この本から「きらめき」を見つけられないのは読む方に問題があるのでは?
(「本格的」という言葉の幼稚さにご用心。)
すでに著者訳『ロリータ』注釈から、謎は投げかけられていました。この本ではアルファベット1字1字の枝葉にまで神経を使い虫眼鏡で観察する粘り強い探求で、一般読者をナボコフの迷宮へ導いてくれます。
本の中では、作者ではなく読み手の目線で、一緒に考えながら謎解きの機会やヒントを与えてくれますが、その不器用さに愛情を感じるのは、「素晴らしい読み手であり学者」としての揺るぎない自意識が確立する立ち位置ゆえ。
読書の楽しみを知っているからこそ、説明でお茶を濁すことを恐れているが、その本に対する愛情に胸を張っているような独特の感性が素晴らしい。
案内される方にはそれなりの読解力は必要ですが、世に言う勉強ができるとは違う感性で挑みましょう。
ナボコフを愛し、小説を愛す著者のハートに感動させられますし、ナボコフと言う巨人の暗号を教えてくれ、さらなる読書のおもしろみを教えてくれる素晴らしい本です。繰り返すようですが、控えめさと熱さに、頭脳の明晰さが同居した何とも学者らしい人間性が、透き通って見える文章にあなたも共感するでしょう。
本を愛する私たちに必要な読書本とは人生を読書に捧げたこの著者のような方による暖かく、読者思いの本の事だと思いますが。そして読書とは結局自分で導く迷路。論文ではなく人間的なこの迷宮案内の方が遥かに煌めいて、文学愛好者に境界はない(何故なら文学は人間のものであり、アカデミックとは違う)ことを感じ信頼できます。
※途中で『透明な対象』の解説も紛れるため、こちらの本も読んでから読む事をオススメします。
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ロリータ、ロリータ、ロリータ 単行本 – 2007/10/23
若島 正
(著)
画期の新訳『ロリータ』を世に問い、絶賛を博した著者が、満を持して書き下ろす決定版『ロリータ』論、遂に刊行!
ナボコフが張りめぐらせた語り/騙りの謎の数々がいま、稀代の読み手の緻密な読解によって、見事に解き明かされていく。知的興奮と批評の醍醐味が溢れる衝撃の一冊!
ナボコフが張りめぐらせた語り/騙りの謎の数々がいま、稀代の読み手の緻密な読解によって、見事に解き明かされていく。知的興奮と批評の醍醐味が溢れる衝撃の一冊!
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社作品社
- 発売日2007/10/23
- ISBN-104861821576
- ISBN-13978-4861821578
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登録情報
- 出版社 : 作品社 (2007/10/23)
- 発売日 : 2007/10/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 296ページ
- ISBN-10 : 4861821576
- ISBN-13 : 978-4861821578
- Amazon 売れ筋ランキング: - 419,139位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,654位英米文学研究
- カスタマーレビュー:
著者について
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1952年生まれ。京都大学大学院修士課程修了。京都大学大学院文学研究科教授(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『乱視読者のSF講義 (ISBN-10: 433605441X)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年8月9日に日本でレビュー済み
ナボコフとプロブレム
⚫︎との出会い
見えない⚫︎
壁に掛けられた絵
映画の夢
二重露出
ローのトリック
Cの氾濫
翻訳という越境
私の部屋
シャーロットとの出会い
⚫︎、⚫︎、⚫︎
⚫︎との出会い
見えない⚫︎
壁に掛けられた絵
映画の夢
二重露出
ローのトリック
Cの氾濫
翻訳という越境
私の部屋
シャーロットとの出会い
⚫︎、⚫︎、⚫︎
2010年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原典はもう三度読んでるが、これ読んだらまた読みたくなっちゃうし。
2008年2月15日に日本でレビュー済み
キティのマフに落ちた霜の針や、お喋りしながら食事していて、どうしてもフォークで刺せない、つるつるすべるきのこに目を向けなければ、「アンナ・カレニナ」は単なる通俗小説に思えたし、エマのふわりと広がるスカートについて指摘されなければ「ボヴァリー夫人」も同様だった。これらの作品を再読に走らせたのが「ロシア文学講義」「ヨーロッパ文学講義」のナボコフで、そのナボコフの「ロリータ」を再読に走らせるのが若島氏だ。「読み」の天才ナボコフは、勿論、小説の手品師。こんなに楽しそうに小説を読む人も、こんなに楽しそうに小説を書く人も私は知らない。読者は若島氏のあとについて歩き、ナボコフの仕掛けたトラップをひとつずつ驚嘆の目で眺めるのだ。
ロリータ登場をほのめかす、茶色くなったリンゴの芯や、つやつや光るプラム!ハンバートがロリータの母にして自分の後妻シャーロットとの会話を避けるためにめくる「少女大百科」の「カ」のページ(カナダ、カナッペ、カヌー、カフェテリア、カメラ、カモ、カヤック……)は、何十頁、何百頁あとのロリータの隠しごと、ロリータとの一夜、そしてロリータの破滅という運命を全て暗示していた!?「ロリータ」翻訳者としてもっとも「ロリータ」を読み返した人であろう若島氏絶賛の“全篇で白眉の場面”とは!?……その場面を堪能し、その他の指摘を確認する歓びのために、また「ロリータ」を再読しなくては!
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2008年2月10日に日本でレビュー済み
今まで若島さんの本は何冊か読ませて頂きましたが、その中でも一番興味深く読ませて頂いています。若島さんの読みが一体どういうものなのか、その読み手を綿密に、かつ劇的に示してくれています。小説の読みは十人十色なのでしょうが、この若島さんの「読み方」を知る、というだけでも一読の価値は十分にあると思います。彼の言う「読み」とは、パンの屑を拾うような、祝福するような白樺の霜の針に目をとめるような、細やかでやわらかな「営み」なのだと思いました。
2007年11月26日に日本でレビュー済み
本書の著者はナボコフの「ロリータ」の訳者。
訳者として気付いた「ロリータ」の勘所を解説した本。
京大文学部教授らしい、本格的な論文を期待している向きは裏切られる。
本書には正統的な切れ味良い論文ではなく、読み物的な軽いエッセイ風の解説話しかない。
学問のきらめきや文学的想像力の飛翔を期待したら、裏切られるしかないのが残念。
訳者として気付いた「ロリータ」の勘所を解説した本。
京大文学部教授らしい、本格的な論文を期待している向きは裏切られる。
本書には正統的な切れ味良い論文ではなく、読み物的な軽いエッセイ風の解説話しかない。
学問のきらめきや文学的想像力の飛翔を期待したら、裏切られるしかないのが残念。