昔、我が家にも、雑誌「血と薔薇」の創刊号が転がっていたが、いつのまにかなくしてしまった。
三島由紀夫を撮った細江英公の「薔薇刑」が載っていたはずだ。実に惜しいことをした。
その「血と薔薇」を企画した編集子が内藤三津子。澁澤龍彦を編集長に迎え、
次のように高らかに宣言した。
「本誌『血と薔薇』は、文字にまれ、美術にまれ、人間活動としてのエロティシズムの
領域に関する一切の事象を偏見なしに正面から取り上げることを目的とした雑誌である。
したがって、ここではモラルの見地を一切顧慮せず、アモラルの立場をつらぬくことを
もって、この雑誌の基本的な性格とする。」
この宣言は日本読書新聞の書評でとりあげられ世の中に大きな反響を与える。
雑誌は残念ながら4号を持って頓挫してしまったが、当誌が契機となって
サディズムやマゾヒズムの世界がそれまでのアンダーグラウンドから一挙に表舞台へ浮上し、
むしろファッショナブルなものとして、文化的にも思想的にも正当の位置を占めるようになった。
この本を読むと、当時の内藤三津子をとりまく文化人、出版人の熱い息遣いが感じられる。
当書は小田光男氏によるインタビューのかたちをとっているが、その要領のいい簡潔かつ
正確無比なインタビューには舌をまいた。
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薔薇十字社とその軌跡 (出版人に聞く 10) 単行本 – 2013/3/1
内藤 三津子
(著)
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- 本の長さ165ページ
- 言語日本語
- 出版社論創社
- 発売日2013/3/1
- ISBN-104846012247
- ISBN-13978-4846012243
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登録情報
- 出版社 : 論創社 (2013/3/1)
- 発売日 : 2013/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 165ページ
- ISBN-10 : 4846012247
- ISBN-13 : 978-4846012243
- Amazon 売れ筋ランキング: - 551,633位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
論創社の出版人に聞くシリーズの第10弾です。今回は内藤三津子さんを取上げています。なお、著者は、内藤さんになっていますが、内容は小田光雄さんによるロング・インタヴューになっています。
全体は、第'T章〜代'X章に大別されていますが、ほぼ時系列にまとめられています。内藤さんは、兄弟姉妹合わせて6人で、その内の3人が出版に係っていて、しかも兄姉が世代の同人の仲間だったことが影響し、自然と女性編集者への道に進んだと述べておられます。大学を卒業して直ぐに玄光社に入り、そこで堀内誠一と出会います。次に、姉の紹介で中山書店に入り、少し回り道をして、新書館に入社します。そして、ここでフォア・レディース・シリーズの創刊にかかわります。そして、寺山修司の知遇を得ます。またまた、回り道をして、今度は天声出版に移ります。そして、ここで矢牧一宏とあの伝説の雑誌「血と薔薇」の編集に携わります(ただし実質3号で中断しますが)。そして、今度は澁澤龍彦、三島由紀夫の知遇を得ます。次に、あの薔薇十字社を立ち上げます。本書の巻末に全刊行書のリストが載っています。吸血鬼幻想、アンドロギュノスの裔、アップルパイの午後・・・この社の刊行物は幻想文学に興味を持っている人は必携の書物が数多く含まれています。私も10冊以上所有しています。ただし、この社の物は高かったので、その殆どがゾッキ本として購入しました。特に尾崎翠、名前は知っていましたが、この社の物で初めて読むことが出来ました。しかし、この社も資金難で倒産させてしまいます。そして、次は、出帆社へ移ります・・・
内藤さん、名前は知っていましたが、その詳しい経歴は本書で初めて知りました。凄い人ですね!!薔薇十字社が倒産していなければ、幻影城は、当社から出ていたかもしれない、渡辺温と大坪砂男は、松山俊太郎の企画、家畜人ヤプーの原作者にまつわる話、出版されなかった幻の泉鏡花全戯曲集・・・まさに秘話が満載です。内藤さんが曲がりなりにも(失礼!)この世界で生きていけたのは、寺山さん、渋澤さんさん、三島さん・・・等に可愛がってもらったことが大きいと思います。また、関係者も続々と鬼籍に入り、残っているのは内藤さんと松山さんだけになってしましました。そんな意味でも、このロング・インタヴューの価値は計り知れないと思います。付け加えて、インタヴュアーの小山さん、博覧強記で次々と核心を突いた質問、まさにインタヴュアーの鏡とも言える仕事です!!素晴らしい!!!
全体は、第'T章〜代'X章に大別されていますが、ほぼ時系列にまとめられています。内藤さんは、兄弟姉妹合わせて6人で、その内の3人が出版に係っていて、しかも兄姉が世代の同人の仲間だったことが影響し、自然と女性編集者への道に進んだと述べておられます。大学を卒業して直ぐに玄光社に入り、そこで堀内誠一と出会います。次に、姉の紹介で中山書店に入り、少し回り道をして、新書館に入社します。そして、ここでフォア・レディース・シリーズの創刊にかかわります。そして、寺山修司の知遇を得ます。またまた、回り道をして、今度は天声出版に移ります。そして、ここで矢牧一宏とあの伝説の雑誌「血と薔薇」の編集に携わります(ただし実質3号で中断しますが)。そして、今度は澁澤龍彦、三島由紀夫の知遇を得ます。次に、あの薔薇十字社を立ち上げます。本書の巻末に全刊行書のリストが載っています。吸血鬼幻想、アンドロギュノスの裔、アップルパイの午後・・・この社の刊行物は幻想文学に興味を持っている人は必携の書物が数多く含まれています。私も10冊以上所有しています。ただし、この社の物は高かったので、その殆どがゾッキ本として購入しました。特に尾崎翠、名前は知っていましたが、この社の物で初めて読むことが出来ました。しかし、この社も資金難で倒産させてしまいます。そして、次は、出帆社へ移ります・・・
内藤さん、名前は知っていましたが、その詳しい経歴は本書で初めて知りました。凄い人ですね!!薔薇十字社が倒産していなければ、幻影城は、当社から出ていたかもしれない、渡辺温と大坪砂男は、松山俊太郎の企画、家畜人ヤプーの原作者にまつわる話、出版されなかった幻の泉鏡花全戯曲集・・・まさに秘話が満載です。内藤さんが曲がりなりにも(失礼!)この世界で生きていけたのは、寺山さん、渋澤さんさん、三島さん・・・等に可愛がってもらったことが大きいと思います。また、関係者も続々と鬼籍に入り、残っているのは内藤さんと松山さんだけになってしましました。そんな意味でも、このロング・インタヴューの価値は計り知れないと思います。付け加えて、インタヴュアーの小山さん、博覧強記で次々と核心を突いた質問、まさにインタヴュアーの鏡とも言える仕事です!!素晴らしい!!!
2013年5月24日に日本でレビュー済み
澁澤ファンには馴染み深い薔薇十字社の社長の、インタビュー形式による一代記。
聞き手の小田光雄が内藤を押しのけんばかりの勢いで猛烈に喋っており、内藤三津子の著書というよりはむしろ小田と内藤の対談本になっている。
『家畜人ヤプー』の主人公の瀬部麟一郎という名前は内藤の義兄の遠藤麟一朗から取ったのではないかとか、
作曲家の矢代秋雄が密かなマゾヒストで『奇譚クラブ』に麻生保(マゾッホ)の変名で盛んに投稿していたとか、
その道の人には周知の話なのかもしれないが門外漢にとっては驚くような話が多く、面白かった。
エロ本の会社だと思っていた白夜書房が薔薇十字社と繋がっていたという話も初耳。
内藤という人は物をずばずば言う性格のようで、矢崎泰久や森茉莉について実名で遠慮なく悪口を言っているのも一読の価値がある。
聞き手の小田光雄が内藤を押しのけんばかりの勢いで猛烈に喋っており、内藤三津子の著書というよりはむしろ小田と内藤の対談本になっている。
『家畜人ヤプー』の主人公の瀬部麟一郎という名前は内藤の義兄の遠藤麟一朗から取ったのではないかとか、
作曲家の矢代秋雄が密かなマゾヒストで『奇譚クラブ』に麻生保(マゾッホ)の変名で盛んに投稿していたとか、
その道の人には周知の話なのかもしれないが門外漢にとっては驚くような話が多く、面白かった。
エロ本の会社だと思っていた白夜書房が薔薇十字社と繋がっていたという話も初耳。
内藤という人は物をずばずば言う性格のようで、矢崎泰久や森茉莉について実名で遠慮なく悪口を言っているのも一読の価値がある。
2023年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
インタヴュアーの小田光雄氏に一度お目にかかったことがある。と言っても、40年近く前である。戸田書店磐田店の店長をされていた頃で、職場で仕事の話をしただけなのだが、当時の氏の印象は実にシャープで、何を語ってもクリティカルというか一家言を持っているという感じだった。そのことは、この「出版人に聞く」のシリーズでも存分に発揮されている。殊に、この<十冊目>での小田氏の突っ込みはわれわれの知りたいを悉く叶えてくれる。いや、それ以上と言っていいだろう。
まずは、「りぶろ・りべろ」川口秀彦氏を介したとはいえ、内藤氏を引っ張り出しただけでも大いなる功績だろう。なぜならこれを読めば、たちこめた深い霧の向こうにうっすらと古城ような「血と薔薇」や「薔薇十字社」が立ち現われてくる気になる。おかしな物言いだが、それほど謎に包まれた雑誌であり、出版社であった。それは、古書市場での高騰ぶりだけでない。あの60年代末から70年代初めにかけて跳梁跋扈した[異端文学]というものの裏側に直に触れたような気にさせてくれるからだ。“[異端文学]の裏側”?とはまた奇怪な話だが、あの血まみれの死体が花火となって空中に飛散開花したような光景の裏で実務を担っていた方の話をうかがえるなんて、小田氏でなくとも狂喜乱舞したくなるはずだ。
話の内容は、目次を見ればおおよそのことが知れるようになっている。そこから任意にいくつか抜粋すると…。
戦後文芸誌「世代」のこと、「話の特集」に入る、天声出版へ、「血と薔薇」の企画、薔薇十字社のスタート、松山俊太郎の存在、未完に終わった写真集『男の死』、「幻影城」、三崎書房、絃影社、都市出版社との関係、「家畜人ヤプー」の作者、トリプル倒産と高利貸し、森茉莉とのトラブル、出なかった『泉鏡花全戯曲集』、『インドを語る』と『綺想礼賛』、「それでもすてきな出版人生
いかがだろうか?帯にもある三島由紀夫、寺山修司、澁澤龍彦ももちろん興味深い人物たちではあるが、彼らには膨大な著作群がある。しかし、松山俊太郎にしろ、沼正三にしろ、文献は限られている。ましてや、その出版事情など一般の者が知れるはずもないではないか。小田光雄氏とともにその秘密の密林の奥深くへと分け入っていく楽しみは、まるで小栗虫太郎の『人外魔境』さながら、なんて与太も飛ばしたくなるってもんだ。それから、これも是非書いておきたいが、お二人の対話のなかで知られざるコンビナトリア(結合)があちらこちらでスパークしている。つまり、未踏の相関図が白日のもとにさらされてゆくのだ。これが実にスリリング!あれ(彼)とこれ(彼女)がまさかこういう繋がりだったなんて!ことが週刊誌レベルの遥か彼方で語られてゆくのだ。もちろん、小田氏も言う通り<少数の読者>にしか届かない内容なのかもしれないが、それでも貴重な証言を残してもらったことには心からの敬意を表したい。
まずは、「りぶろ・りべろ」川口秀彦氏を介したとはいえ、内藤氏を引っ張り出しただけでも大いなる功績だろう。なぜならこれを読めば、たちこめた深い霧の向こうにうっすらと古城ような「血と薔薇」や「薔薇十字社」が立ち現われてくる気になる。おかしな物言いだが、それほど謎に包まれた雑誌であり、出版社であった。それは、古書市場での高騰ぶりだけでない。あの60年代末から70年代初めにかけて跳梁跋扈した[異端文学]というものの裏側に直に触れたような気にさせてくれるからだ。“[異端文学]の裏側”?とはまた奇怪な話だが、あの血まみれの死体が花火となって空中に飛散開花したような光景の裏で実務を担っていた方の話をうかがえるなんて、小田氏でなくとも狂喜乱舞したくなるはずだ。
話の内容は、目次を見ればおおよそのことが知れるようになっている。そこから任意にいくつか抜粋すると…。
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