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動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか 単行本 – 2009/2/17
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哲学する分子生物学者・福岡伸一が問う生命のなりたち、ふるまい、ありよう。
「人間は考える管である」「なぜ、あなたは太り続けるか」
「ES細胞は再生医学の切り札か」「種を超えるウイルス」
「アンチ・アンチ・エイジング」ほか、10年におよぶ画期的論考をすべて収録。
「生命の流れ」を、流麗な文体で語る福岡生命理論の決定版!
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社木楽舎
- 発売日2009/2/17
- ISBN-104863240120
- ISBN-13978-4863240124
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出版社より
著者からのコメント
生命現象の核心を解くキーワード、それは<動的平衡> (dynamic equilibrium ダイナミック・イクイリブリアム)。
私たちは、自分は自分だ、自分の身体は自分のものだ、という風に、確固たる自己の存在を信じているけれど、それは実は、思うほど確実なものではない。私たちの身体は、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸などの分子で構成されている。しかし、それら分子はそこにずっととどまっているのでもなければ、固定されたものでもない。分子は絶え間なく動いている。間断なく分解と合成を繰り返している。休みなく出入りしている。実体としての物質はそこにはない。一年前の私と今日の私は分子的にいうと全くの別物である。そして現在もなお入れ替わり続けている。
つまり、私たちの身体は分子の「淀み」でしかない。それも、ほんの一瞬の。私たちの生命は、分子の流れの中にこそある。とまることなく流れつつ、あやういバランスの上にある。それが生命であり、そのあり方を言い表す言葉が、本書のタイトル、<動的平衡>である。本書は、最初から最後まで、<動的平衡>とは一体何なのか、どのように成り立ち、いかにふるまうかを考えた本である。
爪や皮膚、髪の毛であれば、絶えず置き換わっていることが実感できる。しかし私たちの全身の細胞のそのすべてで置き換わりが起きている。固い骨や歯のような部位でもその内部は動的平衡状態である。お腹の回りの脂肪も、たえず運び出され、たえず蓄えられている。分裂しないはずの脳細胞でもその中身やDNAは作り替えられる。
なぜそれほどまでに、あえどのない自転車操業のような営みを繰り返さねばならないのか。それは、絶え間なく壊すことしか、損なわれないようにする方法がないからである。生命は、そのようなありかたとふるまいかたを選びとった。それが動的平衡である。
生命は、必死に自転車をこいでいる。追手から逃れるために。追手は生命をとらえて、その秩序を壊そうとたくらむ。温かな血潮を冷まそうとする。循環を止めようとする。追手の名は、エントロピー増大の法則。輝けるものはいつか錆び、支柱や梁はいずれ朽ち果てる。いかなる情熱もやがては消え、整理整頓された机の上もすぐに本や書類が積みあがる。乱雑さ(エントロピー)が増える方向に時間は流れ、時間の流れは乱雑さが増える方向に進む。生命も、この宇宙の大原則から免れることはできない。しかし、エントロピー増大の法則に先回りして自らをあえて壊し、そして作り変えるという自転車操業を続ける限りにおいて、生物はその生命を維持することができる。私たちの身体において、たゆまず、けなげに自転車をこぎつづけているもの、それが動的平衡である。
あなたは本書を読み終わった後、季節の移ろいを感じ、高い空を見上げ、いろんな思いを巡らせることだろう。あるいは、たくさんの友達と会話することだろう。その時々に、こう言ってほしい。「ああそれはね、動的平衡だよ」と。
【目次】
●「青い薔薇」――はしがきにかえて
●プロローグ――生命現象とは何か
ボスの憂鬱
ノーベル賞より億万長者(ビリオネラ)
生命現象とは何なのか
●第1章 脳にかけられた「バイアス」――人はなぜ「錯誤」するか
クリックが最後に挑んだテーマ
記憶物質を追求したアンガー博士
記憶とは何か
情報伝達物質ペプチドの暗号
時間どろぼうの正体
人間の脳に貼りついたバイアス
「見える人」と「見えない人」
錯覚を生むメカニズム
なぜ、学ぶことが必要なのか
● 第2章 汝(なんじ)とは「汝の食べた物」である――「消化」とは情報の解体
骨を調べれば食物がわかる
食物は情報を内包している
胃の中は「身体の外」
人間は考える管である
生命活動とはアミノ酸の並べ替え
コラーゲン添加食品の空虚
「頭がよくなる」食品?
チャイニーズ・レストラン・シンドローム
●第3章 ダイエットの科学――分子生物学が示す「太らない食べ方」
ドカ食いとチビチビ食い
自然界はシグモイド・カーブ
「太ること」のメカニズム
脂肪に変換して貯蔵するプロセス
インシュリンを制御せよ!
「飢餓」こそが人類七〇〇万年の歴史
過ぎたるは及ばざるが如し
●第4章 その食品を食べますか?――部分しか見ない者たちの危険
消費者にも責任がある
安全のコストを支払う人びと
壮大な人体実験をしている
バイオテクノロジー企業の強欲
遺伝子組み換え作物の大義名分
「青いバラ」の教訓
全体は部分の総和ではない
● 第5章 生命は時計仕掛けか?――ES細胞の不思議
生命の仕組みを解き明かす方法
タンパク質の設計図を書き換えよ
受精卵を「立ち止まらせる」方法はないか
「空気が読めない」細胞
ガン細胞とES細胞の共通点
ノックアウト・マウスの完成
「えびす丸1号」に何が起きたか
ES細胞は、再生医学の切り札か?
●第6章 ヒトと病原体の戦い――イタチごっこは終わらない
うつる病気とうつらない病気
細菌学の開祖ロベルト・コッホ
種の違いとは何か
カニバリズムを忌避(きひ)する理由
「濾過性病原体」の発見
自己複製能力を持つ「物質」
種を超えるウイルス
謎の病原体
異常型プリオンタンパク質は足跡?
●第7章 ミトコンドリア・ミステリー――母系だけで継承されるエネルギー産出の源
私たちの体内にいる別の生物
フォースの源泉
一五回ボツになった論文
葉緑体も別の生物だった
「取り込まれた」ことの痕跡
●第8章 生命は分子の「淀み」――シェーンハイマーは何を示唆したか
デカルトの「罪」
可変的でありながらサスティナブル
「動的な平衡」とは何か
多くの失敗は何を意味するか
アンチ・アンチ・エイジング
なぜ、人は渦巻きに惹かれるか
●あとがき
商品の説明
レビュー
私たちは、自分は自分だ、自分の身体は自分のものだ、という風に、確固たる自己の存在を信じているけれど、それは実は、思うほど確実なものではない。私たちの身体は、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸などの分子で構成されている。しかし、それら分子はそこにずっととどまっているのでもなければ、固定されたものでもない。分子は絶え間なく動いている。間断なく分解と合成を繰り返している。休みなく出入りしている。実体としての物質はそこにはない。一年前の私と今日の私は分子的にいうと全くの別物である。そして現在もなお入れ替わり続けている。
つまり、私たちの身体は分子の「淀み」でしかない。それも、ほんの一瞬の。私たちの生命は、分子の流れの中にこそある。とまることなく流れつつ、あやういバランスの上にある。それが生命であり、そのあり方を言い表す言葉が、本書のタイトル、<動的平衡>である。本書は、最初から最後まで、<動的平衡>とは一体何なのか、どのように成り立ち、いかにふるまうかを考えた本である。
爪や皮膚、髪の毛であれば、絶えず置き換わっていることが実感できる。しかし私たちの全身の細胞のそのすべてで置き換わりが起きている。固い骨や歯のような部位でもその内部は動的平衡状態である。お腹の回りの脂肪も、たえず運び出され、たえず蓄えられている。分裂しないはずの脳細胞でもその中身やDNAは作り替えられる。
なぜそれほどまでに、あえどのない自転車操業のような営みを繰り返さねばならないのか。それは、絶え間なく壊すことしか、損なわれないようにする方法がないからである。生命は、そのようなありかたとふるまいかたを選びとった。それが動的平衡である。
生命は、必死に自転車をこいでいる。追手から逃れるために。追手は生命をとらえて、その秩序を壊そうとたくらむ。温かな血潮を冷まそうとする。循環を止めようとする。追手の名は、エントロピー増大の法則。輝けるものはいつか錆び、支柱や梁はいずれ朽ち果てる。いかなる情熱もやがては消え、整理整頓された机の上もすぐに本や書類が積みあがる。乱雑さ(エントロピー)が増える方向に時間は流れ、時間の流れは乱雑さが増える方向に進む。生命も、この宇宙の大原則から免れることはできない。しかし、エントロピー増大の法則に先回りして自らをあえて壊し、そして作り変えるという自転車操業を続ける限りにおいて、生物はその生命を維持することができる。私たちの身体において、たゆまず、けなげに自転車をこぎつづけているもの、それが動的平衡である。
あなたは本書を読み終わった後、季節の移ろいを感じ、高い空を見上げ、いろんな思いを巡らせることだろう。あるいは、たくさんの友達と会話することだろう。その時々に、こう言ってほしい。「ああそれはね、動的平衡だよ」と。
著者 福岡伸一 --著者からのコメント
著者について
登録情報
- 出版社 : 木楽舎 (2009/2/17)
- 発売日 : 2009/2/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4863240120
- ISBN-13 : 978-4863240124
- Amazon 売れ筋ランキング: - 40,348位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
ふくおかしんいち
1959年東京生まれ。京都大学卒。
米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学総合文化政策学部教授。分子生物学専攻。専門分野で論文を発表するかたわら、一般向け著作・翻訳も手がける。
2007年に発表した『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞、および中央公論新書大賞を受賞し、67万部を超えるベストセラーとなる。他に『プリオン説はほんとうか?』(講談社ブルーバックス、講談社出版文化賞)、『ロハスの思考』(ソトコト新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『できそこないの男たち』(光文社新書)、『動的平衡』(木楽舎)、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、週刊文春の連載をまとめたエッセイ集『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)など、著書多数。
最新刊は対談集『エッジエフェクト−界面作用−』(朝日新聞出版)。
現在、ヒトがつくりかえた生命の不思議に迫る番組、NHK—BS「いのちドラマチック」に、レギュラーコメンテーターとして出演中。また、生物多様性の大切さを伝えるための環境省の広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーもつとめる。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
この本を読んで生物にとても興味を持った。
科学者においてもこれまで数学者、物理学者、医師、生物学者、心理学者、天文学者などさまざまな本業を持つ方々が優れた文筆作品を残されてきました。私は特に優れた数学者が描く精緻で無駄のない世界観に最も強い魅力を感じます。
本書の福岡伸一さんと同じように遺伝生物学を本業とする学者おいても、ワトソンとクリック、ドーキンス、マットリドレーといった錚々たる先人が熱情溢れる歴史的な著作を残してきました。山中伸弥さんもこの並びと言えるでしょうか。
本書が話題になった当時はあまりにも多忙で読むことが出来ず、ようやく手に取る機会を得ました。この本を一言で表するなら、「分子生物学的エッセイ」あるいは、「高校生や大学生を対象とした科学啓蒙書」という内容です。
内容自体はその域をでるものではないのですが、文章の格調が非常に高く、簡潔で美しい表現力に圧倒されます。そして、万人にとって読みやすい、受け入れやすい語り口の中に、生命や存在の根源を探求し、リスペクトする冷静で真摯な熱情が込められています。福岡伸一さんが、その「科学者」としての探究心や熱情を文章に置き換えることのできる、現存する稀有な「文筆家」であることを確信できる一冊です。現代の専業作家や小説家のなかで、美しい日本語を通して、これだけの物語性や世界観を展開できるひとがいったいどれくらいいるでしょうか。
「生命」について書かれた以下の文章がその例として相応しいように思うので、第4章から一部編集して抜粋します。
生命現象のすべてはエネルギーと情報が織りなすその「効果」にある。その効果が現れるには「時間」が必要なのである。あるタイミングには、この部品とあの部品が出現し、エネルギーと情報が交換されて、ある効果が生み出される。次の瞬間には、別の一群の部品が必要となり、前のステージで必要とされた部品は不必要であるばかりか、そこにあってはならないのだ。このような不可逆な時間の折りたたみの中に生命は成立する。生命を「部品の集合体」という物質レベルでのみ考えると、時間の重要性を見失ってしまう。
この文章は、「生命」を見添えるなかで、「社会」「政治」「環境」など様々なものの根底に流れる『真理』を捉えてはいないでしょうか?
そして、続く5章ではこの本の核心をつく、次の文章がありました。
生命とは機械ではない。そこには、機械とは全く違うダイナミズムがある。生命の持つ柔らかさ、可変性、そして全体としてのバランスを保つ機能-それを、私は「動的な平衡状態」と呼びたいのである。
書かれてから時間が経過しているので、時事としてはやや古いかもしれません。しかしこの本と『動的平衡』という哲学そのものは決して古びることなく、長く読み継がれていくことを確信します。続編もさっそく読んでみたいと思います。
ありがとうございました。
その次に位置する本だと思います。
「生命潮流」は40年も前の本ですが、「動的平衡」は別なバイブルになるのかも知れません。
「ヒト」を、地球上で一番上に存在する生物の様に言う人が居ますが、
こう言った本を読んで行くと、「ヒトは、それ程優れた生物では無い」ことに気が付きますよね。
実際の講義をテレビで観ました。それはそれで面白かったんですが、本の方が想像力や妄想力をかき立てられ、
ワクワクさせられます。
2以降も早く読みたくなる本です。
博士の説が同形で存在していることに気付く 特に1章はそのように感じた
よく見たら 2010/3/6の不二さんのレビューと同じかも
以下備忘録をかねて
プロローグ
海外大学研究事情 熾烈な競争 cDNAに付随した情報が9桁の金になりうる(資本主義の成れの果て?)
第一章
現在は過去の記憶で出来上がっている
百聞は一見に如かずというが、見ることは必ずしも正しく無い 空耳にたいする 空目(ソラメ)
人類は進化の過程でランダムな物(カオス)の中に法則を見つけてきた 脳は元来そのような働きを持っている(特に人の顔)
しかし脳のバイアスによって簡単に錯覚を起こす(スコトーマ)
脳内に記憶物質を探る話
記憶とは神経回路でつくる星座のような物で 実態としての記憶物質は存在しない(空観のこと? まだ理解不足だが)
知識の無い物は見えなかった 逆に見たい物を見ていた(精子の中の小人)
逆に 一度見えてしまえば それまで誰も見えなかった物も みんなが見える様になる
人類は法則性を見つけることで生き延びてきた(抽象度を上げる作業)
神経回路の刈り込みに (母国語習得のクリティカルエイジ)
なぜ学ぶのか 高校生への講演会をもとに
生存そのものが唯一の課題であった時代から
生存の意味を探ることが生きる意味へになってきている
脳は錯覚する 直感は間違える
生物学的規制の外側へ思考を広げることは可能である
脳の一部しか使っていないということは直感的にしか考えていないと言うことである
直感が把握しづらい現象へイマジネーションを広げるために学校で勉強する必要がある
(頭をフル回転して 自分で考えよ、といったメッセージと解釈)