世界的前衛芸術家、草間彌生の小説作品。
正直なところ彼女には、水玉模様の人、という程度の認識しか持っていなかった。
たまたま彼女の自伝を読み、その強烈、過激な人格と半生に衝撃を受け、無知だった自分を恥じた。
俄然彼女に興味が湧き、小説も多数書いていることを知り、手に取ったのが本書。
N県（長野県だろう）の名家に生まれた少女の物語は、草間とは多少年代のずれがあるが、自伝的作品と考えてよいだろう。
母に激しく虐げられ、現実からの逃避として絵を描くことにのめり込むサチコ。花と語らう彼女はやがて精神を病み、全寮制の学校に入れられる。
小説としてのクオリティも高く、しっかりと書かれているが、学園からの脱走を図るクライマックスには、彼女の狂気、というか怒りが爆発。少々読むに堪えない展開に。
常人には容易に理解し得ない、草間芸術の創作の原動力を覗き見て、絵画も彫刻も小説も、彼女にとっては同次元の表現手段であることを思い知った。
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