最近、とうとう「ドグラマグラ」に手を伸ばしてしまったので、そのせいで、っていうとアレですが(笑)この本と出会うことになってしまった。
買う前に目次を確認したが、既に読んじゃったよ・・・、という本もちらほらあり、
ではあの本のどこがどう問題だったのか、
あの憂鬱な読後感はあたりまえの反応でよかった、ってことか?と、確かめたい気持ちもあって買って読んでみた。
名作として扱われている、多くの人に存在を知られている本が多く紹介されてある。
中には、「なぜこの本が??」と思うものも混じっていたが、「人によって毒の作用が違う」という著者の言葉に納得。
誰かにとって「??」なものも、違う誰かにとっては激しく作用したりするってことで。
自分の内なるどこかに、自分では気づいていなかったスイッチがあるかもしれない。
そのスイッチが入って戻らなくなることを著者は懸念して、こんな本を書いたんでしょうか。
読むなと言われたら読みたくなるという自然な感情に働きかけた、
いわば持って回ったやり方の「宣伝」とだけ思って本著を手に取るのはやめた方がいいかもしれない。
著者は文学の持つ「力」の恐ろしいところを冷静に分析し、
本気で忠告しているのだという熱意が波のような強弱をもって伝わってくる。
この本の中で「禁止」されているものの中に、それでもやはり読んでおきたいと思うものもある。
その本の、「名作」としての側面だけでなく、
誰かにとっては毒となる、その毒の要素の潜み具合というところから眺める、という読み方もできそうだし。
夢野久作短編集を読んだ時に、ふだんは見えないし見ないようにもしている「人間が持つ狂気」というものを
どうしても読者に気づかせたいんだな・・・と気づき、
なんともいえない後味の悪さを感じたが(笑)、そういう気分をきちんと理論立てて解説してあるので、
目の前のもやがひと拭きふた拭きされたような気分になった。
有名な誰もが知るあの「名作」を読んで、それがどうもプラスの作用は生み出さず、
それどころかなぜこれほどげんなり、どんよりしてしまったものか・・・という戸惑いにこの本は答えてくれると思う。
そういう読み方もあり、ってことで。
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毒書案内 単行本 – 2005/12/6
石井 洋二郎
(著)
『金閣寺』『人間失格』『不思議の国のアリス』『ツァラトゥストラ』…世に名著と謳われる傑作文学は、読み手を抜き差しならない世界へと引きずりこむ、とってもアブない本だった!
平穏な人生を送りたい人は、この傑作文学35作品は決して読んではいけません。東大教授が自信を持って非推薦する、危険な危険な「毒書」案内。
平穏な人生を送りたい人は、この傑作文学35作品は決して読んではいけません。東大教授が自信を持って非推薦する、危険な危険な「毒書」案内。
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社飛鳥新社
- 発売日2005/12/6
- ISBN-104870317001
- ISBN-13978-4870317000
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商品の説明
著者からのコメント
ギリシア神話に登場する竪琴の名手、オルフェウスのエピソードをご存知でしょうか。最愛の妻であるエウリュディケーを亡くした彼は、妻を取り戻すために冥界に下り、地上に戻るまで後ろを振り向かないという条件のもとに、彼女を連れ帰ることを許されます。ところがあと一歩で太陽の光を浴びるというところで、妻の姿をひと目見ようと背後を振り返ってしまったため、甦る寸前のエウリュディケーはふたたび冥界に引き戻されてしまうという話です。
あるいはもっと身近なところで、「鶴の恩返し」の話を知らない人はいないでしょう。けっして覗いてはいけないと釘を刺されていたのに、娘が機を織っているところを盗み見てしまったために、娘はもとの鶴の姿に戻って飛び立ってしまう……どうやら古今東西を問わず、「見てはいけない」と言われると見たくなる(そして見てしまったために取り返しのつかない結果を招く)というパターンは、人間が作り出してきた神話や民話の普遍的な祖型となっているようです。
それでも禁を破らずにはいられないのが人間の愚かなところで、もし誰もがみな言いつけを忠実に守って後ろを振り返りもせず、部屋を覗きもしなかったとしたら、そもそもこの世には「物語」というものが発生しなかったのではないでしょうか。人間はいわばタブーを犯すことではじめて人間になったのであり、してはいけないことをしてしまうという愚行を繰り返すのは、むしろ人間の本性でさえあるからです。その意味で、あらゆる禁止は侵犯行為への誘惑であり挑発である、と言ってもいいかもしれません。
『人生を狂わせる読んではいけない本』という本書のサブタイトルも、おそらくこの種の見え透いた逆説をねらったものと思われることでしょう。ところでこの推測は半分当たっていますが、半分は外れています。確かに「読んではいけない」と言われれば読みたくなるのが人情ですから、「それでも読みたいという者は読んでみろ」という挑発の意図がまったくないといえば嘘になりますが、その一方で、ここに紹介する書物は-少なくともある種の人々にとっては-掛け値なしに「読んではいけない」と、私は本気で思っているのです。
といっても、別にそれらの本が露骨な性描写を含んでいて公序良俗に反するからとか、暴力的な場面が多くて風俗紊乱の傾向があるからとか、そういった表面的・即物的な理由によるのではありません(一部の書物にそんな要素があるのは事実ですが、それだけならもっと刺激的な本が世の中にはあふれています)。そうではなく、不用意にページを開いてしまうと、それまでまどろんでいた感性がふと目を覚まし、未知の言葉たちと接触して化学反応を起こし、さらには自己の拠って立つ基盤が切り崩され、場合によってはそれまで歩んできた道を心ならずも踏み外してしまうかもしれない-読者をそんな予期せぬ事態におとしいれる可能性があるように思われるからこそ、私は以下に挙げる本を「読んではいけない」と言いたいのです。
つまりこれらの本は、それぞれ危険の質は異なるにせよ、いずれも読者を抜き差しならない状況へと誘い込みかねない致命的な「毒」を孕んだ書物ばかりなのです。
あるいはもっと身近なところで、「鶴の恩返し」の話を知らない人はいないでしょう。けっして覗いてはいけないと釘を刺されていたのに、娘が機を織っているところを盗み見てしまったために、娘はもとの鶴の姿に戻って飛び立ってしまう……どうやら古今東西を問わず、「見てはいけない」と言われると見たくなる(そして見てしまったために取り返しのつかない結果を招く)というパターンは、人間が作り出してきた神話や民話の普遍的な祖型となっているようです。
それでも禁を破らずにはいられないのが人間の愚かなところで、もし誰もがみな言いつけを忠実に守って後ろを振り返りもせず、部屋を覗きもしなかったとしたら、そもそもこの世には「物語」というものが発生しなかったのではないでしょうか。人間はいわばタブーを犯すことではじめて人間になったのであり、してはいけないことをしてしまうという愚行を繰り返すのは、むしろ人間の本性でさえあるからです。その意味で、あらゆる禁止は侵犯行為への誘惑であり挑発である、と言ってもいいかもしれません。
『人生を狂わせる読んではいけない本』という本書のサブタイトルも、おそらくこの種の見え透いた逆説をねらったものと思われることでしょう。ところでこの推測は半分当たっていますが、半分は外れています。確かに「読んではいけない」と言われれば読みたくなるのが人情ですから、「それでも読みたいという者は読んでみろ」という挑発の意図がまったくないといえば嘘になりますが、その一方で、ここに紹介する書物は-少なくともある種の人々にとっては-掛け値なしに「読んではいけない」と、私は本気で思っているのです。
といっても、別にそれらの本が露骨な性描写を含んでいて公序良俗に反するからとか、暴力的な場面が多くて風俗紊乱の傾向があるからとか、そういった表面的・即物的な理由によるのではありません(一部の書物にそんな要素があるのは事実ですが、それだけならもっと刺激的な本が世の中にはあふれています)。そうではなく、不用意にページを開いてしまうと、それまでまどろんでいた感性がふと目を覚まし、未知の言葉たちと接触して化学反応を起こし、さらには自己の拠って立つ基盤が切り崩され、場合によってはそれまで歩んできた道を心ならずも踏み外してしまうかもしれない-読者をそんな予期せぬ事態におとしいれる可能性があるように思われるからこそ、私は以下に挙げる本を「読んではいけない」と言いたいのです。
つまりこれらの本は、それぞれ危険の質は異なるにせよ、いずれも読者を抜き差しならない状況へと誘い込みかねない致命的な「毒」を孕んだ書物ばかりなのです。
著者について
石井洋二郎(いしい・ようじろう)
1951年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。フランス地域文化研究専攻。著書に『差異と欲望』(藤原書店)『文学の思考』(東京大学出版会)『美の思索』(新書館)、共編著に『フランスとその<外部>』(東京大学出版会)、訳書にブルデュー『ディスタンクシオン』(藤原書店)、『ロートレアモン全集』(筑摩書房)、サン=テグジュペリ『星の王子さま』(ちくま文庫)など。
1951年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。フランス地域文化研究専攻。著書に『差異と欲望』(藤原書店)『文学の思考』(東京大学出版会)『美の思索』(新書館)、共編著に『フランスとその<外部>』(東京大学出版会)、訳書にブルデュー『ディスタンクシオン』(藤原書店)、『ロートレアモン全集』(筑摩書房)、サン=テグジュペリ『星の王子さま』(ちくま文庫)など。
登録情報
- 出版社 : 飛鳥新社 (2005/12/6)
- 発売日 : 2005/12/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 205ページ
- ISBN-10 : 4870317001
- ISBN-13 : 978-4870317000
- Amazon 売れ筋ランキング: - 143,022位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年9月14日に日本でレビュー済み
本に書いてあることは、本にしか書けないから書いてあることだと思う。
その中には、普段の生活では口にしては行けないことが多く含まれている。
だから人は本を読む。
この案内書は、そんな口にしては行けないようなことが書かれた本ばかりが紹介されている。
悪い本だ。人前では口にしては行けないことが書かれてある本だ。秘密のことがかかれている本だ。
私はこの世界の秘密を知りたい。この世界の悪い所も全部知りたい。
そして、そのことが書かれている本の案内所として、入り口として、この本は大変入りやすい形をしています。難しい形の鍵も、文学論もいらない。興味本位で読めば、さらに世界の秘密への興味が広がるといった具合です。
紹介された書籍をばんばん読んでますが、大概、悪いことがたくさん書かれていて楽しいです。
悪いは楽しい。楽しいはいいことです。
なので、この本をオススメします。
その中には、普段の生活では口にしては行けないことが多く含まれている。
だから人は本を読む。
この案内書は、そんな口にしては行けないようなことが書かれた本ばかりが紹介されている。
悪い本だ。人前では口にしては行けないことが書かれてある本だ。秘密のことがかかれている本だ。
私はこの世界の秘密を知りたい。この世界の悪い所も全部知りたい。
そして、そのことが書かれている本の案内所として、入り口として、この本は大変入りやすい形をしています。難しい形の鍵も、文学論もいらない。興味本位で読めば、さらに世界の秘密への興味が広がるといった具合です。
紹介された書籍をばんばん読んでますが、大概、悪いことがたくさん書かれていて楽しいです。
悪いは楽しい。楽しいはいいことです。
なので、この本をオススメします。
2009年12月9日に日本でレビュー済み
筆者曰く、強く心を揺さぶられるので読ませたいと思う気持ちが半分、でも本当に読まないほうがいいという気持ちが半分。
禁止されればかえって覗いてみたい、読みたいのが人の常だとも、まえがきに書いてある。
紹介されているのは、人間の暗黒面や狂気を捉えた本の数々。原著(訳)の印象的な場面が所々引用されていて、筆者の解説を読んでいるだけでこれはヤバいと思えるものが多い。要約ではなく、結末や重要要素は隠されているから未読の人も安心だが、反面でもっと知りたいと思わせるのは確信犯的だ。
精神状態が不安定な状態では本書自体おすすめできないが、一種の怖いもの見たさに刺激されて、読書の世界を広げる一冊になるだろう。
禁止されればかえって覗いてみたい、読みたいのが人の常だとも、まえがきに書いてある。
紹介されているのは、人間の暗黒面や狂気を捉えた本の数々。原著(訳)の印象的な場面が所々引用されていて、筆者の解説を読んでいるだけでこれはヤバいと思えるものが多い。要約ではなく、結末や重要要素は隠されているから未読の人も安心だが、反面でもっと知りたいと思わせるのは確信犯的だ。
精神状態が不安定な状態では本書自体おすすめできないが、一種の怖いもの見たさに刺激されて、読書の世界を広げる一冊になるだろう。
2005年12月15日に日本でレビュー済み
おもしろかったです。「毒」書って切り口が単なるブックレビュー本と一線をかす・・・。
たまあに、ブルデューの研究者らしく、フランス現代思想な知識もチラホラ。
でも、"毒"なのに紹介された本を実際に読んでみたくなるのはなぜかしら(笑
たまあに、ブルデューの研究者らしく、フランス現代思想な知識もチラホラ。
でも、"毒"なのに紹介された本を実際に読んでみたくなるのはなぜかしら(笑