「利己的な遺伝子」の邦訳が出て丁度10年。時代は確実に進んでいた。
どんな現象であれ「あ、それはね、遺伝子が生き残るためだったの」と言つて仕舞へる状況が、究極の真理に到達したのだと思えたのはほんの一時だった。某女史なんかが生物のあらゆる営みを半分本気半分ジョークで片っ端から理由付けしちゃったり(面白かったけどね)、真に受けて中途半端に真似する人らも出てきて、それらが現状肯定の悪しき優生学に陥る危険性を孕んでいただけなら兎も角、「利己的な遺伝子」を前提にすると大なり小なり後追いの決定論に陥らざるを得ず、全てのものは是然り、善悪なんてのは単なる思い込み、努力したって結果は一つ、という調子で「価値」が相対化されてしまい、あれほどホットだった生物学を始め、学問の世界は閉塞的状況を迎えるに至った。よーするに面白くなかった訳だ。しかし究極の真理は手に入ってしまった、それ以上何するよ?
答の一端が此処に在ります。後半は勇み足だったかもしれませんが、それだけフツフツしてたんだなというのが逆によく伝わってきます。本書に併せて「微生物生態学入門─地球環境を支えるミクロの生物圏」あたりを読まれると、最近の状況が広く見渡せる筈。
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自己創出する生命: 普遍と個の物語 単行本 – 1993/8/1
中村 桂子
(著)
- 本の長さ226ページ
- 言語日本語
- 出版社哲学書房
- 発売日1993/8/1
- ISBN-104886790550
- ISBN-13978-4886790552
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ゲノムから何が見えるのか、DNAとは何であったのか、生命という存在、性質、生命からみえる次の時代について、著者が語る。
登録情報
- 出版社 : 哲学書房 (1993/8/1)
- 発売日 : 1993/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 226ページ
- ISBN-10 : 4886790550
- ISBN-13 : 978-4886790552
- Amazon 売れ筋ランキング: - 469,888位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 789位生物学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
生命科学の第一人者にして、現在では「生命誌」の提唱者として名高い著者が、「普遍性と多様性」を併せ持つ生命の仕組みをゲノムを中心に考察した本。同時に、「科学」から「誌」への移行を図った「生命誌」分野の確立の経緯を述べた本でもある。
まず議論の土台として、DNAの意義や研究史が取り上げられる。そこで、DNAを単なる「自己複製系」と捉える事や「遺伝と進化」だけに比重を置く考え方に疑問を呈する。また、「利己的遺伝子」とのドーキンスの確信犯的レトリックを面白半分に扱う風潮を戒めてもいる。そして生命の総体的理解上、DNA解析という物理学的手法で免疫等の個々の事象を説明する限界を論じ、歴史的視野を採り入れる必要性を述べる。そこに登場したのがゲノムであり、「生命誌」と概念を共有する。生命を総体的であるだけでなく、歴史的存在として見るものであり、「普遍性と多様性」及び「科学と歴史」を結び付ける「知の体系化」である。「遺伝子=共通性」、「ゲノム=遺伝子の組合せ=個別性」と区分しているのも明快。また、時間を因子にしている点が独創で、「誌(物語)」が書かれている資料が「ゲノム」と捉える。そして、発生過程のゲノム複製時には周囲の情報も取り入れた新しい物を創り出すのだから、「自己創出系」と呼ぶに相応しい。生命現象の基本は「発生」と言うのが著者の主張である。発生を基本とする以上、生命の概念の中に時間の要素が必ず入る。そして、ゲノムの持つポテンシャルの実現化を自己創出型生命系と捉えるのが著者の主眼であり、その観点で生き物の有様の変化を綴った物語が「生命誌」である。
読んでいて、人間、自然、科学、歴史、日常感覚、哲学等が非常にバランス良く考察されている点に感心した。「「理性」をも含むスーパーコンセプトとして「生命」を語りたかった」との意欲も買える。ゲノムを中心に幅広い視点で生命を論じた魅惑的啓蒙書。
まず議論の土台として、DNAの意義や研究史が取り上げられる。そこで、DNAを単なる「自己複製系」と捉える事や「遺伝と進化」だけに比重を置く考え方に疑問を呈する。また、「利己的遺伝子」とのドーキンスの確信犯的レトリックを面白半分に扱う風潮を戒めてもいる。そして生命の総体的理解上、DNA解析という物理学的手法で免疫等の個々の事象を説明する限界を論じ、歴史的視野を採り入れる必要性を述べる。そこに登場したのがゲノムであり、「生命誌」と概念を共有する。生命を総体的であるだけでなく、歴史的存在として見るものであり、「普遍性と多様性」及び「科学と歴史」を結び付ける「知の体系化」である。「遺伝子=共通性」、「ゲノム=遺伝子の組合せ=個別性」と区分しているのも明快。また、時間を因子にしている点が独創で、「誌(物語)」が書かれている資料が「ゲノム」と捉える。そして、発生過程のゲノム複製時には周囲の情報も取り入れた新しい物を創り出すのだから、「自己創出系」と呼ぶに相応しい。生命現象の基本は「発生」と言うのが著者の主張である。発生を基本とする以上、生命の概念の中に時間の要素が必ず入る。そして、ゲノムの持つポテンシャルの実現化を自己創出型生命系と捉えるのが著者の主眼であり、その観点で生き物の有様の変化を綴った物語が「生命誌」である。
読んでいて、人間、自然、科学、歴史、日常感覚、哲学等が非常にバランス良く考察されている点に感心した。「「理性」をも含むスーパーコンセプトとして「生命」を語りたかった」との意欲も買える。ゲノムを中心に幅広い視点で生命を論じた魅惑的啓蒙書。
2013年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の中村桂子さんがテレビ出演されていたのをきっかけに読もうと思いました。
「利己的な遺伝子」と読み比べるとなお興味深いかと思います。
個々の言及には多少浅く感じる部分はあるかもしれませんが、著者の思考内の時系列と空間的広がりは女性ならではのものであり、
命に対して考えることを促す要素が多く感じられます。ホンマでっかの澤口先生の学者としての活躍も知ることができました。
「利己的な遺伝子」と読み比べるとなお興味深いかと思います。
個々の言及には多少浅く感じる部分はあるかもしれませんが、著者の思考内の時系列と空間的広がりは女性ならではのものであり、
命に対して考えることを促す要素が多く感じられます。ホンマでっかの澤口先生の学者としての活躍も知ることができました。
2011年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
生命誌という生命へのアプローチの方法にとても共感できた。生命をどう定義していくかについて、これまでいろいろな考え方があったと思うが、中村さんの普遍性と個別性をあわせもつ生命の本質への迫り方は、どこか仏教思想と通じるように感じた。ほんとうに面白く、生命論的な世界観の創出に興奮した。