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イメージ付きのレビュー
「初版『グリム童話』」と銘打つのはどうかと思うが、中々の良作。
初版のグリム童話の翻案短篇集。誤解を招くような書題だが、グリム童話そのものではなく、基本的な筋書きはそのままに、元の童話の行間に秘められたエロ・グロ要素を分かり易く際立たせてある短篇集である。その証拠に著者欄にグリム兄弟のクレジットがない。著者は由良弥生という耳慣れない作家だが、文章はかなり巧い。知名度は低いながらも地味に人気のある作品集らしく、新装版も出ている。新装版と旧版は中身は一緒だが、高橋常政氏の手による表紙のインパクトは旧版のほうが遥かに大きい。微妙に頭が大きく、明らかに瞳のサイズが大きく、僅かに斜視が入っている灰かぶりが凝視してくる。長年所有している本なのだが、手に取るたびに私は一瞬ギョッとしてしまう。個人的には「トゥルーデおばさん」が一番好きである。娘の最後のシーンの文章は、下手な実写作品よりも遥かに生々しい視覚的イメージをもたらしてくれる。人間は背徳に喜びを感じる一方で、この魔女のように背徳を罰してくれる存在をも求めているようだ。
