読み進むにつれ知識についての疑問は膨らみ、「もしかしたら私たちは、知識が壊れていくのを目の当たりにしているのではないか」と思えてきた。
ソクラテスのようになんでも記憶するのがあたりまえだった人たちは、「本に書いてあることは覚える必要がない」という知識に対する態度に腹を立てたという。それは今の大人たちが、「グーグルで見つかるものは覚える必要がない」という子供たちの態度に腹を立てるのに似ている。そう考えると、「もう知識は、いらないのではないか」と思ってしまう。
ところが著者は、これからは知識の格差が広がってゆくという。そして知識の格差はカネの格差よりもずっと大きな問題だという。カネならば分配し直せばいいが、知識は再分配ができないというのだ。
「ただ役に立つ知識を蓄えるのでなく、美しい知識を求めなければ」という著者の考えが伝わって来た。「知識をカネにして。ひと儲けしよう」などという考えは、もう古い。これからは「豊かな知識が、人を豊かにする」という原点に立ち戻らなければ、カネも稼げない。そんなふうに思わせてくれた本。
おススメだと思う。
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