まず農林水産省を解体し、地域密着型の第一次産業政策は地方自治体の創意工夫と経営判断に任せるしかないのではないか。
問題は、産業構造改革の”処方箋”の出来、不出来ではなく、病気の患者が苦い薬を飲むのを拒否して、おまじないか、でなければモルヒネに頼ろうとしている点。
すでに本書が主張するところはアチコチで散々言われてきたことだし、どんな改革案であろうと、少なくとも現状より悪くなることは有得ないといえるまで日本の第一次産業は追詰められているのは確か。
しかし、問題は産業当事者が、底なし沼に填まっている事実に自覚がなく、だんだん身体が泥沼の中に沈んで、おっつけ窒息死するところまで深みに填まっているのに、思考停止に陥って成行き任せになっているのを、いかに産業改革に巻込むか、そういう問題ではないだろうかと思う。
こういうことを書くと、大半のヒトは反発するが、経済学のほうでは、「農民の労働」は「未熟練労働」の範疇に入れているということを、まず確認すべき。
コンビニやファーストフードの店員なんかと、農作業を一緒くたにするのかと農民は怒り出すけれど、じっさい本質的に大して異なるレベルの労働ではなく、わずかなトレーニングで、誰でも、すぐに出来るようになる単純な作業が大半。まして今では機械化も進んで、かつてのように身体を痛めるような辛い重労働という点も、かなり払拭されている。
日本の第一次産業が産業として駄目なのは、従事者に事業経営という観点がないこと(株式会社とは限らない=本来は協同組合の役目)。
旧帝国陸軍が、兵力の源泉として小農民などの利益を統制経済の網を被せつつ保護したそのままに、農水省中央が、要は、鉄砲担いだ兵隊さんの役割に第一次産業従事者を囲い込んでいることが問題の根源。
けっきょく旧帝国陸軍中央にあたるのが現農水省で、その連隊区や在郷軍人会にあたるのが地域独占農協という仕組みになっている。だから兵隊さんの頭の中はカラッポのほうが、司令部にとっては都合が良いというわけ。まず、そこのところから壊さないと、確実に15年後には日本の第一次産業は壊滅してしまうことになる。
農水省による現在の第一次産業国営体制を解体し、都道府県&市町村に産業政策の主体を移す。とうぜん全国画一政策は棄てられて、地域の創意に任せた地域間の競争になる。むろん、地域に任せると成功するところ、失敗するところ、デコボコができるが、それで好いじゃないか。成功した実例を間近に見せ付けないと、いくら言葉や統計上の数字、外国の実例で説得しようとしても、いまの産業従事者の大半は耳を塞いでしまうのが実情。
まず、農林水産省解体。
そこからしかドラスティックな日本の第一次産業再生の道はないと知るべきではないかと思った。
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日本農業の底力 ~TPPと震災を乗り越える! (新書y) 新書 – 2012/3/6
大泉 一貫
(著)
◆いびつな保護とバラマキでがんじがらめの旧体制を脱却し、
プロの経営者を育てれば、農業は成長産業に変わる!
プロの経営者を育てれば、農業は成長産業に変わる!
◆競争力のある農業で世界にうって出よ!
◎農業には成長力がある!
国家統制的な農家保護をこのまま続けても
農業の衰退に歯止めはかけられない!
成長産業に向けて競争力強化にシフトするためには、
農業のイノベーターや本当の意味での
農業経営者を育て、彼らに思う存分、活躍して
もらう場を用意することだ。
TPPへの参加や震災からの復興を図るにしても、
日本農業のもつ底力を十二分に発揮できるような
環境整備が急務となっている。
日本の美しい農村の復活とグローバル社会に
出ていける農業の確立は、両立する!
◆構成
第1章 TPP狂想曲
第2章 震災からの復興と日本の農業
第3章 日本のあるべきTPP戦略
第4章 日本農業の底力
第5章 成長産業となるためのビジネスモデル
第6章 農業経営を現在の5〜10倍へ増やせ
終章 責任ある国家へ
- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2012/3/6
- ISBN-104862488706
- ISBN-13978-4862488701
商品の説明
著者について
大泉一貫(おおいずみ・かずぬき)
1949年宮城県生まれ。東京大学大学院修了。専門は農業経営学、地域経済論、食品流通論。農学博士。現在、宮城大学教授(事業構想学部長、副学長)。地域経済の活性化や食・農・むらから日本社会を展望する評論や農政への提言活動を行っている。
日本地域政策学会会長、内閣府「規制改革会議」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議EPA・農業ワーキング」委員、内閣官房「農政改革関係閣僚会合特命チーム」アドバイザー、内閣官房「食と農林漁業の再生実現会議」構成員、南三陸町震災復興検討委員会委員長、等歴任。著書に『日本の農業は成長産業に変えられる』(小社新書y)、『ニッポンのコメ』(朝日新聞社)、『大衆消費社会の食料・農業・農村政策』(東北大学出版会)などがある。
1949年宮城県生まれ。東京大学大学院修了。専門は農業経営学、地域経済論、食品流通論。農学博士。現在、宮城大学教授(事業構想学部長、副学長)。地域経済の活性化や食・農・むらから日本社会を展望する評論や農政への提言活動を行っている。
日本地域政策学会会長、内閣府「規制改革会議」専門委員、内閣府「経済財政諮問会議EPA・農業ワーキング」委員、内閣官房「農政改革関係閣僚会合特命チーム」アドバイザー、内閣官房「食と農林漁業の再生実現会議」構成員、南三陸町震災復興検討委員会委員長、等歴任。著書に『日本の農業は成長産業に変えられる』(小社新書y)、『ニッポンのコメ』(朝日新聞社)、『大衆消費社会の食料・農業・農村政策』(東北大学出版会)などがある。
登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2012/3/6)
- 発売日 : 2012/3/6
- 言語 : 日本語
- 新書 : 223ページ
- ISBN-10 : 4862488706
- ISBN-13 : 978-4862488701
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,631,448位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 93,653位新書
- - 140,593位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
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2012年3月11日に日本でレビュー済み
イノベーションとスピードが求められる東北の復興。一次産業も然り。農業の問題は、食糧問題に直結するので国民の注目は高いが、農産物産出額で見てみると全国で8兆円程度。
これだけ政治や世間が騒いでいるのに、以外と産業規模としては小さい思われる方も多いはず。
高度成長期では12兆円だったので、20年程度で三分の一まで産出規模が低下してしまった。
しかし、この本では北欧の小国の農業や水産業で世界の中心になっている事例を紹介し、グローバルな視点で見ても品質、技術の面で劣らない日本の一次産業も成長産業に転換できると、著者は強く主張している。
この震災復興は、イノベーションのチャンスであり、ここで変われないと日本農業の未来はない。
農業を成長産業に転化していくために、農家保護政策だけなく農地集約や企業参入等に向けた、農家の意識、生産基盤、支援制度等のイノベーションが急がれと、明確なロジックが示されている。
筆者も被災者として、復興の現場に身を置いて書かれているので、東北の企業や農家がたくさん取りあげられている。
それゆえ、読み終えると、東北の復興、そして農業の未来に希望を持つことができる一冊だった。
これだけ政治や世間が騒いでいるのに、以外と産業規模としては小さい思われる方も多いはず。
高度成長期では12兆円だったので、20年程度で三分の一まで産出規模が低下してしまった。
しかし、この本では北欧の小国の農業や水産業で世界の中心になっている事例を紹介し、グローバルな視点で見ても品質、技術の面で劣らない日本の一次産業も成長産業に転換できると、著者は強く主張している。
この震災復興は、イノベーションのチャンスであり、ここで変われないと日本農業の未来はない。
農業を成長産業に転化していくために、農家保護政策だけなく農地集約や企業参入等に向けた、農家の意識、生産基盤、支援制度等のイノベーションが急がれと、明確なロジックが示されている。
筆者も被災者として、復興の現場に身を置いて書かれているので、東北の企業や農家がたくさん取りあげられている。
それゆえ、読み終えると、東北の復興、そして農業の未来に希望を持つことができる一冊だった。