手塚治虫漫画全集には別巻として、著者の文章関連のものがまとめられている。全部で１８冊もあり、マンガ家としては壮観といっていい陣容だ。
だがこれらの本は絶版で古書価の高いものが多く入手しにくい。
本書は、昨年から刊行されている著者の文章ものシリーズの一冊であり、単行本未収録の文章もおさめているのが貴重である。
「単行本と雑誌の漫画１」「同２」「同３」「科学漫画に就いて」「わが投書時代」「最近ごらんになった一番おもしろい漫画」など計１０編がそれだが、なかで「群烏伝（一）」が手塚治虫による最初期に出会ったマンガ家たちの記録として重要だと思う。「解題」でも語られているが、続きが書かれなかったのが惜しい文章である。
シリーズの他の本、たとえばシナリオ集は、手塚治虫漫画全集が一冊に対し、こちらは二冊なので、未収録作が多い。
さらに同じ手塚治虫の文章もの文庫本として『ぼくはマンガ家』がある。ここに全集には未収録のエッセイ「ボクのまんが記」（豊富な絵のカットが楽しい）が収録されている。「ボクのまんが記」はすでに、いくつかのよく知られたマンガと合わせ今世紀になって出版されているが文庫初収録である。
ということで、この立東舎発行の文庫本体裁による手塚治虫エッセイ集成とその関連出版に注目している。というのは手塚治虫文庫全集に、本来文庫本でも絵の縮小という弊害の生じない文章関連の巻を収録しなかったことに大いに疑問を感じているからであり、今後とも、これまで単行本に入っていないエッセイ等を精力的に追加してほしいからである。
ひとつだけ問題なのは価格とページ数のバランスである。つまり昨年発行したものに比べ、同じ値段なのに、あまりにもページが少ない。
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