ハスキルとのユーモアのある遣り取り、恩師に送った敬愛に満ちた手紙、
これからのスケジュールを語る様子、演奏の出来映えの自己評価、挑戦したい曲について、
他には、いつどこで何をしたのか(録音含め)、誰と会って何を話したのか、等々、
実際の手紙や様々な記録を元に、詳しくそして解り易く書かれています。
一般的に容易に入手来る資料がほとんど無い中、とても嬉しい本ですね。
カラーではなくサイズも決して大きくはないのですが、写真も豊富だと思います。
ハスキル・バックハウスとのプライベートの3ショットは本当に豪華な顔ぶれですねぇ。
見たことのないショットもいくつかありまして、そういったものは殊更に楽しく拝見しました。
ただ、コンサートでモーツァルトのピアノ協奏曲ニ短調を演奏したという記述を見かけ、
(ニ短調・・・20番!?えええ・・・聴きたかった・・・!!)と、なまじ知ってしまったばかりに
やり場のない悔しさも味わってしまいました。当日聴けた人が羨ましいです。
読んでいてそんな風に楽しい気持ちになりながらも、病気に関する記述はどれも胸がひどく痛みます。
長患いだったためか、終盤だけでなく随所にそういった記述があり、
それだけ身体の負担も非常に大きかったという事を物語りますが、
ご本人もご家族も辛さや苦しさはいかばかりだったかと慮られます。
もし今だったらあるいはもう少し苦痛も取り除けていたかもしれないとか、
完治はしないまでも一応穏やかに過ごせる時間をかなり延ばせたかもしれないとか、
もしそうやって時間が出来ていたら手紙に弾きたいと書いていたあの曲もこの曲も録音出来ていたかもしれないし、
中止になってしまった沢山のコンサートも予定通り出来ていたかもしれないとか、
考えても仕方のない事ばかり浮かんできては手が止まり、(何考えてるんだろ・・・)と我に返ったり・・・。
しかしもちろんそれが全てなんかではなくて、音楽に真摯に生きた彼の姿に何よりも胸を打たれます。
先述しました様な豊富な記録からは体調を見ながらそれでも精力的に活動されていた姿が窺われ、
「ちょっとくぐもった昔の録音の中にいるかつて凄かった名ピアニスト」ではなく、
ディヌ・リパッティという一人の芸術家の姿が見えて来る様な気持ちになりました。
また、必ずしも容貌だけでその人がどんな人か正確に判断出来るとは思いませんが、
それでも彼の写真からは優しく穏やかで愛嬌のある、そして理知的なお人柄が伝わって来ていたので、
今回まさにその通りの人だったと判って心が温かくなりました。
伝説とか夭逝とか悲劇とか、この人を思う時そういった事はやはりなかなか頭から離れませんし、
ブザンソンの2カ月前に小康状態を得た際に、地元・ジュネーブで録られたという録音、
特に、「主よ、人の望みの喜びよ」なんかを聴いているとどうしても泣きたい様な気持ちになってしまうのですが、
リパッティもきっと自分の音楽を聴く時はただ音に耳を傾けて喜びに浸って欲しいと思っている様な気がするので、
のこしてくれた録音を私もただ真摯な気持ちで、大切に聴いていきたいと思います。
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ディヌ・リパッティ 伝説のピアニスト夭逝の生涯と音楽 単行本 – 2007/6/12
畠山 陸雄
(著)
1:■プロローグ
2:■第1章 天才ピアニストの誕生
3:ディヌ・リパッティの誕生とその時代
4:修行時代
5:ブカレスト音楽院卒業の頃
6:パリへ
7:■第2章 パリでの活躍と大音楽家たちとの出会い
:「精神的な母親」ナディア・ブーランジェとの出会い
9:音楽批評家の顔
10:クララ・ハスキルとの出会いと交流
:マドレーヌ・カンタクジノとの出会い
12:再び祖国に帰ること能わず
13:ウォルター・レッグとの出会い
14:■第3章 病と愛と才能と
15:高まる名声と病気との闘い
16:教える事は学ぶこと
17:晴れて夫婦に
1:最後の日々
19:最後の演奏会
20:■エピローグ
21:■年譜/参考文献/演奏レパートリー
22:作曲作品一覧/ディスコグラフィー
2:■第1章 天才ピアニストの誕生
3:ディヌ・リパッティの誕生とその時代
4:修行時代
5:ブカレスト音楽院卒業の頃
6:パリへ
7:■第2章 パリでの活躍と大音楽家たちとの出会い
:「精神的な母親」ナディア・ブーランジェとの出会い
9:音楽批評家の顔
10:クララ・ハスキルとの出会いと交流
:マドレーヌ・カンタクジノとの出会い
12:再び祖国に帰ること能わず
13:ウォルター・レッグとの出会い
14:■第3章 病と愛と才能と
15:高まる名声と病気との闘い
16:教える事は学ぶこと
17:晴れて夫婦に
1:最後の日々
19:最後の演奏会
20:■エピローグ
21:■年譜/参考文献/演奏レパートリー
22:作曲作品一覧/ディスコグラフィー
- 本の長さ238ページ
- 言語日本語
- 出版社ショパン
- 発売日2007/6/12
- ISBN-104883642305
- ISBN-13978-4883642304
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登録情報
- 出版社 : ショパン (2007/6/12)
- 発売日 : 2007/6/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 238ページ
- ISBN-10 : 4883642305
- ISBN-13 : 978-4883642304
- Amazon 売れ筋ランキング: - 667,038位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 210位演奏家・指揮者・楽器の本
- - 1,163位ワールドミュージック
- - 1,246位ワールド楽譜・スコア・音楽書
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2016年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前から欲しいと思っていた本、資料集としても価値あるものと思います。
2016年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
店頭の本や雑誌より綺麗でした。フィルムで包装されていて、想像以上に良い状態でした。
2015年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
高校生の頃ある音楽雑誌にあった天才ピアニストの名前リパッティ、名前があっただけなのですが、妙に記憶に焼き付いたまま何十年が過ぎ、それから復刻盤のCDも偶然入手し、最後のコンサートのアンコールに弾かれた伝説の曲「主よ人の望みよ喜びよ」のことだけは知っていたのですが、ようやくその人の淡い人生について知ることができました。欧州では今でもある程度年配の人ならば知っているリパッティについてはいつか知りたいものでした。パリ音楽院で学び、わずか27歳でジュネーブ音楽院の教授に招聘、第二次世界大戦前夜、戦中でもあり、さほど華やかに演奏活動を行ったようにも思えないのですが、なぜこれほどまでに彼の名前は語り継がれるのでしょう。リパッティがパリ音楽院で師事し、亡くなるまで親交のあった教授ブーランジェには1930年代にパリ留学した複数の日本の作曲家も師事しているのですが、平行してこの教授のことにも触れていたのは一石二鳥。リパッティの作曲家としての功績や何度も登場する作曲家エネスクについては次作を期待しています。芸術関係の書物は、小国としての言葉の制約もありどうしても米英仏独等なじみのある言葉の大国出身者の情報しか伝わらないのですが、そうした意味でも素晴らしい書物です。
2013年9月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他に手に入る方法がなかったので思い切って購入しましたが、通常の使用には全く問題ない程度で安心しました!大事にしたいと思います。
2011年5月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ピアノを愛する者であれば、ディヌ・リパッティを知らな者はいないほど、有名な演奏家である。
その伝記を過不足なく初めて紹介する秀本である。原語(ルーマニア語)の資料から作出された点も他に追随を見ない。
その伝記を過不足なく初めて紹介する秀本である。原語(ルーマニア語)の資料から作出された点も他に追随を見ない。
2010年5月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ディヌ・リパッティを音で聴くのならブザンソンでの「最後のリサイタル」、さらにその生涯を文字で見るのならこの本である。音を聴くのに奏者の生涯を知る必要はない、と思う。それが正しい演奏の聴き方だ。なのにリパッティだけは別なのだ。おそらくこの本を手にしようとする人は「最後のリサイタル」を聴いている人だろう。読まずにはいられない、今にも倒れそうになりながらステージに上がり、ショパンを弾いた人間とはどんな人なのか、知らずにはいられない。思い入れのこもりすぎた演奏の聴き方であることは確かなのだが、それが許される数少ない演奏家がこの人なのだ。
2008年11月1日に日本でレビュー済み
お気に入りのハスキルについても多く触れられているため
購入しました。日本語で読めるまとまった伝記として
ようやく出版されました。できれば、続けて同じルーマニア出身の
ハスキル伝も出していただきたい!
リパッティの育ちの良さ、人柄のよさ伝わってきます。
そのせいでしょうか、ハスキルと違って随分と師のコルトーに大切に
されていたみたいですね。
本書を読んだ後で、プザンソン・リサイタルのCDをあらためて聞く
と、胸が熱くなってきます。
購入しました。日本語で読めるまとまった伝記として
ようやく出版されました。できれば、続けて同じルーマニア出身の
ハスキル伝も出していただきたい!
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そのせいでしょうか、ハスキルと違って随分と師のコルトーに大切に
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本書を読んだ後で、プザンソン・リサイタルのCDをあらためて聞く
と、胸が熱くなってきます。