その年の代表作を一作、ただし作家の重複はなし。
そういう条件で荒川洋治が選定した読書リストが掲載されています。
信頼できる文学者の作成したリストを読み切ることが、大変意義深いものであることを痛感しました。
意義とは、一読してただちに面白い、すばらしいとわかる作品にであうことではありません。
そうではなく、さっぱり面白くもなければ退屈な作品、読み終えても即座にはこれがなぜ選ばれたか分からない作品、そういう作品をとにかく読みきり、荒川がなぜそれを選んだかを考える。
彼への信頼を通して、自分が持ちえていなかった視座、自分が固執していた態度に始めて気がつきもしたのです。体制的な読みに終始しがちな自分を見つめ直し、おもいもよらなかった文学のかたちを知ることができたと思っています。
それこそが意義です。
1900 泉鏡花 高野聖
1901 国木田独歩 武蔵野
1902 田山花袋 重右衛門の最後
1903 幸田露伴 雁坂越
1904 木下尚江 火の柱
1905 寺田寅彦 団栗
1906 桜井忠温 肉弾一旅順実戦記
1907 中村星湖 少年行
1908 二葉亭四迷 平凡
1909 岩野泡鳴 耽溺
1910 志賀直哉 網走まで
1911 島崎藤村 家
1912 長塚節 土
1913 近松秋江 別れたる妻に送る手紙
1914 夏目漱石 こころ
1915 里見弴 晩い初戀
1916 森鷗外 寒山拾得
1917 広津和郎 崖
1918 久米正雄 学生時代
1919 菊池寛 恩譬の彼方に
1920 細田民樹 初年兵江木の死
1921 宇野浩二 一と踊
1922 芥川龍之介 卜ロッコ
1923 稲垣足穂 星を売る店
1924 尾崎翠 花束
1925 梶并基次郎 檸檬
1926 川端康成 伊豆の踊子
1927 瀧井孝作 無限抱擁
1928 中野重治 春さきの風
1929 小林多喜ニ 蟹工船
1930 林芙美子 放浪記
1931 谷崎潤一郎 吉野葛
1932 伊藤整 生物祭
1933 徳田秋声 和解
1934 丹羽文雄 贅肉
1935 石川達三 蒼氓第一部
1936 阿部知二 冬の宿
1937 北条民雄 望郷歌
1938 井伏鱒二 さざなみ軍記
1939 長見義三 練習車
1940 加能作次郎 乳の匂ひ
1941 田畑修一郎 醫師高間房一氏
1942 小島政二郎 眼中の人
1943 井上友一郎 竹夫人
1944 太宰治 津軽
1945 舟橋聖一 悉皆屋康吉
1946 横光利一 夏臘日記
1947 中村真一郎 死の影の下に
1948 大岡昇平 俘虜記
1949 田宮虎彦 足摺岬
1950 内田百閒 実説艸平記
1951 吉屋信子 鬼火
1952 小山清 落穂拾ひ
1953 長谷川四郎 鶴
1954 三島由紀夫 潮騒
1955 椎名麟三 美しい女
1956 深沢七郎 楢山節考
1957 上林曉 春の坂
1958 有吉佐和子 海鳴り
1959 村上一郎 東国の人びと第I部
1960 大原富枝 婉という女
1961 吉行淳之介 童謡
1962 室生犀星 われはうたへどもやぶれかぶれ
1963 高見順 いやな感じ
1964 北杜夫 楡家の人びと
1965 梅崎春生 幻化
1966 金鶴泳 凍えるロ
1967 大江健三郎 万延元年のフツ卜ボール
1968 木山捷平 長春五馬路
1969 野ロ冨士男 暗い夜の私
1970 大谷藤子 再会
1971 阿部昭 明治四十二年夏
1972 安岡章太郎 走れ卜マホーク
1973 川崎長太郎 乾いた河
1974 円地文子 花食い姥
1975 江ロ渙 少年時代
1976 佐多稲子 時に佇つ
1977 宮内寒彌 七里ヶ浜
1978 結城信一 空の細道
1979 八木義德 一枚の繪
1980 松本清張 骨壺の風景
1981 色川武大 百
1982 胡桃沢耕史 天山を越えて
1983 小島信夫 再生
1984 田久保英夫 辻火
1985 五木寛之 風の王国
1986 耕治人 天井から降る哀しい音
1987 澁澤龍彦 高丘親王航海記
1988 開高健 一日
1989 三浦哲郎 じねんじよ
1990 佐藤泰志 虹
1991 井上光晴 紙咲道生少年の記録
1992 後藤明生 十七枚の写真
1993 宇野千代 不思議な事があるものだ
1994 内田春菊 キオミ
1995 古山高麗雄 真吾の恋人
1996 町田康 くっすん大黒
1997 久世光彦 卑弥呼
1998 高橋たか子 神の海ーマルグリツ卜・マリ伝記
1999 村上春樹 地震のあとで
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文学が好き 単行本 – 2001/4/1
荒川 洋治
(著)
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社旬報社
- 発売日2001/4/1
- ISBN-104845106922
- ISBN-13978-4845106929
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
文学が遠ざけられる時代になった。文学はこのまま消えていくのだろうか…。人の心をあたため、うるおす新旧の文学作品の言葉を見つめながら、文学の魅力を語り、文学を語る文章に思いをめぐらす。文学エッセイ。
登録情報
- 出版社 : 旬報社 (2001/4/1)
- 発売日 : 2001/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 205ページ
- ISBN-10 : 4845106922
- ISBN-13 : 978-4845106929
- Amazon 売れ筋ランキング: - 826,452位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 23,876位エッセー・随筆 (本)
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2019年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2008年1月15日に日本でレビュー済み
茨木のり子のベストセラー詩集『倚りかからず』について、括弧をつけて<「いい詩集」>と評し、読者に深い問題提起をしている。なぜ「いい詩集」なのか。「読者が納得いく範囲で言葉を動かす。ふくらませる。」からであり、「自分の詩集を「「いい詩集」であると理解する読者の存在を疑ったことがない」からだ。つまるところ、この詩の作者も倚りかかっている。「読めばすぐに意味が伝わり、「倫理的な効果」をあげてしまう自分の詩のしくみ」に倚りかかっているのだ、と。自分のない詩であり、「きれいごとではないのか」。
これを言えるのは、かつて宮沢賢治に石を投げた荒川洋治だけだろう。柔らかい言葉の向こうに、著者の厳しい文学観が見える。レビュータイトルは木山捷平の小品を語った文章のタイトル。
これを言えるのは、かつて宮沢賢治に石を投げた荒川洋治だけだろう。柔らかい言葉の向こうに、著者の厳しい文学観が見える。レビュータイトルは木山捷平の小品を語った文章のタイトル。