自らの体験でいえばエロ漫画のお世話になったのはアダルトビデオの出現までだったが、それでもダーティー松本が好きで単行本は集めた。結婚して家庭を持つことでそれらの本はダンボールに入れて実家の押入れ深くしまわれてしまったが、最近たまたま書店で雑誌「LO」を立ち読みし、こんな世界があるのかと愕然とした。
町田ひらくの絵を表紙に使ったこの本は誘惑的で、読むと作者の博覧強記ぶりとエロマンガの現在の広がりと深さにびっくりさせられた。しかし町田のサイン会に集まるファンの半数が女性読者だとは世の中変わったもんだ。第一部のエロマンガ全史は後世への影響力から手塚治虫作品の分析から始まっている。医学部出身で医師でもあった手塚が性の微妙な問題を採り上げたのは当然な気もするが、生前のインタビューで鉄腕アトムの実写版を撮影したとき「アトムを女性にやらせたらエッチになっちゃって」と苦笑いしながら告白しているのを記憶しているが、本人も鉄腕アトムのエロチズムには気づいていたと思う。
1980年代前半頃まではついていけたがそれ以降は未知の世界で、90年代前半に宮崎勤の事件を伏線とする大弾圧事件があったとは知らなかった。その後に「萌え」の時代がやってきて今の隆盛期につながる。
第2部は欲望のカタチから7つに分類して作品を紹介しているが、現在の作品を紹介するにはそれだけ分野が広がり内容が深くなったということである。著者は意識的に難解に説明しているようだが、内容の把握はそれほど大事じゃない。ここに挙げられた著者と作品は代表的なものであるから、まず手にとって中身を見ることである。そういう意味ではこの本は現在のエロマンガの手引書であるともいえる。
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エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門 単行本(ソフトカバー) – 2006/11/1
永山薫
(著)
驚愕と発見に満ちた、
「もう一つのマンガ王国」をめぐる冒険!
大袈裟ではなく、人類が獣脂の灯火を頼りに
石窟に野牛や羚羊を描いた時からエロ漫画の歴史が始まったのである。
描くことの快楽。表現することの快楽。見せることの快楽。
感動を、畏怖を、エロスを他者に伝える快楽。
――第一部前説「ミームが伝播する」より
「もう一つのマンガ王国」をめぐる冒険!
大袈裟ではなく、人類が獣脂の灯火を頼りに
石窟に野牛や羚羊を描いた時からエロ漫画の歴史が始まったのである。
描くことの快楽。表現することの快楽。見せることの快楽。
感動を、畏怖を、エロスを他者に伝える快楽。
――第一部前説「ミームが伝播する」より
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社イースト・プレス
- 発売日2006/11/1
- ISBN-104872577329
- ISBN-13978-4872577327
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登録情報
- 出版社 : イースト・プレス (2006/11/1)
- 発売日 : 2006/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 255ページ
- ISBN-10 : 4872577329
- ISBN-13 : 978-4872577327
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,051,071位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 20,028位社会学概論
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トップレビュー
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2007年8月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に力の入った一冊。
サブカルがメジャーになって以来(サブなのにメジャーってのは矛盾するようでもあるが)、エロを含む様々なジャンルが陽のあたるところで語られてきたが、「エロマンガ」に特化した研究はこれまでなかった(と思う)。
自身のエロマンガに関する知識および経験の範囲を大幅に超えているため(特に90年代以降)、流れを追うだけで一杯一杯であるが、本作で取り上げられている作品群をいつかはチェックしてみたい気にさせられる。
余談ですが、エロトピアって2000年に休刊したことを知りました。(道理で最近見かけないと思った。)
サブカルがメジャーになって以来(サブなのにメジャーってのは矛盾するようでもあるが)、エロを含む様々なジャンルが陽のあたるところで語られてきたが、「エロマンガ」に特化した研究はこれまでなかった(と思う)。
自身のエロマンガに関する知識および経験の範囲を大幅に超えているため(特に90年代以降)、流れを追うだけで一杯一杯であるが、本作で取り上げられている作品群をいつかはチェックしてみたい気にさせられる。
余談ですが、エロトピアって2000年に休刊したことを知りました。(道理で最近見かけないと思った。)
2007年3月4日に日本でレビュー済み
本書は二部構成となっていますが、第一部のエロ漫画全史については
当時の社会・漫画界との関わりを交えつつ、エロ漫画が読者の要望(欲望)を
巧みに捉えて進化してきた事が良く解ります。
今まで自分達が読んできた「健全な」作品に組込まれたエロティシズムや
少女漫画とエロとの密接な関わりについて等、新しい発見も多数ありました。
しかし本書が凄いのは第二部で、これを読むと第一部は第二部を理解する
為の予備知識でしか無かったのかと思わせる程です。
エロ漫画によく取上げられる特殊な性的嗜好についての解説なのですが、
それらの変態的嗜好を色々な作品例を挙げながら分析し、一つ一つの要素に
分けてしまう事により、人間誰しもが持つ性的嗜好に行着く事を解説している
のです。
それ故に今まで「変態」と一言で片付けていた性的マイノリティの思考を
理解出来てしまう事に軽い恐怖を覚えてしまいます(苦笑)
この本を読んでしまうと、エロ漫画に性の探求という芸術性や哲学性を感じる
様になってしまいます。
その意味ではエロ漫画をエロとして読み続けたい人には不向きかもしれません。
でも、オススメです(笑)
当時の社会・漫画界との関わりを交えつつ、エロ漫画が読者の要望(欲望)を
巧みに捉えて進化してきた事が良く解ります。
今まで自分達が読んできた「健全な」作品に組込まれたエロティシズムや
少女漫画とエロとの密接な関わりについて等、新しい発見も多数ありました。
しかし本書が凄いのは第二部で、これを読むと第一部は第二部を理解する
為の予備知識でしか無かったのかと思わせる程です。
エロ漫画によく取上げられる特殊な性的嗜好についての解説なのですが、
それらの変態的嗜好を色々な作品例を挙げながら分析し、一つ一つの要素に
分けてしまう事により、人間誰しもが持つ性的嗜好に行着く事を解説している
のです。
それ故に今まで「変態」と一言で片付けていた性的マイノリティの思考を
理解出来てしまう事に軽い恐怖を覚えてしまいます(苦笑)
この本を読んでしまうと、エロ漫画に性の探求という芸術性や哲学性を感じる
様になってしまいます。
その意味ではエロ漫画をエロとして読み続けたい人には不向きかもしれません。
でも、オススメです(笑)
2007年5月1日に日本でレビュー済み
「重要なのは区分や定義ではない。/何が自分にとって気持ちいい表現なのかということだし、自分の脳内楽園をもっとも活性化してくれるものは何かということである」(p251)が本書の結語だが、ここには何かノスタルジックな響きがある。
たとえば本田透が「萌え」とか「二次元」とかについて語るとき、それは著者の言葉に接近していたかもしれない。しかし本田なら、「楽園」というような表現は選ばないだろう。だってそれはある種の断念を経て辿り着く、最後のアジールのようなものだから。
本田には確かに女性への偏見があったけれど、それは防御的な意識(被害妄想?)から発する性質のもので、他人を傷つけることだけは回避したいという頑ななまでの意志を感じた。それに比して、「男性としての特権を捨てるつもりはないが、空想の中で気持ちよくされる側に廻ったって、誰にもわからない。(中略)妄想とはそもそも身勝手で都合のいい空想のことなのだ」(p146)などという、開き直りとしか言いようのない著者の言葉は、ノーテンキで浅薄だ。
著者の「エロマンガ」についての知識・見識は、おそらく大したものなのだろう。随所に現代風の批評用語も用いられ、それなりに「同時代的な言葉」としての装いは整えている。しかし、いかに豊かな知識・見識を誇ろうとも、ノーテンキで浅薄な言葉に批評性はない。そして批評性を欠く言葉は常に時代に遅れており、ゆえにノスタルジックなのだ。
たとえば本田透が「萌え」とか「二次元」とかについて語るとき、それは著者の言葉に接近していたかもしれない。しかし本田なら、「楽園」というような表現は選ばないだろう。だってそれはある種の断念を経て辿り着く、最後のアジールのようなものだから。
本田には確かに女性への偏見があったけれど、それは防御的な意識(被害妄想?)から発する性質のもので、他人を傷つけることだけは回避したいという頑ななまでの意志を感じた。それに比して、「男性としての特権を捨てるつもりはないが、空想の中で気持ちよくされる側に廻ったって、誰にもわからない。(中略)妄想とはそもそも身勝手で都合のいい空想のことなのだ」(p146)などという、開き直りとしか言いようのない著者の言葉は、ノーテンキで浅薄だ。
著者の「エロマンガ」についての知識・見識は、おそらく大したものなのだろう。随所に現代風の批評用語も用いられ、それなりに「同時代的な言葉」としての装いは整えている。しかし、いかに豊かな知識・見識を誇ろうとも、ノーテンキで浅薄な言葉に批評性はない。そして批評性を欠く言葉は常に時代に遅れており、ゆえにノスタルジックなのだ。
2006年12月28日に日本でレビュー済み
まさに「不可視の王国を眺め、越境し、探索するための手引書」(本書より)。
引用図版も多く読みやすいですが、図版が図版だけに電車では読めません(苦笑)。
町田ひらくのカバーもすばらしい。こじままさきのデザインも最高。なのでとりあえず一人のときに読みましょう(w。
内容も十分過ぎるほど。「「快楽装置」としてのマンガ入門」のサブタイトルに偽りなし!。第1部の「エロマンガ全史」はマンガ読み必読。古株の方にとっては常識なのかもしれないけれど、これからのマンガ史の資料としてもかなり実用的。日本のマンガの底辺の広さを改めて実感できます。
そして、第2部の「愛と性のさまざまなカタチ」では、「もはや実用できないほどハードな描写」が何故載ってるんだ(ただし個人差があります)」といった疑問や、「萌え」が一言で説明できない理由が理解できます(できた気になれる、少なくとも腑に落ちます)。
また、セクシャリティに関するスタンスが非常に中立的スタンスで非常に好感が持てます。(本論から外れているためか、ゲイのためのエロマンガはほとんど言及されていないが、きっちりカバーしているのもすばらしい)
「マンガ読み」を自称する方には資料として必携です!ぜひ手に入れましょう。
※ただし、セクシャリティに関して寛容でない方にはお勧めしません。あしからず。
引用図版も多く読みやすいですが、図版が図版だけに電車では読めません(苦笑)。
町田ひらくのカバーもすばらしい。こじままさきのデザインも最高。なのでとりあえず一人のときに読みましょう(w。
内容も十分過ぎるほど。「「快楽装置」としてのマンガ入門」のサブタイトルに偽りなし!。第1部の「エロマンガ全史」はマンガ読み必読。古株の方にとっては常識なのかもしれないけれど、これからのマンガ史の資料としてもかなり実用的。日本のマンガの底辺の広さを改めて実感できます。
そして、第2部の「愛と性のさまざまなカタチ」では、「もはや実用できないほどハードな描写」が何故載ってるんだ(ただし個人差があります)」といった疑問や、「萌え」が一言で説明できない理由が理解できます(できた気になれる、少なくとも腑に落ちます)。
また、セクシャリティに関するスタンスが非常に中立的スタンスで非常に好感が持てます。(本論から外れているためか、ゲイのためのエロマンガはほとんど言及されていないが、きっちりカバーしているのもすばらしい)
「マンガ読み」を自称する方には資料として必携です!ぜひ手に入れましょう。
※ただし、セクシャリティに関して寛容でない方にはお勧めしません。あしからず。
2007年6月20日に日本でレビュー済み
結局日本人はみんないやらしい人間ばかりで少女趣味の変人ばかりだと露呈しているようなものですよ。この本の内容は。酷すぎて途中でやめました。0点。
2009年6月29日に日本でレビュー済み
エロマンガの表現は自然発生するのではなく、先行する作品を真似し、自分の持ち味を付け加える形で、少しずつ進歩してきた。ところが、この本だと、各作家が好き勝手に描いているように書かれている。技術的な系統図を作るでもなく、カテゴリにまとめて、だらだらと解説しているだけなのである★最近の流行としては、膣に挿入したペニスを断面図で描くというものがある。大半の作家がやっているといってよい。この始祖は誰なのかを探すだけでも、十分興味深い研究になるはずなのだが。
2006年11月11日に日本でレビュー済み
すばらしい。とにかくすばらしい。本書はエロ漫画評論の第一人者である永山薫による、他に類を見ないエロ漫画評論書であり、今後この分野の研究・評論においてキーストーンになると断言できる偉大すぎる1冊です。
本書は2部構成になっており、第一部は1940〜50年代から現在に至るまでのエロ漫画の歴史を作者・作品とそれをとりまく出版状況、社会情勢を視点にいれて検討する「エロマンガ全史」。第二部では「愛と性のさまざまなカタチ」と題され、エロ漫画における7つのモチーフ(ロリコン漫画・巨乳漫画・妹系と近親相姦・凌辱と調教・愛をめぐる物語・SMと性的マイノリティ・ジェンダーの混乱)をとりあげて、各モチーフにおいて、名作・秀作に言及しながら、「なぜそれが書かれる/読まれるのか?」を分析していきます。
フィクションをたたき台にして人間とか社会といったものに言及する文章を読むと、筆者の世界観を正当化するための我田引水ぶりや、逆に実感をともなわない空虚さを感じて違和感を覚えることがしばしばあります。しかし私は本書を読んでもそうした違和感をもちません。それは十分な客観性を保ちながらも、「エロ漫画」というものに対面する自分の骨がらみな部分と向き合い、表明する覚悟が筆者にあるからだと思います。シャープかつクリアであると同時に硬質な叙情をにじませる文章も肌に合います。ひさびさに評論読んでしびれました。私は評論を読む時には「良い評論=面白い評論」というややIQ低めな基準を採用するのですが、本書は本当に面白かったです。
本書は2部構成になっており、第一部は1940〜50年代から現在に至るまでのエロ漫画の歴史を作者・作品とそれをとりまく出版状況、社会情勢を視点にいれて検討する「エロマンガ全史」。第二部では「愛と性のさまざまなカタチ」と題され、エロ漫画における7つのモチーフ(ロリコン漫画・巨乳漫画・妹系と近親相姦・凌辱と調教・愛をめぐる物語・SMと性的マイノリティ・ジェンダーの混乱)をとりあげて、各モチーフにおいて、名作・秀作に言及しながら、「なぜそれが書かれる/読まれるのか?」を分析していきます。
フィクションをたたき台にして人間とか社会といったものに言及する文章を読むと、筆者の世界観を正当化するための我田引水ぶりや、逆に実感をともなわない空虚さを感じて違和感を覚えることがしばしばあります。しかし私は本書を読んでもそうした違和感をもちません。それは十分な客観性を保ちながらも、「エロ漫画」というものに対面する自分の骨がらみな部分と向き合い、表明する覚悟が筆者にあるからだと思います。シャープかつクリアであると同時に硬質な叙情をにじませる文章も肌に合います。ひさびさに評論読んでしびれました。私は評論を読む時には「良い評論=面白い評論」というややIQ低めな基準を採用するのですが、本書は本当に面白かったです。