紹介文に「近代随筆の最高峰」とありますが、それほど構えずとも気楽に楽しめる随筆集です。
早大で教鞭を執りつつ書き続けた随筆を、代表作「東海道品川宿」を中心に編んだもので、古き良き東京を思い、そこに生きた明治の善良な庶民を温かい目で描き出しています。
昭和2、30年代に書いたものが多いからか、戦後を含めた近代日本が「江戸的な良さ」を滅ぼしてしまったことを惜しんでもいます。けれど、永井荷風のように筆法鋭い文明批判にはならず、かつてあった日本および日本人の姿を残すことを主眼としています。
良く思い出し、丁寧に描くことを心がけた文章は抑制がきいていて、秋の夜長に美しい日本語を味わうにはぴったりの１冊ですね。
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