ジョン・アーリの古典的名著である「観光のまなざし」を議論の基盤にして、歴史、社会、風景、文化といった様々な側面から観光を議論している興味深い本である。
「観光のまなざし」ということをキーワードにして、この本のタイトルが表すように、すべての章において「観光のまなざし」という言葉を使い、議論をスタートさせている。その観点は一見、統一感があるように思えるが、観光のまなざしという概念を切り口にしているものの、執筆者の専門分野に論点をもってきているため、観光のまなざしという言葉はよく使われているが、「タイトル上、無理に使っている」という印象は否めない。
しかし、それを抜きにすれば、観光という側面から、歴史学、社会学、文化人類学、といった多様の学問からのアプローチが見れて面白い。「観光のまなざし」の概念をやや強引に捉えて議論にもっていっている感はあるが、様々な学問領域から見た意味での「観光のまなざし」を見るには適しており、これから観光で研究を進めていこうとしている大学院博士前期課程以上、博士後期課程以下の研究者は読むべき本であろう。
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