問題の切り口や見方を変えてみる。そうすると、深刻だと思われる問題や解決できないと思われる問題でも、問題ですらなくなったりすることがある。
リスクも同じことで、リスクそのものは避けられなくても、その受け止め方次第では、リスクは必ずしも厭わしいものではない、と受け止められる場合もある。
次の一節を読み、目から鱗が落ちた気がしました。
噴火で灰をかぶったキャベツを「商品価値のなくなったゴミ」ではなく「灰を落とせば食べられるキャベツ」ととらえることができれば、キャベツの損害の大部分はそもそも存在しなかったことになる
(P158より引用)
これは2004年の浅間山噴火の際、被害を受けたキャベツ農家を支援しようとして、高崎高島屋が灰のついたキャベツを販売したところ、あっという間に売り切れたという事実をふまえ、著者が「へっちゃらだい!」戦略という造語によってリスクマネジメントを論じた一例です。
つまり、「へっちゃらだい!」戦略とは、リスクをリスクとして捉えない戦略なのです。さらに筆者は次のようにいいます。
「石橋を叩いて渡る」ということわざがあるが、これになぞらえてリスクマネジメント戦略を分類すると、次のようになるかと思う。
1.石橋は叩かない、渡らない。
2.石橋を叩いて渡る。
3.石橋を補強して渡る。
4.命綱をつけて渡る。
5.泳ぐ訓練をしてから渡る。
通常のリスクマネジメントは、上記の1.から4.に相当する。これに対して「へっちゃらだい!」戦略は、5.に相当するのではないか。橋から落ちても、泳げばいい。橋から落ちること自体は、リスクではないととらえるわけだ。
(P161より引用)
PMBOKにおけるリスクマネジメントのセオリーからすると、それぞれ次のように言えるのではないでしょうか。
1.回避(=石橋を渡らなければ、石橋が崩れて川に落ちるというリスクを避けられる。)
2.受動的な受容(=石橋を叩くというリスク分析によって石橋を渡る決断をするが、石橋が崩れるというリスクに対しては何の対策もとらない。)
3.軽減(=石橋の補強をすることで、石橋が崩れて川に落ちるというリスクの発生確率や影響度を軽減する。)
4.転嫁(=石橋が崩れることは避けないが、もし崩れても命綱により川に落ちるのは防げるようにしておく。保険的意味合い。)
5.能動的な受容あるいは発生時対応戦略(=もし石橋が崩れて川に落ちたとしても、溺れないように泳ぎの準備をしておく。)
何でもかんでも「リスクだ」と騒いで右往左往してしまうことは、日常生活を振り返ってみても心当たりがありますね。
何がへっちゃらで、何がダメなのか、どこまでならOKでどこからはNGなのか、自分自身の中にそうした判断基準をもてれば、めちゃくちゃリスクに強くなると思いました。
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リスクの正体!-賢いリスクとのつきあい方 (木星叢書) 単行本(ソフトカバー) – 2009/1/7
山口浩
(著)
ダブルポイント 詳細
現代社会はリスク、つまり将来の不確実性に満ちあふれている。だが、いたずらにリスクを嫌い、回避しようとあやしげな予測に頼ったり、コストを度外視して完全に消去しようとするのも問題である。必要なのは、リスクと正しくつきあうためのリテラシーであり、不確実な状況から先を読む力=予測力である。
「予測市場」研究の第一人者が、市場経済、技術開発の動向、政界の流れ、トレンドの動向……などさまざまな分野のトピックを例にとり、最新の理論を駆使した予測力をたかめるノウハウをレクチャー。不確実性の時代を生き抜くための意思決定指南書!
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- 本の長さ252ページ
- 言語日本語
- 出版社バジリコ
- 発売日2009/1/7
- ISBN-104862381219
- ISBN-13978-4862381217
商品の説明
著者について
1963年生まれ。経営学博士。駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部助教授。専門分野はリアルオプション、予測市場、ファイナンス、経営学、仮想世界の経済等。日常の話題から社会、経済、政治の動向を予測するブログ「H-Yamaguchi.net」は注目度急上昇中。
登録情報
- 出版社 : バジリコ (2009/1/7)
- 発売日 : 2009/1/7
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 252ページ
- ISBN-10 : 4862381219
- ISBN-13 : 978-4862381217
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,162,028位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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2009年1月7日に日本でレビュー済み
リスクという言葉はもはや日常語になって久しいが、
本書はそれに関した厳密な理論の解説というよりも、
それにまつわる、何気に読めるエッセイとして大変に楽しい。
内容のベースはリアル・オプションという割とスタンダードな考えであり、
すべての資産の価格には変動リスクがあるという考えを敷衍したもので、
それ自体には特に変わったものではない。
一般に、リスクとは客観的に存在しているものであり、
それを前提に固い議論をするのが、
応用数理的な学者としては常道であるに違いない。
しかし、著者は、リスクがなければ精神が弛緩して
逆説的にリスクが高まるというような主観面での指摘もする。
あるいは、火山灰をかぶって売り物にならないと思われるレタスでも、
それは別に問題ないと消費者に訴えればいいことかもしれないといった、
リスクも本人の心次第でリスクにならない場合があると指摘する。
常に、いくつかの視点の転換があって、読んでいるものを飽きさせない。
あるいはそれは、著者が経済学というガチンコ分野でなく、
経営学という、ある種ヌエのような分野にいるからかもではないだろうか。
またトピックとしての、イスラム金融やオプション的保険金融技術のさらなる進歩のアイデア、
アイオワ大学の選挙予測市場の発展の話や、
東京都のオリンピック誘致の公共事業のプロジェクト・ファイナンス化などは、
今後の社会の新たな常識として、多くの人に共有され、真剣に考慮されるべきだろう。
本書はそれに関した厳密な理論の解説というよりも、
それにまつわる、何気に読めるエッセイとして大変に楽しい。
内容のベースはリアル・オプションという割とスタンダードな考えであり、
すべての資産の価格には変動リスクがあるという考えを敷衍したもので、
それ自体には特に変わったものではない。
一般に、リスクとは客観的に存在しているものであり、
それを前提に固い議論をするのが、
応用数理的な学者としては常道であるに違いない。
しかし、著者は、リスクがなければ精神が弛緩して
逆説的にリスクが高まるというような主観面での指摘もする。
あるいは、火山灰をかぶって売り物にならないと思われるレタスでも、
それは別に問題ないと消費者に訴えればいいことかもしれないといった、
リスクも本人の心次第でリスクにならない場合があると指摘する。
常に、いくつかの視点の転換があって、読んでいるものを飽きさせない。
あるいはそれは、著者が経済学というガチンコ分野でなく、
経営学という、ある種ヌエのような分野にいるからかもではないだろうか。
またトピックとしての、イスラム金融やオプション的保険金融技術のさらなる進歩のアイデア、
アイオワ大学の選挙予測市場の発展の話や、
東京都のオリンピック誘致の公共事業のプロジェクト・ファイナンス化などは、
今後の社会の新たな常識として、多くの人に共有され、真剣に考慮されるべきだろう。