が混在する作風の振り幅に、リアルタイムで連載を読んでいた評者はとても（いい意味で）混乱させられた。
（連載誌自体が西村しのぶ
サードガール 1
／山本貴嗣
超人日記 【コミックセット】
／田中圭一
ドクター秩父山(上)
／伊賀一洋
将軍のボディーガード 下
／中村真理子「唇にブルースハープ」などかなりカオスな誌面であったし、その初期表紙を飾ったのが高橋留美子だったりする）
今回の収録作は著者本人によるベストトラック。見開きで「ちきゅーせーふく」だの・表題の科白を見開きで叫ぶ
イズミコだのといったコミカル／ギャグ系統と、ひとときの愛を交わした男が死んだ時、自分の中に残した「種」を
宇宙の果てまで送り出す（「のぼる〜」）・といったシリアス系統がバランスよく収録されており、
この作品の持つカオスな破壊力を体験するにはちょうどよい感じである。
ボーナストラックとして＜S-Fマガジン＞掲載の「バランタインBANG-BANG」収録（評者は初見）。
全体のバランスとしてベストセレクトと思うが、一番読みたかった「バイ・ポーラー」編は旧単行本の1冊半分近い分量
であるためか見送られている。
今回のベスト版が好評を博し、続刊として「バイ・ポーラー」編、さらには続編の「イズミコおかわり」（2003年〜）
の単行本化が実現すると、とても嬉しい。
書誌データ。A5版なので旧単行本より一回り大きい。カラーページ（表紙のいくつかはカラーだったと記憶している）
の再現がされていないのがちょっと残念。紙質は普通のコミックと同じであり、経年には耐えにくいかもしれない。
しかし、この作品には合っている気もする評者である。
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