まず外見から。カバーと帯のデザイン。カバーは何と黒1色しか使っていません。シブイ! 帯は地色が黒で田母神氏のカラー写真と「危険人物」という赤い文字が入っていてよく目立ちます。格好いいです。
さて。田母神俊雄(たもがみ・としお)さんは,航空自衛隊のトップである元航空幕僚長。私は詳しいことは全然知らないのですが,応募した懸賞論文の内容が問題となって更迭された方。まあ,一般のイメージとしては,この人はひどく右に偏った人で,こういう人が自衛隊の幹部になっているというのはよろしくないのではないか…というところでしょう。
以前,藤岡信勝先生の『汚辱の近現代史』(徳間書店)を拝読したとき,当然ですが,そういう考え方もアリだよな〜と何度も思ったことがあり,おそらく今回もそういうことがあるだろうと予想して読み始めました。予想どおり。やはり,どんな組織にせよ上のほうに行く人は,それなりの人物なんですね。田母神さんはとても魅力的です。教養もユーモアもあり,もちろん腹も太い…と。本書からいくつか引用させていただくと…
「焚き火は、下から燃えるが、組織(自衛隊)は、上から燃えなければ、大きな炎にならない。燃えない組織は“不燃物集積所”になる」(42ページ)
「私は、この日本において、自衛隊への信頼も、警察への信頼も、失われたことなど一度もないと思う。
たとえ、信頼が失われたと報道されているその瞬間でさえ、大災害や大事件が起き生命の危機に晒されるようなことが生じれば、国民の多くは、自衛隊や警察の支援を期待する筈だ、と私は信じている」(130ページ)
「今、国際社会では、大人が悪ガキよりも強い力(すなわち軍事力)を保有している。国際社会の安定のためにはこれは不可欠の要件である」(146ページ)
「外交交渉においても軍事力の裏付けがなければ、ぎりぎりのところで相手を動かすことができない。軍というのは国家最後の拠り所である」(147ページ)
「真剣に論議すれば、核保有が、安全保障上も外交上も、いかに有効かということが立ち所に理解できる」(270ページ)
というところ。
《いざというときにはアメリカに「核の発射権限」を引き渡してもらう》というすごい提案について書かれた部分もあります(273〜274ページ)が,ここは本書のキモ中のキモなので,引用するのははばかられます。でも,本当にすごい考えなので,これはぜひチェックしていただきたい。“軍”の現場で指揮を執っておられた方の文章ですので,特に意識されていなくても「その世界」の雰囲気なり常識的考えが伝わってきます。
リーダーシップに関する部分などは,サラリーマン必読です。部下を腐らせないということに,いかに上司が気を遣わなければならないか,強調されています。「死ぬかもしれないけど,この仕事やってきて」と命令するんですからねえ,それを部下に受容させるためには,部下との関係や組織の雰囲気づくりなどに相当配慮がなされていないといけません。
本書に書いてあることは,なるほど,こういう考えは確かに有力だろうなあと思いました。人間の普通のあり方―やられたらやり返す,やられる前にやるのが有効―そのものですから,実にわかりやすい。でも,それはやめよう,平和主義で行ってみようという壮大な実験に取り組んでいるのが日本(およびその国民)のユニークなところなんじゃないですかね? と私は思っています(みんな自分で選んで,この「平和主義」の国に生まれてきたわけでもないのですけれど)が。
まあ,今後,どういう方向に振れるかはわかりませんが,国家の基本に関する防衛問題については,右でも左でも上でも下でも,ともかく「無関心」でなく,マジメに考えることが大事ですよね。
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自衛隊風雲録 単行本 – 2009/5/13
田母神 俊雄
(著)
如何にして私は危険人物となりしか――。
人間、田母神俊雄の知られざるライフストーリーから、更迭問題をめぐる衝撃の真相、自衛隊流のリーダー学まで赤裸々に綴った、渾身のノンフィクション。
人間、田母神俊雄の知られざるライフストーリーから、更迭問題をめぐる衝撃の真相、自衛隊流のリーダー学まで赤裸々に綴った、渾身のノンフィクション。
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社飛鳥新社
- 発売日2009/5/13
- 寸法13.2 x 2 x 18.8 cm
- ISBN-104870319195
- ISBN-13978-4870319196
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商品の説明
著者について
田母神俊雄(たもがみ・としお)
1948年7月生まれ(60歳)
福島県郡山市出身。
防衛大卒業後、航空自衛隊に入隊。統合幕僚学校長、航空総隊司令官などを歴任。2007年、航空幕僚長に就任。アパグループの懸賞論文へ応募した作品が日本の過去の侵略行為を正当化する内容で、政府見解と対立するものであったことが問題視され幕僚長を更迭、定年退職する。
1948年7月生まれ(60歳)
福島県郡山市出身。
防衛大卒業後、航空自衛隊に入隊。統合幕僚学校長、航空総隊司令官などを歴任。2007年、航空幕僚長に就任。アパグループの懸賞論文へ応募した作品が日本の過去の侵略行為を正当化する内容で、政府見解と対立するものであったことが問題視され幕僚長を更迭、定年退職する。
登録情報
- 出版社 : 飛鳥新社 (2009/5/13)
- 発売日 : 2009/5/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 280ページ
- ISBN-10 : 4870319195
- ISBN-13 : 978-4870319196
- 寸法 : 13.2 x 2 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 563,043位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2014年9月22日に日本でレビュー済み
2010年10月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いい意味で田母神氏が自衛体内で異端児だったことが分かる。政治家、官僚、中国などあらゆるものに噛み付く著者の姿を見ると、著者の敵は日本の事なかれ主義そのものだったのではないかと思える。誰に対しても正論を吐いて周りを閉口させるこのような人物が自衛隊からいなくなったと思うと惜しいが、自由な立場からものが言えるようになったこれからに期待したい。
本書の大半は自衛隊時代の著者の行動指針についてだが、これは一般社会にも適用できるものも多い。「部下の失敗は自分で被れ」「一任務一膳」「脱茶坊主宣言」「後輩に夢を与えるよう改善に努めよ」など外圧が強い自衛隊という組織内で生きてきた著者ならではの訓辞が多い。
著者が中国で彼らの歴史観に異を唱えたとき、彼らの報復は防衛交流の一部停止だった。所詮その程度のことしか出来ない国なのだ。真実は勇気をもって行動して初めて見えてくる。その様なことを教えられた一冊だった。
本書の大半は自衛隊時代の著者の行動指針についてだが、これは一般社会にも適用できるものも多い。「部下の失敗は自分で被れ」「一任務一膳」「脱茶坊主宣言」「後輩に夢を与えるよう改善に努めよ」など外圧が強い自衛隊という組織内で生きてきた著者ならではの訓辞が多い。
著者が中国で彼らの歴史観に異を唱えたとき、彼らの報復は防衛交流の一部停止だった。所詮その程度のことしか出来ない国なのだ。真実は勇気をもって行動して初めて見えてくる。その様なことを教えられた一冊だった。
2009年5月18日に日本でレビュー済み
国防を軽視し、防人たる自衛官たちを野蛮人扱いする輩が今だこの国には多い。筆者は野蛮人どころかよってたかって危険人物扱いされたわけだが、自衛官だからって黙ってちゃいかん、上に睨まれても結構、俺は一歩前に出る、そんなブレない反骨精神に感じ入った人も多い。今の田母神人気を冷ややかな目で見る輩もいるが、その何倍もの人が「よくぞ言ってくれた」と拍手している。これからも田母神節(本文中でも炸裂しております。変なオッサンやな〜(^^;))を交えながら、国防思想を啓蒙してもらいたい。
2009年9月6日に日本でレビュー済み
今まで、国防を論じたことで、更迭された自衛官は多数います。有名なのは有事の際の超法規措置を唱えた来栖元統幕僚長でしょうか?
もちろん自衛官(軍人)がその存在の意義や役割を声たか高に主張し弁論することは、危険なことであり、現に現職の自衛官は黙って職務をこなしています。では、田母神氏は、そのシビリアンコントロールのタブーを犯したのでしょうか?このことは氏の更迭にいたった経緯を知るものにとっては、全くのヒステリックな自称平和愛好者のたわごとですが・・・
そもそも、日本では自衛官の手足を縛っておきながら、いざとなったらしっかり働けと言う矛盾した人間が、至る所で見られます。
たぶん議論さえ許せば現場の人間には言いたいことが多数あるはずです。
本書は自伝という形を変えての、そのささやかな弁明と言えます。
もちろん自衛官(軍人)がその存在の意義や役割を声たか高に主張し弁論することは、危険なことであり、現に現職の自衛官は黙って職務をこなしています。では、田母神氏は、そのシビリアンコントロールのタブーを犯したのでしょうか?このことは氏の更迭にいたった経緯を知るものにとっては、全くのヒステリックな自称平和愛好者のたわごとですが・・・
そもそも、日本では自衛官の手足を縛っておきながら、いざとなったらしっかり働けと言う矛盾した人間が、至る所で見られます。
たぶん議論さえ許せば現場の人間には言いたいことが多数あるはずです。
本書は自伝という形を変えての、そのささやかな弁明と言えます。
2009年10月11日に日本でレビュー済み
どの政治家よりも、国益を考え日本の歴史をよく勉強し、日本を守り良くしようとした人である。
空将を更迭されたことは日本の損失だと思うが、このような著書を通じて私たちに投げかけてくれるものは多い。41年の自衛隊での生活がベースであるから読み応えも十分でおもしろく、購入しても損のない1冊です。
空将を更迭されたことは日本の損失だと思うが、このような著書を通じて私たちに投げかけてくれるものは多い。41年の自衛隊での生活がベースであるから読み応えも十分でおもしろく、購入しても損のない1冊です。
2009年6月10日に日本でレビュー済み
田母神さんの本は本当に面白い。さすがの一言。通勤で読んでいますが、乗り過ごしそうになった。三日あれば完読可能。