1.ドイツにも日本のカミカゼのような特攻隊があったことはあまり知られていないので、その存在を明らかにした点で著者を評価することができる。ただ、「ドイツ空軍強襲飛行隊」(オスプレイ軍用機シリーズ52)にも本書でインタビューにも応じているハヨ・ヘルマン氏や特攻についての記述がある。興味のある方はそちらも参照されたい。
2.テーマは特攻なので、切羽詰まった時期での作戦となる(この点日本もドイツも変わらない)。実際本書でとりあげられている2つのミッションはいずれもドイツ敗戦間際の1945年4月に実施されているが、本書では1920年頃からの歴史的事項に触れているので、唐突に特攻が出てくるのではなく、特攻に至るまでの歴史的経緯がわかりやすい。
3.ドイツの特攻機Bf109や米軍のB17爆撃機等の性能や特徴にも触れられているので2.とも相俟って歴史や兵器のスペックに詳しい人はサクサク読めるし、そうでない人にもわかりやすいと思う。
4.タイトルは「ヒトラーの特攻隊」であり、そのミッションについての記述は勿論興味深いが、重点は戦後のドイツにおける第二次世界大戦やヒトラー、ナチスに向き合うドイツ人の姿勢に対する部分だろう(「第'10章 埋もれた60年」)。
第二次世界大戦の口火を切ったのはドイツであり、その巨悪を前に、ドイツ人が自らの犠牲を訴えることは、自らの罪を軽く見せる言い訳と受け止められる(p162)とか、自由な民主社会に亀裂をもたらす輩には、自由を認めないという姿勢(「戦う民主主義」p179)も過去の戦争に鑑みれば、やむを得ないかもしれない。
しかし、本書でインタビューに応じているベーム氏の指摘するように「ベルサイユ条約がなければヒトラーはなく、ヒトラーがいなければ戦争でドイツが負けることもなかった・・・」ことも確かだろう。この言葉からはベーム氏だけではない多くのドイツ人の心の叫びや慟哭が聞こえてくる。
本書が多くの人に読まれ、平和や国際協調を考えるきっかけとなることを祈ります。
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ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たち 単行本 – 2009/1/24
三浦耕喜
(著)
第二次大戦末期のドイツにもカミカゼ=「特攻隊」があった。その名は「エルベ特別攻撃隊」。
命じた指揮官ハヨ・ヘルマン(現在95歳)、従った隊員たちヨアヒム・ヴォルフガング・ベーム(現在85歳)、エーリッヒ・クロイル(現在89歳)等……、生き証人たちの証言で綴る衝撃のノンフィクション。歴史の空白を埋めるスクープ!
命じた指揮官ハヨ・ヘルマン(現在95歳)、従った隊員たちヨアヒム・ヴォルフガング・ベーム(現在85歳)、エーリッヒ・クロイル(現在89歳)等……、生き証人たちの証言で綴る衝撃のノンフィクション。歴史の空白を埋めるスクープ!
- 本の長さ253ページ
- 言語日本語
- 出版社作品社
- 発売日2009/1/24
- ISBN-104861822246
- ISBN-13978-4861822247
登録情報
- 出版社 : 作品社 (2009/1/24)
- 発売日 : 2009/1/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 253ページ
- ISBN-10 : 4861822246
- ISBN-13 : 978-4861822247
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,063,181位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 442位ドイツ・オーストリア史
- - 2,909位ヨーロッパ史一般の本
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2014年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年4月4日に日本でレビュー済み
ドイツにも神風特攻隊のようなエルベ特別攻撃隊というのがあったことは寡聞にして知らず、その点は新鮮ではあった。ただ、本書はその点にもちろん焦点を当てつつも、やんわりとドイツの戦争責任のとり方が、世間一般で称賛されるほど本質的に是認されるべきものかに疑義を呈している。全体としての気づきは次のようなところだが、ドイツではタブーとして余り表に出ないところを日本人記者がえぐり出したことは誠に素晴らしいと思う。
メッサーシュミットBf109はドイツ国外でのライセンス生産を含め33000機生産=戦闘機の生産機数としては史上最多
ナチスは、既存の新聞社を買い取って党機関紙にした。
ドイツ有権者のうち、5%が支持すれば極右勢力は国政で議席をもった
国防軍のナチス的敬礼はヒトラー暗殺未遂事件(1944.7.20)以降!ナチスのシステムに軍を結びつけるため。
米国政治学者ダニエル・ゴールドハーゲン:ホロコーストには「普通のドイツ人」にも責任がある、と指摘。
ナチスを黙認した「国民」こそ最も解明されるべき謎!
ナチスだけが加害者ではなかったという主張は、ドイツの戦争責任論に新たな視点を
ナチスばかりに罪を着せて自身を検証することを忘れれば、かえって「ナチス的なもの」の再来を招く。ナチスは悪魔の所産ではなく人間の心から生み出されたもの。
ただし、国民を守るのが国家の務めであり、国際社会に対し賠償の責任を担い国民に累が及ないようにするのも国家の務めでこれ以外に道があったのか?
キリスト教社会では「自殺」タブーであり教会での葬儀をみとめないところも。
ヒトラー曰く「生き残る可能性は兵士に残すべきだ」
エヒテ・ボーネン・カフェ(本物の豆のコーヒーだ)・・・戦争中、更に旧東ドイツでは贅沢ないっぱいを表す表現
メッサーシュミットBf109はドイツ国外でのライセンス生産を含め33000機生産=戦闘機の生産機数としては史上最多
ナチスは、既存の新聞社を買い取って党機関紙にした。
ドイツ有権者のうち、5%が支持すれば極右勢力は国政で議席をもった
国防軍のナチス的敬礼はヒトラー暗殺未遂事件(1944.7.20)以降!ナチスのシステムに軍を結びつけるため。
米国政治学者ダニエル・ゴールドハーゲン:ホロコーストには「普通のドイツ人」にも責任がある、と指摘。
ナチスを黙認した「国民」こそ最も解明されるべき謎!
ナチスだけが加害者ではなかったという主張は、ドイツの戦争責任論に新たな視点を
ナチスばかりに罪を着せて自身を検証することを忘れれば、かえって「ナチス的なもの」の再来を招く。ナチスは悪魔の所産ではなく人間の心から生み出されたもの。
ただし、国民を守るのが国家の務めであり、国際社会に対し賠償の責任を担い国民に累が及ないようにするのも国家の務めでこれ以外に道があったのか?
キリスト教社会では「自殺」タブーであり教会での葬儀をみとめないところも。
ヒトラー曰く「生き残る可能性は兵士に残すべきだ」
エヒテ・ボーネン・カフェ(本物の豆のコーヒーだ)・・・戦争中、更に旧東ドイツでは贅沢ないっぱいを表す表現
2009年11月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
センセーショナルなタイトル以上に、内容は重く正統派の近代ドイツ史の作品。
本書は本来、我々日本人ではなく、ドイツ人自身、欧米諸国の人々こそ読むべき作品だと思う。
筆者には、ぜひ本作品を英訳・独訳し世界に向けて発してもらいたい。
ナチスだけが悪いのか?ヒトラーだけが悪魔なのか?大部分のドイツ国民も当時はナチスに陶酔し、間接・直接的に支持し
利益を享受していたのでは、という私の漠然とした日頃からの想いは、本作品によって確信に変わった。
我が国との対比で、ドイツの「戦後」への対応は好意的に描かれることが多いが、むしろ、まだ戦後は終わっておらず、
これら過去に真正面から向き合う時期が来るのだろうと思う。
臨場感あふれる兵士たちの表情、出撃シーン、戦闘シーンが描かれており、一方で、歴史的背景や事実、当時の戦況も
うまく補足されており、内容は非常に濃いにも関わらずスムーズで読みやすいのはさすがベルリン駐在したプロのジャーナリストの作品。
近代ドイツ史をライフワークに、冒頭の外国語訳とともに、続編、新たなる作品も期待したい力作で良書。
本書は本来、我々日本人ではなく、ドイツ人自身、欧米諸国の人々こそ読むべき作品だと思う。
筆者には、ぜひ本作品を英訳・独訳し世界に向けて発してもらいたい。
ナチスだけが悪いのか?ヒトラーだけが悪魔なのか?大部分のドイツ国民も当時はナチスに陶酔し、間接・直接的に支持し
利益を享受していたのでは、という私の漠然とした日頃からの想いは、本作品によって確信に変わった。
我が国との対比で、ドイツの「戦後」への対応は好意的に描かれることが多いが、むしろ、まだ戦後は終わっておらず、
これら過去に真正面から向き合う時期が来るのだろうと思う。
臨場感あふれる兵士たちの表情、出撃シーン、戦闘シーンが描かれており、一方で、歴史的背景や事実、当時の戦況も
うまく補足されており、内容は非常に濃いにも関わらずスムーズで読みやすいのはさすがベルリン駐在したプロのジャーナリストの作品。
近代ドイツ史をライフワークに、冒頭の外国語訳とともに、続編、新たなる作品も期待したい力作で良書。
2009年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本が戦争の悲劇を繰り返さないように、今なにが出来るのか。先入観だけで非難するのではなく、貴重な体験者の生きた声をまず受け入れ歴史を客観的に考え直してみる事も大事なのではないでしょうか。特攻隊という悲劇がドイツにもあったというお話、衝撃を受けました。戦争を知らない私ですが、この本をきっかけにドイツに何があったのか、心から詳しく知りたいと思いました。戦争体験者が高齢化する中、勇気を持って本書を執筆されたことに敬意を表したいと思います。
2014年5月17日に日本でレビュー済み
ドイツでは、書面にして出版できない事情の中、インタビューと記録から苦労してまとめあげたことに敬意を表します。
創設者ハヨ ヘルマンがカミカゼに教示を受け、特攻隊創設に至ったか、ドイツと日本の比較もできますが、戦後かなり経過してからの研究につき、生存者も少なく、ドイツの国内事情から元隊員も多くを語らないというところです。要因としては、日本とは違い、特攻隊の規模が小さかったこともあるでしょう。だから多くの隊員から話が聞けないので、ハヨヘルマンからの情報は重要ですが、もっと多くの隊員の話と史実をまとめることがしたいのですが、時すでに遅し、でしょうか?
熟練パイロットはMe262等に割り当てられ、ほとんどの隊員が20歳前後のベテランではない訓練生の域を出ない若者です。一人30代の大尉がいましたが、彼は連合軍の爆撃で婚約者を失っており、復讐の念か、気持ちのやり場がなくなって作戦に志願しています。戦後かなりたって同人の墜落位置から機体と遺体が発掘され、遺体からは身分証明書と婚約者の写真を身に着けていたとのことで、その位置には記念碑がたっているとのことです。
隊員の心情を比較するのには情報量が不足してますが、自己犠牲精神は空軍だけでなく国防軍、武装SSでもありましたが、ドイツの場合は生還の可能性をゼロにしていないという違いがあり、生還可能性ゼロの兵器は開発製造されたのに使用されてあせん。(ドイツ版桜花)
日本ではゼロ戦を開戦時から終戦時まで使用、ドイツもメッサーシュミットを開戦時から終戦時まで使用、連合国側は最新の機体を繰り出してくるので最後は、この機体を使用しての特攻になってしまいます。
本書では、国内事情、精神論の相違、空軍内の話等の背景から理解できるように構成されています。
創設者ハヨ ヘルマンがカミカゼに教示を受け、特攻隊創設に至ったか、ドイツと日本の比較もできますが、戦後かなり経過してからの研究につき、生存者も少なく、ドイツの国内事情から元隊員も多くを語らないというところです。要因としては、日本とは違い、特攻隊の規模が小さかったこともあるでしょう。だから多くの隊員から話が聞けないので、ハヨヘルマンからの情報は重要ですが、もっと多くの隊員の話と史実をまとめることがしたいのですが、時すでに遅し、でしょうか?
熟練パイロットはMe262等に割り当てられ、ほとんどの隊員が20歳前後のベテランではない訓練生の域を出ない若者です。一人30代の大尉がいましたが、彼は連合軍の爆撃で婚約者を失っており、復讐の念か、気持ちのやり場がなくなって作戦に志願しています。戦後かなりたって同人の墜落位置から機体と遺体が発掘され、遺体からは身分証明書と婚約者の写真を身に着けていたとのことで、その位置には記念碑がたっているとのことです。
隊員の心情を比較するのには情報量が不足してますが、自己犠牲精神は空軍だけでなく国防軍、武装SSでもありましたが、ドイツの場合は生還の可能性をゼロにしていないという違いがあり、生還可能性ゼロの兵器は開発製造されたのに使用されてあせん。(ドイツ版桜花)
日本ではゼロ戦を開戦時から終戦時まで使用、ドイツもメッサーシュミットを開戦時から終戦時まで使用、連合国側は最新の機体を繰り出してくるので最後は、この機体を使用しての特攻になってしまいます。
本書では、国内事情、精神論の相違、空軍内の話等の背景から理解できるように構成されています。
2012年7月6日に日本でレビュー済み
初耳だった
生き残った隊員と作戦立案者にインタビューをして書かれた本
特攻にいたるまでの経緯も丹念に述べてある
後半はドイツの特攻隊を歴史に埋もれさせてきた「ドイツの戦後」を追っている
後半が結構なキーポイントなんだよな
国民総ナチスのお手伝い状態であったのを「なかったことにした」戦後
著者のこの本を書いた動機はそういう政治的な違和感に帰するのではないだろうか
一億総懺悔が無責任、というなら、歴史の隠蔽もまた卑怯であろう
生き残った隊員と作戦立案者にインタビューをして書かれた本
特攻にいたるまでの経緯も丹念に述べてある
後半はドイツの特攻隊を歴史に埋もれさせてきた「ドイツの戦後」を追っている
後半が結構なキーポイントなんだよな
国民総ナチスのお手伝い状態であったのを「なかったことにした」戦後
著者のこの本を書いた動機はそういう政治的な違和感に帰するのではないだろうか
一億総懺悔が無責任、というなら、歴史の隠蔽もまた卑怯であろう