アルゼンチンの国民的作家の本邦初翻訳。ヨーロッパで宗教改革がうずまくなか、それへの抵抗として戦闘性を増していくカトリックの過酷な布教・改宗運動のさまがよくわかる本です。差別のなかで必死に生きるひとりのユダヤ人の生きざまを、基本的な史実に基づいて描いています。圧倒的なボリューム(上下二段で500ページ)によって、中世ラテンアメリカの混沌がよみがえる。すばらしい出来栄え。
ユダヤ人であるというだけで異端審問にさらされて拷問されることもあるなかで、カトリックのふりをし続けることの限界が、自分自身のアイデンティティを模索する成長過程と結びついています。典型的な教養小説。異端であり続けることを選ぶという倫理的な選択が気持ちいい。
行政や協会、異端審問所の腐敗や権力闘争もくわしく描かれる一級のエンターテインメント。「私のように生きてはいけない」という父の言葉の解釈が変わっていくのもよくできています。
歴史の重み、宗教の真理、小説の愉しさ。一度でいろいろ楽しめます。ぜひどうぞ。
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マラーノの武勲 単行本 – 2009/2/21
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「感動を呼び起こす自由への讃歌」――マリオ・バルガス=リョサ絶賛!
16~17世紀、南米大陸におけるあまりにも苛烈なキリスト教会の異端審問と、命を賭してそれに抗したあるユダヤ教徒の生涯を、壮大無比のスケールで描き出す。アルゼンチン現代文学の巨匠アギニスの大長編、本邦初訳!
垢にまみれ骨と皮だけになった身体。枷に締めつけられ潰瘍だらけになった両手足首。しかし、フランシスコの心は瓦礫の下で真っ赤に燃える燠そのものだ。そんな醜い男の姿を異端審問官たちはいら立ちの表情で見つめている。まったくもって我慢ならん厄介者め。
秘密の監獄へ彼を葬り去ってから十二年。あらゆる権利を剥奪し、繰り返し尋問にかけた。神学者たちと論争させ、屈辱を与え、脅迫もした。だが、フランシスコ・マルドナド・ダ・シルバはけっして降参しなかった。肉体的苦痛に対しても、精神的圧力に対しても。
(……)フランシスコの内面には、心の奥底から沸き起こってくる反逆の精神、けっして消すことのできない燠がめらめらと燃え上がっていたのだ。彼は自分同様、密かに信仰を保ちながらこの世をさまよっている人々がほかにもいることを知っていた。しかし、それは何と困難で葛藤に満ちた卑劣な人生なのだろう。ついに彼は打算的な考えをきっぱりと捨て、仮面を脱ぎ、堂々とおのれの信念を守りとおす道を選んだ。それまでの彼は、洗礼を受けて、外見上はキリスト教徒を装って生活する改宗ユダヤ人だった。
人はそれを、俗に“マラーノ(豚)”と呼んだ。
(本書「プロローグ」より)
16~17世紀、南米大陸におけるあまりにも苛烈なキリスト教会の異端審問と、命を賭してそれに抗したあるユダヤ教徒の生涯を、壮大無比のスケールで描き出す。アルゼンチン現代文学の巨匠アギニスの大長編、本邦初訳!
垢にまみれ骨と皮だけになった身体。枷に締めつけられ潰瘍だらけになった両手足首。しかし、フランシスコの心は瓦礫の下で真っ赤に燃える燠そのものだ。そんな醜い男の姿を異端審問官たちはいら立ちの表情で見つめている。まったくもって我慢ならん厄介者め。
秘密の監獄へ彼を葬り去ってから十二年。あらゆる権利を剥奪し、繰り返し尋問にかけた。神学者たちと論争させ、屈辱を与え、脅迫もした。だが、フランシスコ・マルドナド・ダ・シルバはけっして降参しなかった。肉体的苦痛に対しても、精神的圧力に対しても。
(……)フランシスコの内面には、心の奥底から沸き起こってくる反逆の精神、けっして消すことのできない燠がめらめらと燃え上がっていたのだ。彼は自分同様、密かに信仰を保ちながらこの世をさまよっている人々がほかにもいることを知っていた。しかし、それは何と困難で葛藤に満ちた卑劣な人生なのだろう。ついに彼は打算的な考えをきっぱりと捨て、仮面を脱ぎ、堂々とおのれの信念を守りとおす道を選んだ。それまでの彼は、洗礼を受けて、外見上はキリスト教徒を装って生活する改宗ユダヤ人だった。
人はそれを、俗に“マラーノ(豚)”と呼んだ。
(本書「プロローグ」より)
- 本の長さ552ページ
- 言語日本語
- 出版社作品社
- 発売日2009/2/21
- ISBN-104861822335
- ISBN-13978-4861822339
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商品の説明
著者について
マルコス・アギニス(Marcos Aguinis)1935年アルゼンチン生まれ。作家、神経外科医、精神分析家。音楽、歴史、芸術にも精通。小説、随筆、伝記など30作以上を出版。軍事政権時代に発禁処分となった代表作『逆さの十字架』は大ベストセラーとなり、南米の作家として初のスペイン・プラネッタ賞を獲得。著作は世界各国に翻訳されている。アルゼンチン作家協会名誉賞、ブエノスアイレス賞、ラ・プラタ大学改革賞、フランス文化芸術功労勲章、シュヴァリエ賞などを受賞。アルゼンチン文化長官としてユネスコや国連の支援による民主化プログラムを実施、ユネスコ平和教育賞候補にノミネート。現在はブエノスアイレスの有力新聞「ラ・ナシオン」紙をはじめ、南米、欧州の様々な新聞、雑誌に寄稿、世界中で教育、芸術、科学、政治学についての講演もおこなう。2002年、テルアビブ大学名誉博士号。04年コロンビアで開催された「民主主義の発展とテロリズムに関する会合」に招待。05~06年ワシントン滞在、ボストン大学で講義をおこなった。
八重樫克彦(やえがし・かつひこ)1968年岩手県生まれ。ラテン音楽との出会いをきっかけに、長年、中南米やスペインで暮らし、語学・音楽・文学などを学ぶ。現在は翻訳業に従事。訳書に『音楽家のための身体コンディショニング』(音楽之友社、八重樫由貴子と共訳)。
八重樫由貴子(やえがし・ゆきこ)1967年奈良県生まれ。横浜国立大学教育学部卒。12年の教員生活を経て、夫・克彦とともに翻訳業に従事。
八重樫克彦(やえがし・かつひこ)1968年岩手県生まれ。ラテン音楽との出会いをきっかけに、長年、中南米やスペインで暮らし、語学・音楽・文学などを学ぶ。現在は翻訳業に従事。訳書に『音楽家のための身体コンディショニング』(音楽之友社、八重樫由貴子と共訳)。
八重樫由貴子(やえがし・ゆきこ)1967年奈良県生まれ。横浜国立大学教育学部卒。12年の教員生活を経て、夫・克彦とともに翻訳業に従事。
登録情報
- 出版社 : 作品社 (2009/2/21)
- 発売日 : 2009/2/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 552ページ
- ISBN-10 : 4861822335
- ISBN-13 : 978-4861822339
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,186,564位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 303位スペイン・ポルトガル文学研究
- - 445位スペイン文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2009年5月2日に日本でレビュー済み
16〜17世紀の南米大陸でかように過酷で苛烈なユダヤ狩りがおこなわれていたとは知らなかった。本書の主人公であるフランシスコ・マルドナド・ダ・シルバは実在の人物であり、彼はユダヤ人としての誇りを捨てず、異端審問という名の残虐きわまりない迫害に一人抵抗し殉教していった信念の人だった。同じくユダヤ教徒として異端審問にかけられ、不具として一生を終えた父の『わたしが歩んできた不幸な人生を繰り返すようなことはしないでくれよ』という言葉は、彼の信念を変えることはなかった。
どうしてそこまで拘るのか?アイデンティティの問題だとしてもどうして自ら茨の道を選んでゆくのか?宗教を信じないぼくにとってフランシスコの選んだ道は理解に苦しむものなのだが、そんなぼくでさえ彼の姿を追うごとにその精神の崇高さに感動せざるを得なかった。
本書はそのフランシスコの生涯をなぞって描かれる。だが秀逸なのは、子ども時代から描かれる彼の人生の合間に、異端者として捕らえ重大な局面を迎える三十五歳の彼の姿が挿入され、それがラストに向かって見事に集約されていく構成だ。それはジワジワと終末に向かっていくような異様な迫力を与え、読む者に戦慄をもよおす。
ただ自由でありたいがために、己の信念を貫いた男の壮絶な生涯。上下二段組で500ページ強というボリュームは、この一人の男の清冽でまっすぐで崇高な姿をあますことなく描ききっている。読んでよかったと心から思える本だった。傑作です。
どうしてそこまで拘るのか?アイデンティティの問題だとしてもどうして自ら茨の道を選んでゆくのか?宗教を信じないぼくにとってフランシスコの選んだ道は理解に苦しむものなのだが、そんなぼくでさえ彼の姿を追うごとにその精神の崇高さに感動せざるを得なかった。
本書はそのフランシスコの生涯をなぞって描かれる。だが秀逸なのは、子ども時代から描かれる彼の人生の合間に、異端者として捕らえ重大な局面を迎える三十五歳の彼の姿が挿入され、それがラストに向かって見事に集約されていく構成だ。それはジワジワと終末に向かっていくような異様な迫力を与え、読む者に戦慄をもよおす。
ただ自由でありたいがために、己の信念を貫いた男の壮絶な生涯。上下二段組で500ページ強というボリュームは、この一人の男の清冽でまっすぐで崇高な姿をあますことなく描ききっている。読んでよかったと心から思える本だった。傑作です。