極東国際軍事裁判(東京裁判)は、1928年1月1日から1945年9月2日までの日本の政策の立案、遂行について、ドイツを裁いたニュールンベルク裁判に倣って、戦勝国である連合国が、裁いた裁判である。本書は、1946年5月3日第1回開廷から1948年11月11日(12日刑の宣告)判決公判までを傍聴した富士信夫氏が16のポイントに絞って、裁判の実状を記載した書である。
1936年8月1日(支那事変の約1年前)に広田内閣が決定した「東亜における列強の覇道政策を廃止し、共存共栄を図り東亜を安定化し、ソ連の脅威を排除し、列国との友好関係に留意して経済発展させる」ことを趣旨とする「国策の基準」が、検事及び判決において、侵略の共同謀議の原点とされたが、広田被告は弁明を潔しとしないせいか、一切の証言をしなかった。著者は、この国策について広田首相の説明がなかったことが残念であるとしている。
因みに、パル判事は、「日本が登場した時には、英米の経済的世界秩序が既に存在していて、新しい国の発展の余地が無かった。これらの資源を享有していた者は、生易しい事ではその分譲に同意しようとはしなかったのである。かくして、新しい志願者の平和的努力でさえも、これらの特権的立場にある者から反対される懸念を伴ったのである。日本の為政者はこの可能性に留意していたのであり、我々が「国際の基準」に見出すことのできるものは、単に、彼らの先見の明を表示しているに過ぎず、そこには何らの侵略的準備を読み取ることはできない」としている。
開戦時に、「英米東亜侵略史」と共に開戦理由をNHKラジオで日本国民に説明した論客大川博士は、精神異常として退廷させられたが、10ケ月後には、米軍病院で正常であるとの鑑定書が出ていた(後日判明)にも係わらず、公廷に復帰させれらることなく、裁判の終了後、不起訴釈放された。すなわち、検事及び判事は、長年の研究に基づく英米の東亜侵略の実態を大川被告に証言されると、日本の行為だけを侵略として裁くことができなくなると判断した。
検事は、満州国が日本の傀儡国家であることを立証するために、ソ連に抑留されていた清国の最後の皇帝溥儀を証人に立てた。弁護側は、溥儀の自筆、御璽のある「満州事変に対する蒋介石政府の措置は失当である。漢民族に政権を譲ったが、その後20年を経過しても国は混乱した。安定を得るには日中の協力が必要であるとし、清朝の復辟の意図(満州国を建国し皇帝につくこと)がある」ことを趣旨とする日本の高官宛の書簡を、溥儀に提示した。しかし、溥儀はこれは偽書であると主張し、筆跡鑑定が行われた。検察側の筆跡鑑定(中国による)は偽書、弁護側の鑑定は真正であった。後に溥儀は真正であることを認めている。
起訴状では、訴因に殺人罪が挙げられている。これに対して、ブレークニー弁護人は、有名な、「戦争での殺人は罪にはならない、それは戦争が合法であるからである。戦争による殺人が罪であるならば、広島に原爆を投下した者、投下を計画した参謀長、その国の元首の名をも挙げることができる。その彼らが今裁いているのである。」との趣旨の原爆投下問題を提起し弁論を展開している。このブレークニーの弁論は、突然に、日本語への通訳が中止された。日本語での速記録もなく、当時、日本にはこの弁論が知られることはなかった。また、弁護側が提出した原爆投下計画と実施を記載したスチムソン陸軍長官の資料は、却下されている。
検事は、戦争計画の立証のため、日本の委任統治領である南洋群島において、開戦相当前に軍設備を建設していたとする日本人による供述書は、実は、検事側が日本人の供述内容に反した、故意による偽造であったことが明らかになっている。
1941年4月から始まり、東條内閣から米国への11月7日の甲案提示、11月20日の乙案提示、そして、米国の宣戦布告とも言える今までの交渉経過を全く覆し、日本が到底承認できない11月26日の「ハルノート」の通告までの日米交渉、その後の開戦の決意に至るまでの経緯が記載されている。
その他、天皇の戦争責任を回避させ、交渉における米国の寛容のなさ、自衛戦争論を展開した東條被告とキーナン主席検事とのやりとりが記載されている。また、検察側証拠と検察最終論告に基づいて判決が作成されたこと、判決は判事ではない起草委員会が作成したこと、判決のための11名の判事による合議は一度も開催されなかったことが記載されている。
最後に、25名の被告全員は無罪であるとする個別意見(判決より長文のパル判決書)を書いたパル判事の見解の一部が紹介されている。
日本人は、日本が一方的に悪かったとする東京裁判の判決に基づく史観により、GHQの占領下において教育された。現在も自律的にそのような史観教育が継続されて、日本人の大部分は自虐史観を抱いている。韓国、中国が歴史問題を政治化し、東京裁判史観から日本が脱しようとすると、米国までもが圧力を加え、東京裁判史観を改めようとしない日本のマスコミ、左翼的批評家、学者までがこれに同調している。
東京裁判史観は本当に真理であったのかを検証する必要がある。日本が戦争に至る歴史を考えるとき、西洋の東洋への侵略史、米国の西進侵略史を考慮する必要がある。英国、フランス、オランダのアジア侵略は良く知られているが、米国も、1773年東海岸の細長い13州で独立したが、フランスから領土を買収し、メキシコとの戦争により、テキサス、ネバダ、ユタ、ニューメキシコ、アリゾナ、カリフォルニアを獲得し太平洋岸まで領土を拡大した。そして、1898年、米国は、スペインに戦争を仕掛けキューバ、プエルトリコ、フィリピン、グァムを獲得植民地化し、ハワイを併合し、サモアを分割獲得した。1900年当時、日本は、満州に南下したロシア、中国本土を植民地化するイギリス、フランス、ドイツ、及び、アラスカ-ハワイ-フィリピンと伸びるアメリカの国境線により白人帝国主義国家群に囲まれ、列強の侵略の恐怖にさらされていたのである。
大陸への進出に遅れをとったアメリカは、分け前を求めて、南米は開放しないが大陸は開放せよとの2枚舌外交を展開した。国土も広く人口密度が低く資源の豊富な米国が何故、満州における利益に固執したのか、何故米国が日本に戦争を仕掛けたかの理由がわからない。戦争が終了したが、朝鮮半島の北、満州、大陸は共産党に占領され、大西洋憲章に反して日本は領土を奪われると共にアジア各国は独立した。満州に権益を求めた米国の戦争目的は実現されていないのである。米国は、英国に代わる世界の覇権を目指したが、それには日本が邪魔であったというだけではなかったか。
日本の行為に対する正確な評価を得るためには、東京裁判の正確な実態を知り、且つ、パル判決書を精読することである。
これなくしては、日本の本当の意味での主権回復はあり得ない。
本書は、そのための切っ掛けとなる。自虐史観を抱く多くの日本人が読むべき良書であ
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こうして日本は侵略国にされた ペーパーバック – 1997/5/1
冨士 信夫
(著)
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- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社展転社
- 発売日1997/5/1
- ISBN-104886561365
- ISBN-13978-4886561367
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
敗戦国を一方的に断罪し、自虐史観の源流となった東京裁判。50年以上たった今日の日本でも、その審理内容は一切検討されずにその正しさが信じられている。公判廷を傍聴した著者が、東京裁判の正体に迫る。
登録情報
- 出版社 : 展転社 (1997/5/1)
- 発売日 : 1997/5/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 278ページ
- ISBN-10 : 4886561365
- ISBN-13 : 978-4886561367
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