とにかく著者の博学に驚かされる。
著者はロシア人で20歳の時に日本に留学し、日本文学の研究者でもあるらしい。そのため、対照となっている文学や小説家が単なる欧米の作家だけでなく日本の作家、作品も取り上げられていて、全く抜けがない。日本は世界的に見るとかなり特殊な死生観を持っているし、単なる自殺以外に心中、切腹、特攻などもあるが、これらも含めて分析されている。
世界的視野で自殺について学ぶことが出来る。
更に特筆すべきは、文体が素晴らしく、学術書と言うよりは文学を読んでいるような雰囲気になる。日本語の訳もこなれていて、翻訳物でこれほどのものはあまりない。著者の文学に対する敬意や、死に対する深い尊敬があるから、こういう文体が産まれたのだと思う。
たしかにタイトルの「自殺の文学史」は内容を表しておらず、損をしている。