この本には3つのポイントがあると思う。
・写真とテキストによるシザの代表作の紹介
・戸室太一氏によるシザ本人へのインタビュー
・西沢立衛氏による解説的なエッセイ
誤解を恐れずに言うのなら、シザの建築はわかりにくい。
彼の建築のわかりにくさとは、なぜ彼の建築が素晴らしいのかが、一見とてもわかりににくいことだと思う。
特に実物を見たことがなくのにも関わらず、雑誌やカタログで経験したシザの建築にたまらなく惹かれている自分にとってはそうだった。行ってみたい、実物をみてみたい、そう思わせる建築たち。たまらない何かを発しているが、それはなかなか写真をわからなかった。
このカタログを見ても、それは解決しなかった。主に写真の力不足からか、 カタログとしてはやや力不足だと感じた。納められている写真も可も無く不可も無くといった感じを受ける。そもそも写真と文章で彼の建築を伝えるのはことのほか難しいのかもしれないが、写真に関して言えば、もう少しひとつひとつのシークエンスや画角を意識して撮影し、編集することは可能ではないか、という印象を受ける。悪く言えば、撮影者もしくは編集者の彼の建築に対する理解、もしくは理解しようとする熱が足りない気がした。そもそも、この分量でシザを伝えるのはそもそも無理があるので、もう少しリストを整理した方がよかったのかもしれない。デティールの写真などもほとんどなく、あくまでもざっくりとしてしか伝わってこないので、幾度目を通しても、なんだか消化不良な感じがしてしまう。 そもそもページ数が少いのでは。もっと全体を知りたくても、はい次プロジェクト!って感じで次にすすんでしまう。ディテールの写真などはまず掲載されていない。カタログの主な役割を果しきっていないのではないか。写真自体はおそらくデジタルで撮られているのだと思うが、やや暗部の色が滲んで見づらい。デジタルを批判するわけではないが、フィルムの質感の方がカラッとしていて彼の建築を撮るには向いているかもしれない。
一方で、シザ本人のインタビューが日本語で読めるのは大変貴重ではないだろうか。
建築意匠の話だけでだけでなく、キャリアを初めてからのポルトガルの政治的な変化や、グローバル化、コンピュータがもたらした変化など、忌憚なく、あくまでも前向きで、そして愛情深いシザの言葉は胸に響いた。
これだけでも読む価値があると思う。
そして巻末の西沢立衛氏の解説がとても明快である。長くはない文章だが、私のシザに対してもっていたモヤモヤしていた印象を明快に語ってくれていて膝を打つ思いだった。それはシザの建築が何か素晴らしいものだと直感的わかるのにもかかわらず、なぜそうであるかの理由を言葉にできなかった感覚が晴れるような感じがしたからである。西沢氏は実物をみて、明快にその理由を語ってくれている。まず西沢氏自身がシザに対して深い敬意があることが伝わってくる。彼のエッセイをとおして、シザの建築は底抜けに明るいひとつの詩みたいなもんだな、と理解できた。とてもイキイキとしてポエティック。でも地にアシがついていて、少しも違和感がない。シザの建築は常に新鮮で現代的だし、年代がたっても古く感じることが無さそうな気配を感じさせてくれる。古さを感じることなくそのまま古典になってしまいそうな建築ばかりではないだろうか。こんな建築はシザしかつくれない。でもどうしてこんな素晴らしい建築をシザがつくれるのかはカタログをみてもわかないない。やはり実物をみないとわからないんだ、ということも分からせてくれるエッセイ。
値段はTOTOだけあって良心的ではないだろうか。
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アルヴァロ・シザの建築 ハードカバー – 2007/6/15
日本語版
TOTO出版
(編集)
ポルトガルの巨匠が生み出す熟成された建築の世界
アルヴァロ・シザ氏の建築には、相反する要素がごく自然に共存しています。たとえば、現代的なフォルムでありながら、昔からそこにあったような雰囲気を醸し出す佇まい。寡黙な白い壁に包まれて非常にシンプルに見えながら、決して人を退屈させない複雑に仕組まれた空間構成。一作ごとにまったく違う手法を用いながら、どの作品もシザ氏らしさに溢れていること。
これらの特徴は、氏が50年以上にわたる設計活動において、ポルトガル北部の都市ポルトを拠点にしてきたことと無縁ではありません。正統なモダニズムでありながら、ポルトガル固有のゆったりとした空気感はすべての作品に共通して感じられます。風土とどこか結びついていながら、ヴァナキュラー(土着的)という言葉では片付けられない、シザ氏の深い思考と独創性が多くの人々を惹きつけるのでしょう。
本書には、初期の名作「レサのスイミングプール」から、ブラジルで竣工間近の最新作「イベレ・カマルゴ美術館」まで、主要15作品を収録しています。どの作品も周辺環境までのコンテクストを深く読み込んだ上で用意周到に練り上げられた力作です。空間に映し出された光や陰影、自然に溶け込む静かな佇まいなど、さまざまな美しいシーンを切り取った写真を豊富に盛り込み、シザ氏の魅力を十分に伝える本格的な作品集となっています。また、遊び心に満ちたスケッチも随所に散りばめ、氏の思考の過程も垣間見られる仕組みになっています。時代や流行に揺らぐことのない、熟成された建築の世界をぜひともご堪能ください。
アルヴァロ・シザ氏の建築には、相反する要素がごく自然に共存しています。たとえば、現代的なフォルムでありながら、昔からそこにあったような雰囲気を醸し出す佇まい。寡黙な白い壁に包まれて非常にシンプルに見えながら、決して人を退屈させない複雑に仕組まれた空間構成。一作ごとにまったく違う手法を用いながら、どの作品もシザ氏らしさに溢れていること。
これらの特徴は、氏が50年以上にわたる設計活動において、ポルトガル北部の都市ポルトを拠点にしてきたことと無縁ではありません。正統なモダニズムでありながら、ポルトガル固有のゆったりとした空気感はすべての作品に共通して感じられます。風土とどこか結びついていながら、ヴァナキュラー(土着的)という言葉では片付けられない、シザ氏の深い思考と独創性が多くの人々を惹きつけるのでしょう。
本書には、初期の名作「レサのスイミングプール」から、ブラジルで竣工間近の最新作「イベレ・カマルゴ美術館」まで、主要15作品を収録しています。どの作品も周辺環境までのコンテクストを深く読み込んだ上で用意周到に練り上げられた力作です。空間に映し出された光や陰影、自然に溶け込む静かな佇まいなど、さまざまな美しいシーンを切り取った写真を豊富に盛り込み、シザ氏の魅力を十分に伝える本格的な作品集となっています。また、遊び心に満ちたスケッチも随所に散りばめ、氏の思考の過程も垣間見られる仕組みになっています。時代や流行に揺らぐことのない、熟成された建築の世界をぜひともご堪能ください。
- 本の長さ360ページ
- 言語英語, 日本語
- 出版社TOTO出版
- 発売日2007/6/15
- 寸法19.99 x 26.01 x 3.51 cm
- ISBN-10488706280X
- ISBN-13978-4887062801
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商品の説明
著者について
アルヴァロ・シザ・ヴィエイラ Alvaro Siza Vieira 建築家
1933年ポルトガル、ポルト近郊のマトジィニョス生まれ。1949-55年ポルト造形美術高等学校(ESBAP)で学ぶ。1954年最初の建築プロジェクト「4つの家」を実施。1955-58年建築家フェルナンド・ターヴォラのもとで働いた後、独立。1966-69年ESBAPで教鞭をとる。1976年ESBAPで「建築構法」の教授となる。
数々の国際コンペティションへ招致されるとともにポルト大学建築学部で教鞭を執るかたわら、ローザンヌ工科大学、ペンシルヴァニア大学、ボコタのロス・アンデス大学、ハーヴァード大学大学院デザイン学部客員教授を経て、現在、アルヴァロ・シザ・アルキテット主宰。1997年に自身が設計したオフィス・ビルに事務所を移し、20数名の国内外のスタッフとともに40件あまりのプロジェクトに精力的に取り組んでいる。
◆主な受賞
1982 国際芸術批評家協会ポルトガル支部建築賞
1987 ポルトガル建築家協会金賞
1988 スペイン建築家協会金賞、アルヴァ・アアルト財団金賞(フィンランド)
プリンス・オブ・ウェールズ賞(イギリス)
ミース・ファン・デル・ローエ財団ヨーロッパ建築賞(スペイン、バルセロナ)
1992 プリツカー賞(アメリカ、シカゴ)
1993 ポルトガル建築家協会国内建築家賞
1994 ベルラーゲシュティヒテイング賞(イタリア)、グッビオ賞(イタリア)
1995 奈良国際建築展金賞(日本)、ヴェローナ「石の建築」国際賞(イタリア)
1996 セシル建築賞(ポルトガル、リスボン)
1997 マヌエル・デ・ラ・エーサ賞(メンデス・ペラヨ大学/スペイン)
1998 高松宮殿下記念世界文化賞(日本)
2001 ウルフ賞(芸術部門建築/イスラエル、テルアビブ)
2002 ヴェニスビエンナーレ金獅子賞(イタリア)
◆主な作品
1961-1966 レサのスイミングプール
1973-2006 ボウサの集合住宅
1982-1990 シュレジッシェス・トーアの集合住宅
1986-1994 セトゥーバル教員養育学校
1986-1993 ポルト大学建築学部
1988-1993 ガリシア現代美術館
1988-1995 アヴェイロ大学図書館
1990-2006 サンタ・マリア教会と教区センター
1995-1998 Expo’98リスボン万博ポルトガル館
1991-1999 セラルベシュ現代美術館
1993-2000 サンディエゴ大学情報科学学部
2004-2005 サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン
2000-2006 コルネラ・デ・ロブレガットのスポーツ・コンプレックス
1998- イベレ・カマルゴ美術館
2005- 韓国ミメシス美術館
1933年ポルトガル、ポルト近郊のマトジィニョス生まれ。1949-55年ポルト造形美術高等学校(ESBAP)で学ぶ。1954年最初の建築プロジェクト「4つの家」を実施。1955-58年建築家フェルナンド・ターヴォラのもとで働いた後、独立。1966-69年ESBAPで教鞭をとる。1976年ESBAPで「建築構法」の教授となる。
数々の国際コンペティションへ招致されるとともにポルト大学建築学部で教鞭を執るかたわら、ローザンヌ工科大学、ペンシルヴァニア大学、ボコタのロス・アンデス大学、ハーヴァード大学大学院デザイン学部客員教授を経て、現在、アルヴァロ・シザ・アルキテット主宰。1997年に自身が設計したオフィス・ビルに事務所を移し、20数名の国内外のスタッフとともに40件あまりのプロジェクトに精力的に取り組んでいる。
◆主な受賞
1982 国際芸術批評家協会ポルトガル支部建築賞
1987 ポルトガル建築家協会金賞
1988 スペイン建築家協会金賞、アルヴァ・アアルト財団金賞(フィンランド)
プリンス・オブ・ウェールズ賞(イギリス)
ミース・ファン・デル・ローエ財団ヨーロッパ建築賞(スペイン、バルセロナ)
1992 プリツカー賞(アメリカ、シカゴ)
1993 ポルトガル建築家協会国内建築家賞
1994 ベルラーゲシュティヒテイング賞(イタリア)、グッビオ賞(イタリア)
1995 奈良国際建築展金賞(日本)、ヴェローナ「石の建築」国際賞(イタリア)
1996 セシル建築賞(ポルトガル、リスボン)
1997 マヌエル・デ・ラ・エーサ賞(メンデス・ペラヨ大学/スペイン)
1998 高松宮殿下記念世界文化賞(日本)
2001 ウルフ賞(芸術部門建築/イスラエル、テルアビブ)
2002 ヴェニスビエンナーレ金獅子賞(イタリア)
◆主な作品
1961-1966 レサのスイミングプール
1973-2006 ボウサの集合住宅
1982-1990 シュレジッシェス・トーアの集合住宅
1986-1994 セトゥーバル教員養育学校
1986-1993 ポルト大学建築学部
1988-1993 ガリシア現代美術館
1988-1995 アヴェイロ大学図書館
1990-2006 サンタ・マリア教会と教区センター
1995-1998 Expo’98リスボン万博ポルトガル館
1991-1999 セラルベシュ現代美術館
1993-2000 サンディエゴ大学情報科学学部
2004-2005 サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン
2000-2006 コルネラ・デ・ロブレガットのスポーツ・コンプレックス
1998- イベレ・カマルゴ美術館
2005- 韓国ミメシス美術館
登録情報
- 出版社 : TOTO出版 (2007/6/15)
- 発売日 : 2007/6/15
- 言語 : 英語, 日本語
- ハードカバー : 360ページ
- ISBN-10 : 488706280X
- ISBN-13 : 978-4887062801
- 寸法 : 19.99 x 26.01 x 3.51 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 592,209位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 288位建築家・様式
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著者について
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