まったく期待はずれでした。
別の方もご指摘なさっているように、歴史記述として最も重要であるはずの時系列の整理が放擲されていて、話の途中で
幾度となく記述時期が前後するため、読んでいて開発の経緯に感情移入できないばかりか、とても混乱します。例えばケ
ネディ暗殺の話が出て来て「なるほどこれで開発計画が大きく変わるのか」と思って読み進んでいくと、いつの間にかケ
ネディが生きていた時の話に戻っていてそれが延々と続くといった具合です。したがってコンコルドにしてもツポレフに
してもボーイングSSTにしても、開発の経緯が具体的に判然としないばかりか、「開発史を鳥瞰することのカタルシス」
もほとんど得ることはできません。これは歴史的事実を語る書としては致命的な欠点です。
こういうことになってしまった理由のひとつは、本書のモチベーションが客観的な開発史の著述にではなく、おそらく筆
者の私見の発露にこそあるからでしょう。繰り返し語られる「アメリカはなんでも一番でないと気がすまない国だ」とい
うその筆者の私見主張も確かに事実の一端でしょうが、コンコルドを妨害して国威を高める目的だけがアメリカがSST開
発に乗り出した理由であると決めつけるような記述は、アポロ計画を「国家発揚の手段だった」という側面でしか捉えら
れなかったり、なんでもかんでも「国家陰謀論」にしてしまうような歴史観同様、幼児的な世界観の産物としか言いよう
がありません。ボーイング社がSSTの指名競争でロッキード社に勝ったのち、売り物であった可変翼コンセプトを白紙撤
回し、破れたロッキード案に近いデルタ/オージー翼に戻ったことはよく知られていますが、この下りの記述にも、いち
いち行間に、今度は「ボーイング社」に対する偏見が入り込んでいて、ほとんど読むに耐えませんでした。
個々の記述には裏話的な初見のものもあり、写真なども含め資料性が決して低いわけではないのですが、時系列の混乱と
いう致命的な構成と「とんでも論」に近い単純な社会観、思い込みは、冷静で公平な優れたジャーナリズムのありかたと
はまったくほど遠いものです。前書きには、遠藤欽作という方が長年かけて収集した資料に基づいて、帆足孝治という人
がまとめたと記述されていますが、資料性の高さと記述レベルの低さの組み合わせの謎が、なんとなく納得できるような
執筆背景です。長々とした筆者紹介文を拝見すると、たいそう立派なご経歴の方のようですが、こういう単純幼稚な社会
観と歴史観の方が「日本を代表する航空ジャーナリスト」のお一人なのかと思うと、いささか慄然とする思いです。
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コンコルド狂想曲 米、欧、ソ 三つどもえの夢の跡 ―超音速旅客機に明日はあるか― ハードカバー – 2008/2/29
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購入オプションとあわせ買い
イギリスとフランス、ソビエト、そしてアメリカが、SST時代という砂上の楼閣を求め、激しい超音速旅客機の開発競争を繰り広げた1960年代。
結局実用化できたのはコンコルドだけだったが、コンコルドスキーと揶揄されたソビエトのTu-144や、環境問題などで結局モックアップしか作られなかったボーイング2707の存在も決して忘れることができない。
「コンコルド」の就航が終わってすでに5年。しかし、未だに次世代超音速旅客機が本格的に開発される気配はない。より速く飛びたいという人類の夢は、冷めてしまったのだろうか……。
本書は長年航空ジャーナリストとして活躍してきた2名の著者が、国家間のプライドがぶつかり合った超音速旅客機の開発を紐解きつつ、超音速旅客機の将来を予測している。
結局実用化できたのはコンコルドだけだったが、コンコルドスキーと揶揄されたソビエトのTu-144や、環境問題などで結局モックアップしか作られなかったボーイング2707の存在も決して忘れることができない。
「コンコルド」の就航が終わってすでに5年。しかし、未だに次世代超音速旅客機が本格的に開発される気配はない。より速く飛びたいという人類の夢は、冷めてしまったのだろうか……。
本書は長年航空ジャーナリストとして活躍してきた2名の著者が、国家間のプライドがぶつかり合った超音速旅客機の開発を紐解きつつ、超音速旅客機の将来を予測している。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社イカロス出版
- 発売日2008/2/29
- ISBN-104863200102
- ISBN-13978-4863200104
登録情報
- 出版社 : イカロス出版 (2008/2/29)
- 発売日 : 2008/2/29
- 言語 : 日本語
- ハードカバー : 320ページ
- ISBN-10 : 4863200102
- ISBN-13 : 978-4863200104
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,573,955位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
星5つ中2つ
5つのうち2つ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年3月5日に日本でレビュー済み
かつて、超音速旅客機(SST)の就航が確実な未来と信じられていた時代があった。評者の幼い頃に参加した見学ツアーでもらった日本航空のパンフレットには、コンコルドやボーイング2707の導入予想図が踊っていた。評者はそれをわくわくしながら眺めていたものである。
作者は、SSTが輝かしい未来であった時代に、航空ジャーナリストとして活動していた人物であり、後書きにおいて、その時代の熱気を伝えようとしてこの本を執筆したと書いている。
そのせいか、コンコルド狂想曲と言いながら、内容的には米国のSST開発についての記述が約半分を占めていて、内容とタイトルにはずれがあると感じられた。
ただし、それだけでは星二つという低い評価にはならない。この本の特に前半の部分はものすごく読みにくいのだ。
どういうことかというと、記述が時系列に配慮されていないのだ。章のテーマに沿って記述することを優先すれば、文章構成上、そのような場合もあり得るが、この本ではそれは当てはまらない。章の記述内容も一定していない。いや、章の間では矛盾さえ見受けられ、通読しているのだろうかと、不穏なことを考えたくなる。
コンコルドについての年譜等を脇において読まれることをお勧めする。
また、舞台裏の政治的経済的技術的な苦闘を続けるエピソードばかりで、当時の一般の雰囲気というものについての記述はほとんど見られない。そのため、読みにくさとの相乗効果で、熱気が伝わって来ないのだ。
そして、F-2を要撃戦闘機とするなど、事実を誤認していると思われる記述が多数見出された。
関連の知識を持ったマニアは別だが、この方面に関する知識の薄い方には、勧めにくいということで、星二つとさせていただいた。悪しからず。
作者は、SSTが輝かしい未来であった時代に、航空ジャーナリストとして活動していた人物であり、後書きにおいて、その時代の熱気を伝えようとしてこの本を執筆したと書いている。
そのせいか、コンコルド狂想曲と言いながら、内容的には米国のSST開発についての記述が約半分を占めていて、内容とタイトルにはずれがあると感じられた。
ただし、それだけでは星二つという低い評価にはならない。この本の特に前半の部分はものすごく読みにくいのだ。
どういうことかというと、記述が時系列に配慮されていないのだ。章のテーマに沿って記述することを優先すれば、文章構成上、そのような場合もあり得るが、この本ではそれは当てはまらない。章の記述内容も一定していない。いや、章の間では矛盾さえ見受けられ、通読しているのだろうかと、不穏なことを考えたくなる。
コンコルドについての年譜等を脇において読まれることをお勧めする。
また、舞台裏の政治的経済的技術的な苦闘を続けるエピソードばかりで、当時の一般の雰囲気というものについての記述はほとんど見られない。そのため、読みにくさとの相乗効果で、熱気が伝わって来ないのだ。
そして、F-2を要撃戦闘機とするなど、事実を誤認していると思われる記述が多数見出された。
関連の知識を持ったマニアは別だが、この方面に関する知識の薄い方には、勧めにくいということで、星二つとさせていただいた。悪しからず。