中国の大学生の意見を羅列したもの．
そこから伺える内情分析などはなし．
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伺える「意見」は，人民日報その他の中国メディアのものと大差なし．
すなわち「歴史認識」「尖閣諸島」「日本政府は悪いが日本人はいい人」等．
中国の若者にとって，「靖国神社参拝」は「日本政府の歴史認識」の象徴（p.23）
「日本政府」には「歴史認識」を中心に，厳しい批判をぶつけているが，「日本人」に対しては最も低かった，「歴史認識」に触れた記述（p.25-26，34）
「相互理解できていない」とする理由の殆ども「歴史認識」絡み（p.92）
「小さい頃，テレビドラマや映画から，日本人は人殺ししか知らない殺人鬼だと思っていた｣（p.125）
｢中国の安い労働力を利用している日本企業」（p.137）
｢日本で現在働き，税金を納めている人々は，中国に対して，中国人に対して，何一つ悪いことをしたことのない人々だ｣（p.137）
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作文は記名式であるので，本音は期待できず．
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著者もやや中国寄り．
（盲目的親中ではなさそうだが）
たとえば何の疑いもなく，「溝を埋める努力が日本政府に求められる」（p.155-156）と書く．
では，中国側に努力は必要ないのか？
『日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う』等によれば，中国側の教科書こそ，中国共産党のプロパガンダのための様々な虚飾にまみれており，福島香織『中国のマスゴミ』（扶桑社新書）によれば，中国のマスメディアでは安易な反日記事が横行しているそうだが，そういうものは是正しなくてもよいのか？
上述の「日本人は人殺ししか知らない殺人鬼」という刷り込みを見ても，反日ムードの主因は中国側にあるとしか思えないのだが．
また著者は，
「靖国神社参拝」イコール「日本が侵略戦争を美化すること」というのが中国側の認識である以上，その声に耳を傾けて，友好を目指すのは外交の基本（p.157）
とも書く．
しかしその認識がそもそも誤りであるのに，誤った認識を正しいものにするのではなく，誤った認識のほうに合わせて行動しろ，というのは論理破綻ではないのか？
しかもその誤った認識は，たしか90年代から急に登場したもの．
となれば今後も，何らかの日本に対する誤った認識が登場する可能性は，比較的高いと言わねばならず，その誤認識にいちいち合わせて行動するのは不利益であり，また，不可能に近い．
（もちろん，A級戦犯合祀を強行した，靖国神社の当時の松平宮司にも，かなり問題があるようだが，それは「歴史認識」とはまた別の話である）
それ以前に，具体的にどのようにすれば「歴史認識」問題をクリアできるというのか，中国側はこれまで一切明らかにしてはおらず，おそらく参拝を取りやめたとしても，それで歴史認識問題が片付くとは到底思えず．
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結局のところ本書は，おそらく著書の意図するところとは別に，上述の『中国のマスゴミ』や，石平『私はなぜ「中国」を捨てたのか』（ワック）の著述の傍証となっている．
石平は言う．
・「日本悪魔」の観念は，学者･ジャーナリストの「御著書」という形で「教示」される（p.74-75）
・防災訓練さえ，中国報道では「軍事演習」「軍国主義復活の象徴」呼ばわりされる（p.76-77）
・「南京大虐殺」に関し，小規模な「日本の民間団体」の催しを，「人民日報」は反日キャンペーンのダシにして大々的に報じている（p.80-81）
また，福島香織は次のように言う．
・日系企業の悪口さえ書けば，記事が大きくなる風潮があるため，飛ばし記事が多発している（p.5）
これらを，上述の「アンケート結果」と照合してみるに，やはりそういう刷り込みがおこなわれているのか，と再確認できた次第．
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