オスカー・ベッカーは、フッサールの直接の門下であって、ハイデガーの存在論に結構肩入れしている数学者でもあり、哲学者でもある。ポスト・モダンの現代思想の潮流の多くは、数学を誤用しているケースが多く(レヴィ=ストロースを除く)、ラカンとか酷いものがある。そんな中、精確に数学で哲学するということはどういうことなのかを書いたのがこの本であり、数学的思考を歴史的に追っていったのがこの本である。
正直、数学があまり得意な方ではないので、おぼろげながら理解できるが、要は著者の言う「数学への後退」があったからこそ、現代の科学や技術は進歩したわけであるが、数学そのものが間違いを含んでいないという保証が無かった。そんな中、クルト・ゲーデルの「不完全性定理」が発表され、数学の世界だけではなく、物理学の世界にも多大な影響を与えた。さらには日本でも思想界にその余波が届いた。ハイデガーは「数学は歴史学や哲学にくらべて格別に厳密ということはない。ただ、ずっと狭いだけなのである」と述べたらしい(著書の中の引用)が、要は数学的思考が全面的に展望が持ちえるという保証のことではない、と著者はストイックに述べてあっさり論述を終わる。
この本を読むと、科学や技術の進歩は「数学への後退」によって進歩を遂げたと述べている。オスカー・ベッカーは日本ではほとんど知られていない。もっと読まれても良いが、翻訳された著書が非常に少なく、この本と「
ピュタゴラスの現代性―数学とパラ実存
」、「
美のはかなさと芸術家の冒険性
」くらいしかない。それが悔やまれる。
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数学的思考―ピュタゴラスからゲーデルへの可能性と限界 単行本 – 1988/7/1
- 本の長さ253ページ
- 言語日本語
- 出版社工作舎
- 発売日1988/7/1
- ISBN-104875021453
- ISBN-13978-4875021452
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登録情報
- 出版社 : 工作舎 (1988/7/1)
- 発売日 : 1988/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 253ページ
- ISBN-10 : 4875021453
- ISBN-13 : 978-4875021452
- Amazon 売れ筋ランキング: - 342,037位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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