"この料理の四面体こそが、世界にかって存在した、いま存在する、これから存在するであろう、すべての料理を包括する一般原理を、目に見えるかたちで表現したモデルなのである・・・といっても、信じてもらえないだろうか。"1983年発刊の本書はレヴィ・ストロースの『料理の三角形』から着想を得た刺激的な一冊。
個人的には自炊(間違っても料理とは言えない)が増える中で友人にすすめられて手にとったのですが、これがハウツー本とは全く違った知的刺激を与えてくれて、とても面白かった。
具体的には二つ、一つは後述する『料理の四面体』を導くための事例紹介とはいえ、アルジェリア式羊肉シチューから始まる料理のレパートリー、ローストビーフの原理、てんぷらの分類学、刺身という名のサラダ(!)スープとお粥の関係といった、言葉の語源までこだわりつつ、流れるように展開する料理話がいわゆる【他にはあまりない文化的な切り口】だったこと。
またもう一つとして、そこから本書は構造主義の祖とされるレヴィ・ストロースの《生まのもの》《火にかけたもの》《腐ったもの》"料理の三角形"に対して、火を頂点にした水、空気、油の料理の四面体を提案しているわけですが。著者自身が"博士から文句を言われたら撤回する"と述べているように、厳密さはともかくとして【大胆不敵さに膝を打つ楽しさ】を感じました。
メニューの名前一つから?と思ってしまう料理素人のハードルを下げてくれつつ、文化史や哲学好きも納得させてくれる一冊。食でウンチクを語りたい全ての人にオススメ。
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料理の四面体: 東西美味発見法 (酒文ライブラリー) 単行本 – 1999/4/1
玉村 豊男
(著)
- 本の長さ229ページ
- 言語日本語
- 出版社TaKaRa酒生活文化研究所
- 発売日1999/4/1
- ISBN-104877380647
- ISBN-13978-4877380649
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
「アジの干物は太陽で焼くロースト料理」「ステーキはサラダである」「ブイヤベースの正しい食べかた」など、さまざまな料理のうちにひそむ一般的原理をおもしろく解き明かす。鎌倉書房1980年刊の再刊。
登録情報
- 出版社 : TaKaRa酒生活文化研究所 (1999/4/1)
- 発売日 : 1999/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 229ページ
- ISBN-10 : 4877380647
- ISBN-13 : 978-4877380649
- Amazon 売れ筋ランキング: - 931,705位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 599位グルメエッセー
- - 20,355位クッキング・レシピ (本)
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2005年5月5日に日本でレビュー済み
1983年に文藝春秋から出たものの再刊。
本書のタイトルを見て、大抵の読者は「料理の四面体とは何だろう?」と思うに違いない。実はこれは、著者が独自に考え出した、地球上のあらゆる料理をひとつの枠組みの中に収めてしまおうという壮大な仮説のことなのである。それは4つの要素から構成されている(それゆえに四面体になる)。空気、水、油の3つが底面をなし、この三角形から焼きものライン、煮ものライン、揚げものラインという3本線が発し、頂点である火につながっている。つまり底面は火を加えない生ものの世界であり、そこに火を加えるに当たって3通りの方法が提示されていることになる。たとえば刺身なら空気、マリネなら油の隅に位置する。刺身を炭焼きにすれば焼きものラインを上に向かい、マリネをフライにすれば揚げものラインを上っていくことになる。
こうして著者はすべての料理を四面体に収めてしまうのである。本書は世界各地の料理を取り上げ、それを四面体の原理で説明することにひたすら努力する本なのである。
面白い発想だとは思う。しかし、あまり賛成できない。そもそも料理を四面体という空間で説明することの意味や目的が見えてこない。単なる思いつきを引っ張って一冊の本にしてしまっただけのように思う。
本書のタイトルを見て、大抵の読者は「料理の四面体とは何だろう?」と思うに違いない。実はこれは、著者が独自に考え出した、地球上のあらゆる料理をひとつの枠組みの中に収めてしまおうという壮大な仮説のことなのである。それは4つの要素から構成されている(それゆえに四面体になる)。空気、水、油の3つが底面をなし、この三角形から焼きものライン、煮ものライン、揚げものラインという3本線が発し、頂点である火につながっている。つまり底面は火を加えない生ものの世界であり、そこに火を加えるに当たって3通りの方法が提示されていることになる。たとえば刺身なら空気、マリネなら油の隅に位置する。刺身を炭焼きにすれば焼きものラインを上に向かい、マリネをフライにすれば揚げものラインを上っていくことになる。
こうして著者はすべての料理を四面体に収めてしまうのである。本書は世界各地の料理を取り上げ、それを四面体の原理で説明することにひたすら努力する本なのである。
面白い発想だとは思う。しかし、あまり賛成できない。そもそも料理を四面体という空間で説明することの意味や目的が見えてこない。単なる思いつきを引っ張って一冊の本にしてしまっただけのように思う。
2006年5月5日に日本でレビュー済み
料理のレシピ本は、コンピュータ関係のマニュアル本と似ている。
一つひとつの手順を親切に図入りで解説するマニュアル本は、いますぐ使いたいという初心者には優しいが、応用が利かない。全く別のアプリケーションを前にするともうお手上げである。むしろ遠回りのようでも、原理やしくみ・なぜそうなるのかといった本質を述べた解説書で学んだほうが、結局スキルの習得には早道である。
料理もまた然り。
調理の手順を丁寧に解説するレシピ本は、同じものを今すぐ作りたいという初心者にとっては有意義だが、同じ素材が揃わなかったりするともうお手上げである。料理になれた人であれば異なる素材であってもうまくアレンジすることが可能だが、それは長年の経験の中で無意識的に料理の原理・本質を習得しているからであって初心者には難しいことだろう。そうした料理の原理・本質を体系立てて理論化した本書の業績は大きい。料理初心者にこそ勧めたい一冊である。「味のしくみ」河野 友美 (著)と合わせると完璧。
一つひとつの手順を親切に図入りで解説するマニュアル本は、いますぐ使いたいという初心者には優しいが、応用が利かない。全く別のアプリケーションを前にするともうお手上げである。むしろ遠回りのようでも、原理やしくみ・なぜそうなるのかといった本質を述べた解説書で学んだほうが、結局スキルの習得には早道である。
料理もまた然り。
調理の手順を丁寧に解説するレシピ本は、同じものを今すぐ作りたいという初心者にとっては有意義だが、同じ素材が揃わなかったりするともうお手上げである。料理になれた人であれば異なる素材であってもうまくアレンジすることが可能だが、それは長年の経験の中で無意識的に料理の原理・本質を習得しているからであって初心者には難しいことだろう。そうした料理の原理・本質を体系立てて理論化した本書の業績は大きい。料理初心者にこそ勧めたい一冊である。「味のしくみ」河野 友美 (著)と合わせると完璧。