元々はフランス文学を集中的に読んでいた当時に、ふと19世紀フランスの識字率ってどの程度だったのだろうかと気になったことから、本著と出会いました。
本著では、19世紀のフランスにおいてどのような本がどのような人にどのようにして読まれたのかが論じられます。
残念ながら著者も認めているように、19世紀のフランスの識字率をダイレクトに示す資料というものは存在しないそうです。
著者は、婚姻時のサインなどの間接的資料から識字率の遷移の推察を試みておられましたが、有力な説ではあるものの推論の域を出ないとのことでした。
(とは言え私にとってはこの研究アプローチ自体がとても興味深く感じました)
しかし本著の主題は識字率ではなく、あくまで19世紀のフランスにおける読書の広がり方を俯瞰することであり、この点については新しい事実を沢山教わることができました。
主要なキーワードを並べると、
・貸本屋
・新聞小説
・海賊版
といったところです。
貸本屋や新聞小説はよく19世紀のフランスの作品に登場しますが、私にとって特に新鮮だったのは海賊版についての事実でした。
19世紀の初頭から中葉にかけては、著作権の法整備はもちろん、その概念すらもまだ形成されていませんでした。
対して、書物は一般に高価であったため貸本屋が流行したわけですが、それとは別に、海外で安価に生産された海賊版が旅行ブルジョワジーによってフランスに持ち込まれた(≒逆輸入された)という流れがあったのだそうです。
そしてこの海賊版ビジネスの中心地は、ベルギーだったとのこと。
19世紀のベルギーは戦争の中心となることがなかったためそれほど注目されることがなく、あまり知られていないことではないかと思われますが、実はベルギーはイギリスについで産業革命を成功させた19世紀の経済大国という顔を持ちます。
そんなベルギーが、読書文化の流布という面においても一役買っていたというのは、私にとって大変な驚きでした。
こうして歴史をいつもとは違う切り口で紐解いてみると、また違った発見があります。
本著には、そうした歴史に対する新たな視座を提供してくれる面白さがありました。
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本を読むデモクラシー: “読者大衆”の出現 (世界史の鏡 情報 3) 単行本 – 2008/3/1
宮下 志朗
(著)
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- 本の長さ151ページ
- 言語日本語
- 出版社刀水書房
- 発売日2008/3/1
- ISBN-104887085036
- ISBN-13978-4887085039
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登録情報
- 出版社 : 刀水書房 (2008/3/1)
- 発売日 : 2008/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 151ページ
- ISBN-10 : 4887085036
- ISBN-13 : 978-4887085039
- Amazon 売れ筋ランキング: - 219,190位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年9月28日に日本でレビュー済み
内容については優れた先行レヴューに付け加えることは何もない。
社会史としてはそれなりに面白い。
ただし、本書は政治的なデモクラシーとは無関係である。
わずかに関係がありそうなのは「第五章 文学市場というデモクラシー」だが、
「市場というデモクラシー」という表現からしてすでに不自然であり、
実際の内容も、出版市場の成熟を面白く描いているだけである。
たんに「大衆化」といえば済む。
こうしたタイトル詐欺の先達に偉大なトクヴィルがいるが、悪しき伝統を受け継ぐ必要はない。
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