解説含めて300ページ弱で、著者のウェンディ・コップにとってはこれでも全然書き足りないのだろうなと想像しますが、読み手からすると、Teach For America立ち上げを思い立った動機、組織の立ち上げ、挫折と困難、それをどう乗り越えたか、これからのミッション、すべてが凝縮されてリアリティのある一冊に仕上がっていると感じます。
ネタバレにもなりますが、私が一番共感したのは、第7章の一番最後の部分、
「ミッションを実現しようとするのであれば、理想的なビジョンに加えて、それ以上のものが必要だということだ。最終的には、大きなアイディアは重要だし不可欠だ。だが、それを実行するための基本となる部分に十分に注意を払わなければ、アイディアは実現しない」。
大層なお題目は掲げる割に、細かいことは他人に放り投げ、いざうまく行かないとそういう人のせいにするタイプの人、サラリーマンとして働いていると至る所で見かけますが、Teach For Americaが空中分解せずコープ・メンバーがウェンディ・コップに付いてきたのは、彼女がこういう考え方をできる人だったからなのではないかと思います。
そういう意味で、一般的なサラリーマンであってもこの本には学ぶべきエッセンスが詰まっています。
内容は、子供たちと向き合った話よりも、資金調達などの経営サイドの話が中盤ずっと続くのが意外でした。
おそらくウェンディ自身は教壇に立っていないと思いますが、そんな彼女が組織管理者としてコープ・メンバーを（間接的に）教育、配属を指示する立場に立つ。そこに不満は出なかったのか。「現場を知らないのに偉そうなことを言うな！」という、どこの会社でもありそうな最前線と裏方の対立がきっとTeach For Americaでもあったと思うのですが、それをどう乗り越えたのか、もし本人にお会いできることがあれば直接聞いてみたいぐらいです。
誰でも教育者を自分で選べるわけではなく、まして小さい子供、さらに出生地が貧困な場所であればなおさらです。
しかし彼らは生まれつき能力が低いわけではなく、にもかかわらず結果として成人する頃には差が付き、それが格差を生んでいる。ウェンディの着眼点はその通りだと思いますし、実際にリスクテイクして行動に移されたことには深い敬意を表したいと思います。
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