この本は堀口大學の伝記を意図したものであるが、父親の九萬一とその息子の伝記といった色彩が強い。九萬一は、戊辰の役で戦死した長岡藩士の息子として生まれ、東大法学部の前身である司法省法学校にトップで入学したという人で、後に外務官として活躍している。大學は彼の赴任地であるメキシコやスペイン、ブラジル、ルーマニア同行する中で、外国生活になれフランス語を磨いて行ったようだ。九萬一の後妻、スチナがベルギー人で家ではフランス語を話していたことも、彼のフランス語能力を高めていたと考えられる。
作品は、2人の歴史を概観するには分かりやすくよくできていると思う。大學と与謝野鉄幹、晶子夫妻の関係が単に新詩社における師であるというだけでなく、九萬一と与謝野鉄幹が知り合いで、明治28年の閔妃暗殺に2人はかかわっていた可能性があるなども分かる。また、大學が、何度も喀血したこと、マリーローランサンとの出会いと交友、コクトーの日本訪問の案内、息子の自殺などもよく分かった。
ただ、作品はやや潤いに乏しい。大學の詩や短歌も挿入されているが、もっといい詩があり、ここに挿入すれば効果的なのにと思うところも少なくない。工藤氏の叙情への感性は、私と違うなという気がする。
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黄昏の詩人: 堀口大學とその父のこと 単行本 – 2001/3/1
工藤 美代子
(著)
- 本の長さ270ページ
- 言語日本語
- 出版社マガジンハウス
- 発売日2001/3/1
- ISBN-10483871291X
- ISBN-13978-4838712915
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
早熟な詩人と外交官の父。二つの卓越した才能は、いかに慈しみ合い、いかに葛藤したか…。戊辰の灰燼の中から起ち上がった堀口家二代の、明治・大正・昭和にわたる壮麗なロマン伝記。
登録情報
- 出版社 : マガジンハウス (2001/3/1)
- 発売日 : 2001/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 270ページ
- ISBN-10 : 483871291X
- ISBN-13 : 978-4838712915
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,066,942位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 281,054位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2001年5月25日に日本でレビュー済み
堀口大學の父、堀口九萬一の名を知ったのはNHKニュースだったと思う。九萬一がメキシコ公使のときに、メキシコ革命が勃発し、革命側に追われた大統領一行を日本大使館でかくまったという話だった。ニュースは杉原千畝を引き合いに出し、日本人外交官の美談として扱っていた。それ以来、いつか九萬一に関する本を読んでみたいと思っていたところ、よいタイミングで本書が発行された。というか、本書が発行されたので、前記のニュースがあったのかと思う。本書によると、九萬一は朝鮮王妃の閔妃暗殺に関わり、日米開戦をあおり、けっして人道主義者ではない。その反面、漢詩に堪能で、著作も多い文人ということもわかった。
著者は当初大學について執筆を開始したらしい。しかし、調査を進めるに従って父につい!て言及する必要が発生し、ついに半分は九萬一の物語になったという。私も本書の主人公を九萬一として読んだ。九萬一は、自らは、貧しい中帝大を卒業し、日本の外交官の端緒となり、国際結婚をし、暗殺に、参戦にと存分に活躍した。そして、息子大學に対しては、その才能を認め、海外でフランス文学三昧の生活を送らせ、30歳前後まで扶養し、大學を一流の文学者に育てた。
本書は、大學とその父の2人の人生が楽しめる、一冊で二度おいしい本。私のような浅学な者にとっては、大學がなぜ黄昏の詩人と呼ばれたのかといった、初歩的なエピソードにも触れて欲しかった。
著者は当初大學について執筆を開始したらしい。しかし、調査を進めるに従って父につい!て言及する必要が発生し、ついに半分は九萬一の物語になったという。私も本書の主人公を九萬一として読んだ。九萬一は、自らは、貧しい中帝大を卒業し、日本の外交官の端緒となり、国際結婚をし、暗殺に、参戦にと存分に活躍した。そして、息子大學に対しては、その才能を認め、海外でフランス文学三昧の生活を送らせ、30歳前後まで扶養し、大學を一流の文学者に育てた。
本書は、大學とその父の2人の人生が楽しめる、一冊で二度おいしい本。私のような浅学な者にとっては、大學がなぜ黄昏の詩人と呼ばれたのかといった、初歩的なエピソードにも触れて欲しかった。