邦訳第２巻までを読んでいる方には、是非とも読んで頂きたいこの第３巻です。本国ＴＰ版は、現在１７巻までが出版されており、本書には、その本国ＴＰ版の第７巻から９巻迄が掲載されています。ここまで続巻邦訳が出版されるとは、第１巻発売時には予想も出来なかったことですから、これまでのエピソードの最大のクライマックスまでの流れを訳文で続けて読める事は、とても有り難く感じます。
本国ＴＰ版第８巻までが刑務所編なのですが、本書のエピソードでは、これまでの経緯を総決算するかのような信じられない展開のオンパレードに、思わず目を疑いたくなります。分厚い本書ですが、一気に読めてしまいます。精神的に追いつめられて選択する道は必ずしも一つではないですから、本書では 危機に迫られた人間の判断を 様々な側面からリアルに描けていると思います。毎号定番となったラフスケッチ等のおまけページやリーフ・ＴＰ版の表紙の掲載は 日本版ならではのもので、毎号統一感があります。
本来、ＴＰ版８巻までをひとつのピリオドとしても良かったとは思いますが、もう一冊分掲載されているエピソードのおかげで、良い形でこれまでのストーリーのたっぷりとしたエピローグと、次に繋がるプロローグになっています。余りのショックから現実を受け入れられなくなって、高機能自閉状態になってしまうリックが会話していた電話の相手とは…。
おまけですが、第２巻発売から期間が開いたにも関わらず、残念ながら誤植があり、Ｐ１１２の「あなたいかてる」は、明らかに「あなたいかれてる」の間違いですね。本国版原文も確認しました。
以下は、当分出版されないであろう 今後の気になる展開について触れておきます（ネタバレを含みますので要注意）。
本書終盤で登場する怪しげな科学者は、本書以降 期待されるような今後の展開の重要な鍵を握る訳でもなく、案の定 嘘をついていただけの存在(ただの高校教師!)でしかないのは残念なのですが、リック達は 今後起きる思いがけない出会いから、これまでとは真逆のベクトルの、現状からは想像も出来なかったような新天地に辿り着きます。その新天地に辿り着くまでの放浪編は長く、本国ＴＰ版２冊半分ありますので、邦訳第４巻が出るとすれば、新天地までのストーリーが一気に読める事になります。放浪編では、人が人を食うというショッキングなシーンもあり、仲間のデールを失う事になってしまいます。やがて苦労してようやく辿り着いたその地も永遠の安住の場所とはならず、物語は現在も続いています。再び本書のような、主人公リックにとって衝撃的な事件が起きるのはＴＰ版１４巻ですので、もし邦訳版が出るなら第５巻でという事になります(つまり随分先の話になってしまいますね)。
いつまでも飽きずに読み続けられる凄いドラマだと思います。ＴＶ版と、キャラクターの立ち位置や展開が異なるのも、２度おいしい感じで良いと思います。本国では、11月に「ウォーキング・デッド オフィシャルマガジン」なる情報誌も出版され、スターウォーズ・インサイダーと同様の体裁で様々な情報の発信がなされています。ＴＶドラマ版の人気が継続する事で、更なる邦訳版続巻発売にも期待したいです。
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