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だれかを犠牲にする経済は、もういらない 新書 – 2010/6/1
「壊れた経済を立て直す!」
欧米で活躍する「日本一の事業家」原丈人と、「日本一の金庫番」金児昭が、新しい経済システムを提唱する。自信を失った日本人に勇気を与えてくれる体験的提言集。
欧米で活躍する「日本一の事業家」原丈人と、「日本一の金庫番」金児昭が、新しい経済システムを提唱する。自信を失った日本人に勇気を与えてくれる体験的提言集。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社ウェッジ
- 発売日2010/6/1
- 寸法11.7 x 1.5 x 17.6 cm
- ISBN-104863100701
- ISBN-13978-4863100701
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商品の説明
著者からのコメント
「勝ち組」「負け組」という言葉が使われるようになって、もう何年もたちました。私はこの言葉を世のなかから消し去りたいと本気で思っています。「勝ち組」「負け組」の社会構造が定着してきたのは「金融」を中心にした産業構造が良しとされ、お金儲けの早道は金融だと錯覚しだした時期と一致します。
私たちが生きる社会はいま、大きな危機に瀕しています。サブプライムローン問題に端を発した、アメリカ発金融危機が収まるまえに、欧州金融危機が始まり、世界経済はいまだ、浮上する糸口を見いだせずにいます。
現在の経済システムにおいて、「勝ち組」になれる人はごく少数です。その何倍もの「負け組」が生み出されています。こんなことになってしまったのは、人びとを幸せにするために生まれたはずの資本主義が、マネーゲームに翻弄されてしまったからです。マネーゲームはゼロサムゲームですから、一部の「勝ち組」とほとんど大多数の「負け組」という構図をつくります。
これからは、「マネーゲーム」ではなく、時間をかけて価値をつくり出す「実業」を経済の中心に据えなければいけません。「実業」が生み出す価値の対価として人びとが利益を獲得し、その利益が社会の公益のためにうまく還元される新しい資本主義を設計・実践することが必要です。それができるのは、日本なのです。実業とは地道にこつこつと仕事をすることから始まります(原丈人)。
私たちが生きる社会はいま、大きな危機に瀕しています。サブプライムローン問題に端を発した、アメリカ発金融危機が収まるまえに、欧州金融危機が始まり、世界経済はいまだ、浮上する糸口を見いだせずにいます。
現在の経済システムにおいて、「勝ち組」になれる人はごく少数です。その何倍もの「負け組」が生み出されています。こんなことになってしまったのは、人びとを幸せにするために生まれたはずの資本主義が、マネーゲームに翻弄されてしまったからです。マネーゲームはゼロサムゲームですから、一部の「勝ち組」とほとんど大多数の「負け組」という構図をつくります。
これからは、「マネーゲーム」ではなく、時間をかけて価値をつくり出す「実業」を経済の中心に据えなければいけません。「実業」が生み出す価値の対価として人びとが利益を獲得し、その利益が社会の公益のためにうまく還元される新しい資本主義を設計・実践することが必要です。それができるのは、日本なのです。実業とは地道にこつこつと仕事をすることから始まります(原丈人)。
著者について
原丈人(はら・じょうじ)
デフタ・パートナーズ、グループ会長、アライアンスフォーラム財団代表理事。1952年大阪府生まれ。20歳代に中央アメリカ考古学研究に従事、研究資金づくりのためにスタンフォード大学経営学大学院、工学部(工学修士)で学ぶ。29歳で光ファイバー事業を起業し、以後、事業家として、オープラス・テクノロジーズ(インテルと合併)、フォーティネット(09年公開)などのベンチャーに出資、創業期から次々と世界的企業に育成。2005年にはバングラデシュで通信事業を立ち上げ、途上国を支援。財務省参与、国連諮問団特命全権大使などを歴任。著作に 『21世紀の国富論』(平凡社)、『新しい資本主義』(PHP新書)。
デフタ・パートナーズ、グループ会長、アライアンスフォーラム財団代表理事。1952年大阪府生まれ。20歳代に中央アメリカ考古学研究に従事、研究資金づくりのためにスタンフォード大学経営学大学院、工学部(工学修士)で学ぶ。29歳で光ファイバー事業を起業し、以後、事業家として、オープラス・テクノロジーズ(インテルと合併)、フォーティネット(09年公開)などのベンチャーに出資、創業期から次々と世界的企業に育成。2005年にはバングラデシュで通信事業を立ち上げ、途上国を支援。財務省参与、国連諮問団特命全権大使などを歴任。著作に 『21世紀の国富論』(平凡社)、『新しい資本主義』(PHP新書)。
金児昭(かねこ・あきら)
経済・金融・経営評論家、信越化学工業顧問、日本CFO協会最高顧問。1936年東京都生まれ。61年に信越化学工業に入社し、以来38年間経理・財務の実務一筋。バブル期に財テクに一切手を出さなかった、その確固たる信念は、多くの企業人から信頼を集めた。「ペコペコが大事」「できすぎる先輩のマネはするな」など、気持ちよく働くための秘訣を100冊を超える著作でビジネスパーソンに届け続ける。著作に『ゼミナール 会社「経理・財務」入門』(日本経済新聞出版社)、『金児昭の七人の社長に叱られた!』(中経文庫)、『日本型「経理・財務」事典』(税務経理協会)など。
登録情報
- 出版社 : ウェッジ (2010/6/1)
- 発売日 : 2010/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4863100701
- ISBN-13 : 978-4863100701
- 寸法 : 11.7 x 1.5 x 17.6 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 515,689位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 39,136位新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年1月21日に日本でレビュー済み
この作品は、本書の帯で掲示されている「日本一の事業家」原丈人さん(アライアンス・フォーラム財団代表理事等)と「日本一の金庫番」金児昭さん(信越化学工業顧問)の対談及びそれぞれの単独インタビューが収載されたものである。まずもって、金児さんは2013年12月19日に逝去され(享年77歳)、遅ればせながら心からご冥福をお祈りしたい。
ところで、本書を味到して私が最初に興味を引いたのは、お二人の歩んだ道と所謂“人生哲学”であった。はじめに原丈人さんである。原さんには人事院公務員研修所の推薦図書ともなっている『 21世紀の国富論 』といった著書があり、その中でご自分の理想や父上の薫陶などに若干触れられているけれども、当著のロングインタビューでこれらの事柄をかなり詳しく語られている(第3章「何でも自分の頭で考え抜く―原丈人の原点」)。特に、原さんの関心事は「考古学」にあり、「考古学に役に立つ技術をつくる会社を育てること」が「原点」と述べているが、こうした明確な意志・方向性(新たな人類史の発見に貢献すること)を持つことの大切さを教えてくれる。
また、原さんは慶應義塾大学法学部を卒業、中央アメリカで考古学調査に携わった後、スタンフォード大学の経営学大学院(ビジネススクール)に進まれている。原さんは、このアメリカでのビジネススクールの経験を踏まえて、以下のようにアドバイスしている。すなわち、「ビジネススクールに洗脳されてはいけない」と。「ビジネススクールに入る人は、そこで教えられることに染まるのではなく、『彼らがどんな発想でビジネスをするのか』を知るつもりで入ったらいい」と。日本でも、かつてほどではないにしろ、アメリカの大学でファイナンスやマーケティングが主であるMBAを取得するのがブームのような感があったけど、非常に有意義な立言だと私には思われる。
もうお一方が金児昭さんである。生憎、私は金児さんのことをよく存じていない。ただ、上述の原さんと比べ、金児さんの企業人としての生き方などには共感を覚える方も多いのではなかろうか。金児さんへのインタビュー記事は、本書第4章「出たとこ勝負で道は開ける―金児昭の原点」に載っている。金児さんは東京大学農学部を卒業され信越化学工業に入社。爾来、38年間の殆どを経理・財務畑で過ごされた。その金児さんの“サラリーマン処世訓”みたいなものが、「できすぎる先輩のマネはしない」「自分をいちばんかわいがる」「ない知恵は絞らない」だそうである。この“三本柱”を目にしたとき、私はクスッとしてしまった。私の仕事上の“戒め”にも近いからだ。
私も若い頃、知ったかぶりして、やたら背伸びしていたこともあったが、所詮は付け焼き刃、地金が直ぐ出てしまっていた。この金児さんの“三本柱”は真に言い得て妙ではなかろうか。「ないものねだりをやめ、ないものはないんだと明るくあきらめて、ありのままの自分や運命を受け入れて、目の前のことを、一生懸命考えて一つひとつ取り組む。考える力はみんな親からもらっています。(中略)自分で「考える」という主体性が、「あきらめる」力を生み、自分をかわいがることにつながると思います」という金児さんの言句。「会社」という世界を生き抜いてきた人間からの温かみのあるエールメッセージであろう。これらは「出たとこ勝負」「ペコペコ哲学」で表されている。
「日本一の事業家」と「日本一の金庫番」との対話。それぞれが生きてきたフィールドは異なっているけれども、本書のタイトルにあるとおり、「だれかを犠牲にする経済は、もういらない」…。そして、原さんは言う―私たちは、もう一度、人々が幸せになるために生まれた資本主義の原点に立ち返り、会社とは何か、人間にとって、社会にとっての幸せとは何かを改めて問い直す必要があります。(中略)日本から新たな資本主義をつくりあげるという国家意思を世界に向けて示し、世界を納得させていくことが必要なんです。
Amazonで購入
この作品は、本書の帯で掲示されている「日本一の事業家」原丈人さん(アライアンス・フォーラム財団代表理事等)と「日本一の金庫番」金児昭さん(信越化学工業顧問)の対談及びそれぞれの単独インタビューが収載されたものである。まずもって、金児さんは2013年12月19日に逝去され(享年77歳)、遅ればせながら心からご冥福をお祈りしたい。
ところで、本書を味到して私が最初に興味を引いたのは、お二人の歩んだ道と所謂“人生哲学”であった。はじめに原丈人さんである。原さんには人事院公務員研修所の推薦図書ともなっている『 21世紀の国富論 』といった著書があり、その中でご自分の理想や父上の薫陶などに若干触れられているけれども、当著のロングインタビューでこれらの事柄をかなり詳しく語られている(第3章「何でも自分の頭で考え抜く―原丈人の原点」)。特に、原さんの関心事は「考古学」にあり、「考古学に役に立つ技術をつくる会社を育てること」が「原点」と述べているが、こうした明確な意志・方向性(新たな人類史の発見に貢献すること)を持つことの大切さを教えてくれる。
また、原さんは慶應義塾大学法学部を卒業、中央アメリカで考古学調査に携わった後、スタンフォード大学の経営学大学院(ビジネススクール)に進まれている。原さんは、このアメリカでのビジネススクールの経験を踏まえて、以下のようにアドバイスしている。すなわち、「ビジネススクールに洗脳されてはいけない」と。「ビジネススクールに入る人は、そこで教えられることに染まるのではなく、『彼らがどんな発想でビジネスをするのか』を知るつもりで入ったらいい」と。日本でも、かつてほどではないにしろ、アメリカの大学でファイナンスやマーケティングが主であるMBAを取得するのがブームのような感があったけど、非常に有意義な立言だと私には思われる。
もうお一方が金児昭さんである。生憎、私は金児さんのことをよく存じていない。ただ、上述の原さんと比べ、金児さんの企業人としての生き方などには共感を覚える方も多いのではなかろうか。金児さんへのインタビュー記事は、本書第4章「出たとこ勝負で道は開ける―金児昭の原点」に載っている。金児さんは東京大学農学部を卒業され信越化学工業に入社。爾来、38年間の殆どを経理・財務畑で過ごされた。その金児さんの“サラリーマン処世訓”みたいなものが、「できすぎる先輩のマネはしない」「自分をいちばんかわいがる」「ない知恵は絞らない」だそうである。この“三本柱”を目にしたとき、私はクスッとしてしまった。私の仕事上の“戒め”にも近いからだ。
私も若い頃、知ったかぶりして、やたら背伸びしていたこともあったが、所詮は付け焼き刃、地金が直ぐ出てしまっていた。この金児さんの“三本柱”は真に言い得て妙ではなかろうか。「ないものねだりをやめ、ないものはないんだと明るくあきらめて、ありのままの自分や運命を受け入れて、目の前のことを、一生懸命考えて一つひとつ取り組む。考える力はみんな親からもらっています。(中略)自分で「考える」という主体性が、「あきらめる」力を生み、自分をかわいがることにつながると思います」という金児さんの言句。「会社」という世界を生き抜いてきた人間からの温かみのあるエールメッセージであろう。これらは「出たとこ勝負」「ペコペコ哲学」で表されている。
「日本一の事業家」と「日本一の金庫番」との対話。それぞれが生きてきたフィールドは異なっているけれども、本書のタイトルにあるとおり、「だれかを犠牲にする経済は、もういらない」…。そして、原さんは言う―私たちは、もう一度、人々が幸せになるために生まれた資本主義の原点に立ち返り、会社とは何か、人間にとって、社会にとっての幸せとは何かを改めて問い直す必要があります。(中略)日本から新たな資本主義をつくりあげるという国家意思を世界に向けて示し、世界を納得させていくことが必要なんです。
2012年10月20日に日本でレビュー済み
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『21世紀の国富論』の著者で、「新しい資本主義」である「公益資本主義」を提唱している原丈人氏と、信越化学工業で長らく経理、財務を担当してきて「ペコペコ哲学」を掲げる金子昭氏との対談。
正確には1、2、5章が対談で、3、4章は各自の単独インタビュー。
タイトルの通り、多くの人々の犠牲の上で、一部の人たちだけが利益を享受するマネーゲームでしかない「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義を止めようという趣旨。
そうではなくて、会社が事業を通じて儲けた利益を何ならの形にして社会に貢献することに価値があると、経営者と従業員で共有されている「公益資本主義」を目指そうと、原氏は言う。
それが目指すのは、少し前に流行ったBOPやマイクロファイナンスのような一元的な価値を提供するものではないと言う。
今のBOPやマイクロファイナンスは、貧困層の救済が目的ではなく手段となってしまっており、本質がマネーゲーム的な「株主至上主義」にあるということだろう。
原氏は、原点に考古学があるという。
ひとつのことを極めることも重要だが、これからの時代に求められるのは、複数の軸を持っていることだろう。
原氏の場合は、考古学とビジネスという二つの柱が上手く回り、シナジーを得られている。
ビジネス一辺倒の人では、マネーゲームに走りすぎてしまい、いつか「実業」から離れてしまう。
考古学が、原氏のビジネスを「実業」足らしめ、ビジネスがマネーゲームに行きすぎないためのバランサーの役割を果たしている。
これからのビジネスに必要なものが何かを示唆している事例と言えるだろう。
ただ、本書の残念な点は、「希望をなくしつつある日本の若者たちに、二人の『実務家』からメッセージを発」すると言いつつ、実際には若い人たちの心を打つ内容とはなっていないことである。
50代、60代以上の人が同世代で盛り上がっている内容で、若い人たちへ具体的な指針を示すものとはなっていない。
少なくとも、今20代の自分は、そう感じた。
理想として「公益資本主義」を掲げるのはよいが、具体的にどうすれば実現できるのか。
税制による中長期の研究開発支援や、新しい株式市場をつくるという施策が挙げられているが、まだ具体的ではないように思える。
2人は企業性善説をベースにしてルールを作るべきだと言う。
確かに、性悪説をベースにしてガチガチのルールを作ると、性善的な企業は成長を阻害されたり損を被る可能性がある。
しかし、性善説をベースにしたルールだと、それを利用する輩が出てくるのは目に見えている。
現実を見て、性善的な経営者にも性悪的な経営者も存在するという前提で、性善的な経営者が損をしないルールが求められる。
それを踏まえた上で、本書にもある、日本にしかできない「モノづくり」を推進するための具体的な仕組み作りを、これからも進めていかなければならない。
そもそも、「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義と、「公益資本主義」は、同じ資本主義というイデオロギーの中で振り子が振れているだけに過ぎない。
資本主義を貫く以上、どちらかが欠けてどちらかだけになるということはない。
アメリカにも「公益資本主義」的な経営者はいるだろうし、昔の日本に「市場万能主義」「株主至上主義」的な経営者が全くいなかった訳でもない。
現実問題としては、「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義も、「公益資本主義」も、どちらも必要であり、両者のバランスが偏り過ぎないようにする必要があるのだろう。
本書においても共産主義は否定しているし、現時点では資本主義以外のものが存在しない以上、資本主義の枠組みの中で、多くの人たちを幸せにする方法を考えなくてはならない。
資本主義の道を往く以上、誰も犠牲にしないことは不可能に近い。
しかし、だれかを犠牲にすることを極力、減らすことは可能である。
行き過ぎた資本主義をバランスし、中庸の道を往くための示唆となる一冊。
正確には1、2、5章が対談で、3、4章は各自の単独インタビュー。
タイトルの通り、多くの人々の犠牲の上で、一部の人たちだけが利益を享受するマネーゲームでしかない「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義を止めようという趣旨。
そうではなくて、会社が事業を通じて儲けた利益を何ならの形にして社会に貢献することに価値があると、経営者と従業員で共有されている「公益資本主義」を目指そうと、原氏は言う。
それが目指すのは、少し前に流行ったBOPやマイクロファイナンスのような一元的な価値を提供するものではないと言う。
今のBOPやマイクロファイナンスは、貧困層の救済が目的ではなく手段となってしまっており、本質がマネーゲーム的な「株主至上主義」にあるということだろう。
原氏は、原点に考古学があるという。
ひとつのことを極めることも重要だが、これからの時代に求められるのは、複数の軸を持っていることだろう。
原氏の場合は、考古学とビジネスという二つの柱が上手く回り、シナジーを得られている。
ビジネス一辺倒の人では、マネーゲームに走りすぎてしまい、いつか「実業」から離れてしまう。
考古学が、原氏のビジネスを「実業」足らしめ、ビジネスがマネーゲームに行きすぎないためのバランサーの役割を果たしている。
これからのビジネスに必要なものが何かを示唆している事例と言えるだろう。
ただ、本書の残念な点は、「希望をなくしつつある日本の若者たちに、二人の『実務家』からメッセージを発」すると言いつつ、実際には若い人たちの心を打つ内容とはなっていないことである。
50代、60代以上の人が同世代で盛り上がっている内容で、若い人たちへ具体的な指針を示すものとはなっていない。
少なくとも、今20代の自分は、そう感じた。
理想として「公益資本主義」を掲げるのはよいが、具体的にどうすれば実現できるのか。
税制による中長期の研究開発支援や、新しい株式市場をつくるという施策が挙げられているが、まだ具体的ではないように思える。
2人は企業性善説をベースにしてルールを作るべきだと言う。
確かに、性悪説をベースにしてガチガチのルールを作ると、性善的な企業は成長を阻害されたり損を被る可能性がある。
しかし、性善説をベースにしたルールだと、それを利用する輩が出てくるのは目に見えている。
現実を見て、性善的な経営者にも性悪的な経営者も存在するという前提で、性善的な経営者が損をしないルールが求められる。
それを踏まえた上で、本書にもある、日本にしかできない「モノづくり」を推進するための具体的な仕組み作りを、これからも進めていかなければならない。
そもそも、「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義と、「公益資本主義」は、同じ資本主義というイデオロギーの中で振り子が振れているだけに過ぎない。
資本主義を貫く以上、どちらかが欠けてどちらかだけになるということはない。
アメリカにも「公益資本主義」的な経営者はいるだろうし、昔の日本に「市場万能主義」「株主至上主義」的な経営者が全くいなかった訳でもない。
現実問題としては、「市場万能主義」「株主至上主義」的な資本主義も、「公益資本主義」も、どちらも必要であり、両者のバランスが偏り過ぎないようにする必要があるのだろう。
本書においても共産主義は否定しているし、現時点では資本主義以外のものが存在しない以上、資本主義の枠組みの中で、多くの人たちを幸せにする方法を考えなくてはならない。
資本主義の道を往く以上、誰も犠牲にしないことは不可能に近い。
しかし、だれかを犠牲にすることを極力、減らすことは可能である。
行き過ぎた資本主義をバランスし、中庸の道を往くための示唆となる一冊。
2010年12月13日に日本でレビュー済み
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アメリカ西海岸・バングラデシュといったホットな地域でITと密接にからんだ最先端の取り込みをしながらも、ネット上ですら露出の少ない原丈人氏。そんな原丈人氏のことを知りたくて本書を手にとられた読者が多いのではないだろうか。
そんな原氏の今回の対談相手が金児氏というのは・・・。
金児氏には失礼かもしれないが、「公益資本主義」をはじめとした原氏の考えに共感するだけでなく、身を持ってその跡を継ぐのは20代、30代の方々であることはほぼ間違いない。その世代に金児氏は最早“過去の人”ではあるまいか。
ついつい、中高年読者を狙ったキャスティングかと勘ぐってしまう。
楽しい内容ではあるが、あっという間にサラリと読み終わってしまうのも残念。
原丈人氏の取り組みを知りたい方の一冊目としてはオススメしづらいかも。
アメリカの金融市場主義(ともすれば日本も?!)に警鈴を鳴らしていることを大きく評価したく、星4つにさせていただきます。
そんな原氏の今回の対談相手が金児氏というのは・・・。
金児氏には失礼かもしれないが、「公益資本主義」をはじめとした原氏の考えに共感するだけでなく、身を持ってその跡を継ぐのは20代、30代の方々であることはほぼ間違いない。その世代に金児氏は最早“過去の人”ではあるまいか。
ついつい、中高年読者を狙ったキャスティングかと勘ぐってしまう。
楽しい内容ではあるが、あっという間にサラリと読み終わってしまうのも残念。
原丈人氏の取り組みを知りたい方の一冊目としてはオススメしづらいかも。
アメリカの金融市場主義(ともすれば日本も?!)に警鈴を鳴らしていることを大きく評価したく、星4つにさせていただきます。
2013年3月31日に日本でレビュー済み
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「誰かを犠牲にする経済は、もういらない」というタイトルや、
巻頭の、「『勝ち組』『負け組』という言葉が使われるようになって、もう何年もたちました。私はこの言葉を世のなかから消し去りたいと思っています。『勝ち組』『負け組』の社会構造が定着してきたのは、『金融』を中心にした産業構造が良しとされ、お金儲けの早道は金融だと錯覚しだした時期と一致します。」
という原氏の言葉には、原氏が提唱する公益資本主義、「世の中への貢献こそが価値として認められる資本主義」の実現に向けての並々ならぬ決意がうかがえます。
対談の中で語られるそれぞれの歩んでこられた道もとても興味深く、この絶妙な二人の組み合わせから、「誰をも犠牲にしない経済」実現への希望をいっそう感じさせられ、さわやかな読後感でした。
巻頭の、「『勝ち組』『負け組』という言葉が使われるようになって、もう何年もたちました。私はこの言葉を世のなかから消し去りたいと思っています。『勝ち組』『負け組』の社会構造が定着してきたのは、『金融』を中心にした産業構造が良しとされ、お金儲けの早道は金融だと錯覚しだした時期と一致します。」
という原氏の言葉には、原氏が提唱する公益資本主義、「世の中への貢献こそが価値として認められる資本主義」の実現に向けての並々ならぬ決意がうかがえます。
対談の中で語られるそれぞれの歩んでこられた道もとても興味深く、この絶妙な二人の組み合わせから、「誰をも犠牲にしない経済」実現への希望をいっそう感じさせられ、さわやかな読後感でした。
2010年7月7日に日本でレビュー済み
これまでの資本主義経済に対して、
常に異を唱えている原丈人氏。
私は彼の著作をすべて読んでいるが、
「株主至上主義」「市場万能主義」に変わる
「公益資本主義」の考え方は、
何度でも唱えなければ変わらないという、
彼のベンチャー精神そのものがうかがえる書である。
とくに、考古学を目指していた彼が、
なぜベンチャーキャピタル界へ転身し、
バングラディシュやザンビアで事業を展開しているのかという
生い立ちが初めて綴られ、
本物のベンチャー精神とは何かも教えてくれる。
彼は単に現在の資本主義を攻撃しているだけではない。
その理論武装を着々と積み上げ、
実業を通じて実現しようとしている。
いつか彼は欧米の経済理論を打ち破るのではないか、
そんな期待を抱かせてくれるのだ。
対談の金児氏も、その人柄から現れるやさしさが、
本の中でも随所に現れ、読んでいて楽しい。
経済書としてではなく、これからの生き方を問う意味で、
多くの方に読んでほしい本である。
常に異を唱えている原丈人氏。
私は彼の著作をすべて読んでいるが、
「株主至上主義」「市場万能主義」に変わる
「公益資本主義」の考え方は、
何度でも唱えなければ変わらないという、
彼のベンチャー精神そのものがうかがえる書である。
とくに、考古学を目指していた彼が、
なぜベンチャーキャピタル界へ転身し、
バングラディシュやザンビアで事業を展開しているのかという
生い立ちが初めて綴られ、
本物のベンチャー精神とは何かも教えてくれる。
彼は単に現在の資本主義を攻撃しているだけではない。
その理論武装を着々と積み上げ、
実業を通じて実現しようとしている。
いつか彼は欧米の経済理論を打ち破るのではないか、
そんな期待を抱かせてくれるのだ。
対談の金児氏も、その人柄から現れるやさしさが、
本の中でも随所に現れ、読んでいて楽しい。
経済書としてではなく、これからの生き方を問う意味で、
多くの方に読んでほしい本である。