本書には『家庭教師』と『軍人たち』の二作品が収められている他に、レンツの生涯と諸作品について、ほぼ50頁にわたる詳細な「訳者解題」が付けられていて、訳者の長年にわたる研鑽の跡がうかがえます。門外漢には興味を引かれることが多く、驚きました。若いレンツは疾風怒濤派の旗手としてゲーテと並び称された詩人であったこと、ゲーテの不興を買ってヴァイマール共和国を追われたこと、などなど。重厚な「解説」とは対照的に、戯曲中の登場人物の会話は軽やかで、自然で、みごとな日本語です。
『家庭教師』の主人公ロイファーがみずから去勢するのには驚かされますが、『軍人たち』の主要人物である市民の娘マリーが貴族の将校に言い寄られてその気になり、ついには父親までもが「玉の輿」を夢見て、罠に落ちるのは現代に通ずるものでしょう。訳者は「解題」の最後で次のように述べています。「レンツは・・・・フランス革命前夜における、ドイツの矛盾をはらむ市井風俗百態――多義的な人間の生の局面を、豊穣たる混沌のまま切り取る。人物を、乱反射する多面体として描き出してみせる。しかも、将校をはじめとする貴族から、聖職者、教師、学生、商人らの市民にいたるまで、・・・・現代の我々自身の姿を映し出す鏡なのである」。
現代がフランス革命の、したがって啓蒙主義の延長線上にあるとすれば、18世紀のレンツの戯曲のなかに現代にそのまま通ずるところがあっても何の不思議もない。レンツの他の戯曲作品、小説、さらには今日なお歴史的価値があると思われる主要論文などが翻訳刊行されることを期待したい。
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家庭教師/軍人たち 単行本 – 2013/2/25
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- 本の長さ264ページ
- 出版社鳥影社
- 発売日2013/2/25
- ISBN-104862653944
- ISBN-13978-4862653949
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登録情報
- 出版社 : 鳥影社 (2013/2/25)
- 発売日 : 2013/2/25
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4862653944
- ISBN-13 : 978-4862653949
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2013年4月17日に日本でレビュー済み
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2013年4月27日に日本でレビュー済み
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昔、ビューヒナ―の短編小説『レンツ』に感銘を受けて以来、そのモデルの狂気に苦しむ作家レンツの作品が読みたいと思っていました。その夢がかないました。レンツの喜劇には、なんとも奇妙な構造上のゆがみがありますが、彼の表現への気概がわたしの胸に伝わって、五感を全開させてくれます。男に騙されるマリーや、逆に男を手玉にとるグストヒェンの息づかいが、まるで自分のもののように思われて、苦しくなるほどでした。なんという劇的体験でしょう! それにしても、フランス革命前のドイツ文学が、21世紀の日本に暮らすわたしの感覚にもフィットするというのは、考えてみれば、不思議です。文学や芸術は、時間や空間を超えて、人間の心に届くものなのだ、と実感しました。こういうすぐれた文学の存在を若い人にも知ってほしいと思ったものです。