人間の仕事(務め)とは、死ぬまで自分をいかして生きる事なんじゃないか・・
まえがきにそんな言葉がある。
同じ様な事を、多くの賢人・偉人が語ってきた。
ふと、10年余り前のパトリス・ジュリアンの本「32日の月」で「本当の職業は人生。本当の仕事は人間である事」とあったのを思い出した。
2千年余り前、「人はパンのみにて生くるにあらず」と看破された方も居られる。
本書は200頁ほどの小さい本。その下3分の1は余白で、所々にシェーマや写真がある。
深い事をやさしく考えていく素晴らしい本で、決め付けも押し付けもない。
いろんな人に会い・現場に赴いて、感じたり語ったり、考えた事を誠実に述べてある。
個人の、とても深い部分の価値観やモチベーション・情動、にまで目を向けていて非常に共感するが、「その通りに行動する」為の前提としては「自律、自己修正の出来る、『責任』をとる存在としての自己信頼、または覚悟」・・が要るのだろうと思う。
真の意味で大人(現実適応のみでなく、自分の価値観や行動規範を持ち、かつ周囲とも協調する)である事、と言えるかも知れない。
本書は腑に落ちたり響いたりする処が多く、抜粋ではその何%も紹介出来ないが、幾つか印象深かった記載を挙げてみます。
まず、島のシェーマが目に付いた(20頁)。
島の、見えている処を「成果としての仕事」とすると、海に隠れた見えない部分があり、海面のすぐ下には、成果を支えている「技術・知識」がある。
更にその下にはその土台になる「考え方・価値観」がある。
それが知識や技術を選び出したり方向付けたり磨いたりする。
そして更にその土台には「あり方・存在」とでも言うべき層がある。
どんな風に働いているか、どんな風に生きているか。
(シェーマだとストンと腑に落ちるから不思議だ・・お書きになるとお分かりになるでしょう)
現代では第三次産業が70% を占める。 肉体労働、頭脳労働より感情労働(や感覚労働)が多い。
それらのサービス業もマニュアル化されているのだが、マニュアル通りの形でなく、そこに実際に人間が「いるのか、いないのか」・・言わば、心配りや思いやりがこもっているか。
それは技術レベルだけの問題でなく、たとえ下手であったとしても、その仕事に納得したり 好きに成る事もある。(32、33頁)
「人の勇気を起動して突き動かすのは、何よりも実際に勇気を出して行動した人の姿だ」
そこに人が「いる」仕事、「いない」仕事。「いる」行動、「いない」行動では大きく違う。それが、会社を「働き甲斐のある会社」に、集まりが「関わり甲斐のある集まり」に、今この瞬間が「生き甲斐のある時間」になる始まり。(44頁)
人は、 例えば、美容師になりたい訳でも、野球選手に成りたい訳でもなく、〈自分〉になりたい。より〈自分〉になれる仕事(や趣味)を探している。
働く事を通じて、「これが私です」と表現出来る、そんな仕事を探しているんじゃないか。(52,53頁)
正解を探し続ける心、間違いのない買い物、損の無い買い物をしたいという観念は、人を「今この瞬間」から引き剥がす作用がある。
いつも何か他に、どこか余所(よそ)に、正しい答えが、もっといいものがあるんじゃないかと 気を散らす。(59頁)
カタログ化した社会、高度に情報化された社会は、読みごたえのあるアウトドア雑誌の様な可笑しみがある。
さっさと出かければいいのに、写真を眺め、他人の旅の逸話に目を通し、豊富な二次情報を摂取する。普段着でも少しの山歩きは出来るのに、間違いないウェアやギア選びに時間をかけたり。同じことは、仕事や会社選びでも起こりやすいはずだ。(61頁)
仕事とは、自分がお客さんでいられない事、つまり受け手や傍観者になれない事(自分がしなければ気がすまない事)がいいのだろう(62頁)。何が流行っているとか儲かるとか、こう生きるべきとかいった外側の指標ではなく、自分の中の葛藤。「ザワザワする」ところ。「好き」より、更に前の感覚的なところ(77頁)。
人づきあい・自分付き合いで、自分自身⇔自分⇔他者 という事を考えてみよう。自分自身と他者の間を取り持つ、「調整役としての自分」の存在を(124頁)
また、 自分自身⇔自分⇔社会 という構図も(129頁)。
社会の存在が非常に大きくなって自分がその中に巻き込まれ、「自分自身」の方と関われなくなってしまうと、大切なものを見失ってしまう。
仕事は、自分の課題と社会の課題が重なるところにある。また、イームズの「デザイン・ダイアグラム」を紹介し、
A.デザイン事務所の興味や関心事 B.クライアントの関心事 C.社会の関心事 の重なり合う部分に打ち込む事がポイントと述べる。
また、「成長出来る仕事」の事を ある社長は 「 やりたい、出来る、やるべき」が要素だと。
「天職」について、ある社会起業家は 「 好きな事、得意な事、大事にしたい事」が重なる部分と語る(157頁)
あとがきの中に尚、メッセージがある。
現代では昔の様な奴隷は減ったが、奴隷的な人間は増えた。
制度としては無くなったかも知れないが、各人の思考や習慣として内面化された。と警鐘を鳴らす。
天然酵母パンの草分け、ルヴァンのオーナーを紹介している。
「商売になってしまわないようにするのが大事。家庭の味を商品にして売るのでなく、単純に家庭の味を作って提供したい。」
という様に、パンも、他の事も、お金で間に合わせるより関係性の中で価値を交わし合う事で生きている。と
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
自分をいかして生きる 単行本(ソフトカバー) – 2009/9/17
西村佳哲
(著)
人間の一番の仕事とは、「自分をいかして生きる」ことなんじゃないか?
〈仕事〉は〈人生〉と、〈働き方〉は〈生き方〉と背中合わせで、他の誰にも肩代わり出来ない一人ひとりの〈生〉に直結している……。
仕事と真摯に向き合う人々の支持を受けて読みつがれるロングセラー『自分の仕事をつくる』(晶文社刊)の6年越しの続編。
〈自分の仕事〉ってなんだろう? それはどのように可能なのか?
「働き方研究家」による、ワークスタイルとライフスタイルの探検報告・第2弾。
──人が「より生きている」ようになることを助ける働きが、「いい仕事」なんじゃないか。
その眼差しで世界を眺めると、仕事という言葉をめぐる風景が変わり始める。
──もしそれが自分だけのこととは思えなかったら、それを世界に差し出してみることができる。
同じ時代を生きている人たちと共有できるかもしれないという予感があるから、
「これはわたしたちの問題なんじゃないか?」と思えるから、形にすることができる。
──やらされてやるような労働でなく、一人ひとりが自分を突き動かしている力、
この世界に生まれてきた力を働きに変えて、つまり〈自分の仕事〉をすることで、
社会が豊かさを得る。そんな風景を本当に見たいし、自分もその一端で働き、
生きてゆきたい。
〈仕事〉は〈人生〉と、〈働き方〉は〈生き方〉と背中合わせで、他の誰にも肩代わり出来ない一人ひとりの〈生〉に直結している……。
仕事と真摯に向き合う人々の支持を受けて読みつがれるロングセラー『自分の仕事をつくる』(晶文社刊)の6年越しの続編。
〈自分の仕事〉ってなんだろう? それはどのように可能なのか?
「働き方研究家」による、ワークスタイルとライフスタイルの探検報告・第2弾。
──人が「より生きている」ようになることを助ける働きが、「いい仕事」なんじゃないか。
その眼差しで世界を眺めると、仕事という言葉をめぐる風景が変わり始める。
──もしそれが自分だけのこととは思えなかったら、それを世界に差し出してみることができる。
同じ時代を生きている人たちと共有できるかもしれないという予感があるから、
「これはわたしたちの問題なんじゃないか?」と思えるから、形にすることができる。
──やらされてやるような労働でなく、一人ひとりが自分を突き動かしている力、
この世界に生まれてきた力を働きに変えて、つまり〈自分の仕事〉をすることで、
社会が豊かさを得る。そんな風景を本当に見たいし、自分もその一端で働き、
生きてゆきたい。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社バジリコ
- 発売日2009/9/17
- ISBN-104862381480
- ISBN-13978-4862381484
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
西村佳哲(にしむら・よしあき)
1964年東京生まれ。プランニング・ディレクター、働き方研究家。
つくる・書く・教える、三種類の仕事に携わる。コミュニケーション・デザインの会社「リビングワールド」(2002~)代表。多摩美術大学非常勤講師。
全国教育系ワークショップフォーラム実行委員長(2002~04)。
働き方研究家としての著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)など。
1964年東京生まれ。プランニング・ディレクター、働き方研究家。
つくる・書く・教える、三種類の仕事に携わる。コミュニケーション・デザインの会社「リビングワールド」(2002~)代表。多摩美術大学非常勤講師。
全国教育系ワークショップフォーラム実行委員長(2002~04)。
働き方研究家としての著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)など。
登録情報
- 出版社 : バジリコ (2009/9/17)
- 発売日 : 2009/9/17
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 192ページ
- ISBN-10 : 4862381480
- ISBN-13 : 978-4862381484
- Amazon 売れ筋ランキング: - 761,894位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 95,991位社会・政治 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1964年 東京生まれ。リビングワールド代表。働き方研究家。武蔵野美術大学卒。大手建設会社を経て、つくる・書く・教える、大きく3つの領域で働く。開発的な仕事の相談を受けることが多い。2014〜2022年4月は、主に徳島県神山町に居住。同町の「まちを将来世代につなぐプロジェクト」第1期(2016〜2021)にかかわり、一般社団法人神山つなぐ公社の理事をつとめた。現在は東京在住。
カスタマーレビュー
星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
57グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
イメージ付きのレビュー
フィードバックをお寄せいただきありがとうございます
申し訳ありませんが、エラーが発生しました
申し訳ありませんが、レビューを読み込めませんでした
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2014年6月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
西村さんの本は、前著の「自分の仕事をつくる」以来でした。
その時も、いい本を手にした実感はありましたが、
今回のそれは、前作を上回る良書と思っています。
今の自分の境遇がそうさせるのかもしれませんが、
大変示唆に富んだ内容だったと思われます。
しかも、このページ数にして。
前作は、インタビューベースでしたので、どこか、社会科見学のような雰囲気でしたが、
今回は、西村さんの熟成された考え方が随所に垣間見れて、
大変、参考になるお話ばかりでした。
こうなってくると、三部作の最終巻を読みたくなってしまいますが、
しばらくは、この本の余韻に浸ることにして。
私個人としては、刑務所のくだりが良かったです。
個人の思考の自由については、誰も奪えないという趣旨の。
”まさに!”と思うところでした。
また、今回登場された方々も、僅かではあるものの、
インパクトの強い諸先輩方でした。
ありがとうございます。
今日、読み終えたばかりですが、感謝の想いでいっぱいです。
その時も、いい本を手にした実感はありましたが、
今回のそれは、前作を上回る良書と思っています。
今の自分の境遇がそうさせるのかもしれませんが、
大変示唆に富んだ内容だったと思われます。
しかも、このページ数にして。
前作は、インタビューベースでしたので、どこか、社会科見学のような雰囲気でしたが、
今回は、西村さんの熟成された考え方が随所に垣間見れて、
大変、参考になるお話ばかりでした。
こうなってくると、三部作の最終巻を読みたくなってしまいますが、
しばらくは、この本の余韻に浸ることにして。
私個人としては、刑務所のくだりが良かったです。
個人の思考の自由については、誰も奪えないという趣旨の。
”まさに!”と思うところでした。
また、今回登場された方々も、僅かではあるものの、
インパクトの強い諸先輩方でした。
ありがとうございます。
今日、読み終えたばかりですが、感謝の想いでいっぱいです。
2017年9月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
現代の社会に流通する仕事や創作活動への疑問点。やりたいことをして生きること。その中での哲学。スピリチュアルでよく取り上げられている内容のことも、クリエイターの目線から自然に語られています(自分自身と付き合うということなど)。そして最後はライフデザイン(資本主義社会など)のことにも話を広げて書かれていて、下手に資本主義社会やライフデザイン系の本を読んで知識を得ようと試みるよりも、行き詰ることなく読めます(資本主義社会の中で自分を生かすしかないとか、そういう方向に行ってない)。本当の生き方の視点から書いてくれているので、読んでいて、自分の方向性を、社会や既成概念に邪魔されることなく、指し示してもらった感じです。
2011年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書の題名に活かすという言葉がありましたが、人生にとって自分が活かされていることを感じることが出来ました。
自分を活かすとは、上手に活かされることです。運命を背負って生まれてきた以上は、その運命に任せて乗っていけばいいと思います。
自分を活かすとは、上手に活かされることです。運命を背負って生まれてきた以上は、その運命に任せて乗っていけばいいと思います。
2021年5月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一人ひとりの居場所に降り立ち、「人と仕事と生き方」についての冒険へ連れ立ってくれる。
社会の流れから一時的に逃れ、自分自身と対話するような冒険だ。
インタビュアでもある筆者の数々の"問い"が、読者自身の中にある行き先を示してくれる。
「数々の問い」というより、すべての言葉が「あなたはどうなの?」という問いとして感じられる。
だからなのか、読んでいると自分ごとのように感じられて読む手が止まらない。
「どんな◯○◯になりたいの?」という問いは、子どもに向けてもおもしろそうだ。
社会の流れから一時的に逃れ、自分自身と対話するような冒険だ。
インタビュアでもある筆者の数々の"問い"が、読者自身の中にある行き先を示してくれる。
「数々の問い」というより、すべての言葉が「あなたはどうなの?」という問いとして感じられる。
だからなのか、読んでいると自分ごとのように感じられて読む手が止まらない。
「どんな◯○◯になりたいの?」という問いは、子どもに向けてもおもしろそうだ。
2013年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一生懸命仕事をしている人の姿を追ってインタビューしてる内容が
自分に響く物があった。
なんとなく働いてる人こそ読んだ方がいい本。
なにかが変わる気がする。
自分に響く物があった。
なんとなく働いてる人こそ読んだ方がいい本。
なにかが変わる気がする。
2013年11月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
仕事の成果を出そうと日々私は必死でしたが、その背景にある「技術」「考え方」ひいては「あり方」といった生き方をじっくりみつめることの大切さを実感しました。生き方を考えさせられる一冊です。