05年に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所における共同研究プロジェクトとして「集団」をテーマとした研究会が組織されました。本書はその成果論文集であり、霊長類学(サル屋)、生態人類学(ヒト屋:狩猟採集民族等の研究)、社会文化人類学者による論文が計19本収められています。
村―国家の形成、民族アイデンティティ、集団と暴力、恐怖と攻撃的興奮、社会的ネットワーク…フィールドワークを通じて、あるいは観念・思弁によって様々な集団形成のモデルが提示されていきます。
確かに堅いし、しばしば読みづらいことは間違いありません。しかし、本書は我々の人生に非常に多くの示唆を与えてくれるでしょう。それは本書が、振る舞い・行為から「集合」を考えると同時に、一方で、心の内面から見て「集合」とは何かということを探求しているからだと思います。
・何のために集まるんだろうか?…人が集まる理由が探求されます。
・どうして集団になるんだろうか?…集団形成のプロセスとダイナミズムが探求されます。
・どうすれば自分は集団の内側に入ることが出来るんだろうか?…それは人生において最大限に重要なテーマでしょう。
一方で、集まることだけが語られるのではなく、「孤独」が社会性、集団化と表裏一体のものであることが語られます。
また、狩猟採集民族の研究から資本主義以前の公平な分配システムが語られます。(10章:ザンビアのベンバの事例)
調理グループという共働によって作業は圧倒的に効率化され、それは女性たちが支える社会保障の機構として機能しています。近代システムより自己生成的でよほど上手くいってるんじゃないのか…
資本主義は生産・消費サイクルを支えるために生活単位を分割し、所有と消費単位を限りなく分割してきました(一人一台のテレビ、一人一台の自動車、一家に一台の電話から一人一台の携帯電話に、大家族から核家族へ…さらに単身世帯へ、つまり不動産の私的所有単位の細分化)。問題は富の再分配をするかしないかということではなくて、「生活単位」や「居住単位」の分割こそが社会福祉の弱体化の本質なんじゃないのか…
ベンバの持っている社会性はそもそも資本主義以前のものであり、我々がずっと昔に失ったもののように思うかもしれません…しかし、所有や消費単位の分割ということを考えると、案外それはつい最近の出来事だったのかもしれない…そんな風にも思います。
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集団―人類社会の進化 単行本 – 2009/12/28
河合 香吏
(編集)
ペア/家族から民族/国家まで、ヒトはなぜ「集まる」のか? 集団形成における「暴力」と「誘惑」の役割、「見えない仲間」を描き出す表象能力、構造化されたsocietyにおける非構造のsocialなど、集団形成のメカニズムを進化の中で解き明かす。霊長類学と生態・社会文化人類学の第一人者による、本格的な共同研究。
- 本の長さ364ページ
- 言語日本語
- 出版社京都大学学術出版会
- 発売日2009/12/28
- ISBN-104876989370
- ISBN-13978-4876989379
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登録情報
- 出版社 : 京都大学学術出版会 (2009/12/28)
- 発売日 : 2009/12/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 364ページ
- ISBN-10 : 4876989370
- ISBN-13 : 978-4876989379
- Amazon 売れ筋ランキング: - 784,864位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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