健全な人格育成のために礼儀作法を教えることは子育ての重要側面であり、子どもが悪いことをしたときに毅然と叱り「けじめ」をつけるのが父親の仕事だ、と著者は言います。道徳涵養の指南役といえそうです。
「育児をしない男を、父とは呼ばない」という厚労省のコピーは、矮小な父親観だと一蹴します。同感です。「公共」という視点で道徳と礼節、理想と正義を指し示す存在が父親であり、むしろ「道徳・礼節を語らない男を、父親とは呼ばない」というべき、と喝破します。なるほど。
父親は、世間でもまれカッコよく立ち回ることができなくとも、あるいは打ちのめされて帰ってきても、家族をなんとか守り、前に進んでゆこうとする。子どもは、そんな父親の姿を見て育つと言われます。「背中を見て育つ」ということでしょう。父親の権威は背中。著者のメタファーです。多くの言葉は要りません。そんな父親は尊敬され、だから父親が発する「けじめ」を素直に受け入れられるのではないでしょうか。大人にも間違いはあります。そういうところも含め、子どもは成長するにつれ自らを調整してゆくはずです。子どもは、父親のそういったいろいろな姿勢にみずからを投影し自己を形成していくのだと理解したいと思います。
著者は、子どもがそういった価値観と人格を獲得してこそ自主的に行動できる大人になれるといいます。自主性の前提が人格なのに、しっかり人格を育てもせずに自主的に行動しなさい、などというから子どもは戸惑い、やがて不登校やいじめに走ったりするのだ、と。健全な権威が大切ということでしょう。
イクメンとかイクボスなどという言葉がもてはやされています。なんとなく違和感があります。わざわざ銘打ってやることなのかな、と。経験者の多くが言うとおり、子育ての嵐はあっという間に過ぎます。その時間を夫婦で共有することは、大人の成長にも欠かせない大変貴重な時間だと思います。ですから男性が育児や家事などに積極的に参画することは、たしかに大切です。自分を成長させる営みでもあるわけですから。とはいえロックだぜ、みたいなノリで男性も楽しんで子育てを、といった態度は自己満足には大いに加勢するでしょうが、子どもを育てる父親の態度としては何か勘違いがあるように思われます。
そもそも昔から家事・育児にかかわっていた男性は(あえて取り沙汰されないだけで)、けっして少なくありません。イクメンブームは父親としてのあり方を、かつての主婦業一側面だけに引き込もうとしているように見えます。母性・父性をきちんと見据えたうえで子どもが母親、父親からどう影響をうけて育つのか。その視点とバランス感覚が欠如していないでしょうか。父親も絵本を読み、オシメを替え、授乳をし、という主婦代行業の実践が目的化しただけではただの痛み分けになりかねません。もちろん、そういう形で母親をサポートする技術は必要ではあります。
男女分業の形態とバランスを変えただけの「男性の子育て参加」「女性の社会進出」ではなく、父性・母性のあり方を忘れないでほしいものです。この本はそういうことも気づかせてくれます。どうイクメンするか、、、そのヒントが76頁の文庫本サイズに凝縮された父親論です。すぐに読めますし、たまに読み返すのもいいと思います。 昔経験した子育ての嵐を思い出しながら読みました。
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立派な父親になる (小さな学問の書 4) 文庫 – 2001/8/1
林 道義
(著)
- 本の長さ76ページ
- 言語日本語
- 出版社童話屋
- 発売日2001/8/1
- ISBN-104887470223
- ISBN-13978-4887470224
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
男の子ならだれにも生まれながらにして立派な父親になる素質がある。立派な父親とは、家族を慈しむ子煩悩な父親だ。ウソを憎み、正しく生きる知恵を持ち、礼節を重んじる立派な父親になって、子孫に地球を引き継ごう。
登録情報
- 出版社 : 童話屋 (2001/8/1)
- 発売日 : 2001/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 76ページ
- ISBN-10 : 4887470223
- ISBN-13 : 978-4887470224
- Amazon 売れ筋ランキング: - 976,257位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,990位家族問題
- - 123,395位暮らし・健康・子育て (本)
- - 196,496位文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2016年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年5月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は父親の役割を
「家族を統合し、理念を掲げ、文化を伝え、
社会のルールを教える」ことと説く。
本書の「立派な父親」とは
・家族を慈しむ子煩悩な父親。
・家の中ではガキ大将。
・自分の家族だけでなく、みんなの幸せを考える。
・ウソを憎み、正しく生きる知恵を持ち、礼節を重んじる。
家族の中ではエリート、リーダーであれ。
いい意味の「ガキ大将」であれ。
つまり家族の価値観や
「我が家の憲法」を提示し、やるべきことを指示し、
みなで協力して仕事をするときには配置を決め、ルールを決める。
模範的なことばかりするのではなく
ちょっと危ない冒険に誘ったり、面白いアイデアを出して
みなを楽しく遊ばせたり、自由で柔軟な発想によって
子どもたちに夢を与えることも必要。
やれやれ。こんなに「ねばならない」の多い
おとうさんから「おれについてこい」と
言われたら、子どもは家出したくなりそう。
亡き父は、母よりまめに家事をしてくれて
家族に「こうしろ」と命じたことも
しかったことも、ほとんど
一度もない。わたしにとっては
世界一立派な父親だった。
「家族を統合し、理念を掲げ、文化を伝え、
社会のルールを教える」ことと説く。
本書の「立派な父親」とは
・家族を慈しむ子煩悩な父親。
・家の中ではガキ大将。
・自分の家族だけでなく、みんなの幸せを考える。
・ウソを憎み、正しく生きる知恵を持ち、礼節を重んじる。
家族の中ではエリート、リーダーであれ。
いい意味の「ガキ大将」であれ。
つまり家族の価値観や
「我が家の憲法」を提示し、やるべきことを指示し、
みなで協力して仕事をするときには配置を決め、ルールを決める。
模範的なことばかりするのではなく
ちょっと危ない冒険に誘ったり、面白いアイデアを出して
みなを楽しく遊ばせたり、自由で柔軟な発想によって
子どもたちに夢を与えることも必要。
やれやれ。こんなに「ねばならない」の多い
おとうさんから「おれについてこい」と
言われたら、子どもは家出したくなりそう。
亡き父は、母よりまめに家事をしてくれて
家族に「こうしろ」と命じたことも
しかったことも、ほとんど
一度もない。わたしにとっては
世界一立派な父親だった。
2019年1月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
題名は「立派な…」となっているが、著者はべつに「立派で成功した父親でなければならない」と言っているわけではない。
「良い子は危うい」とか「エリートは尊大」だとかいう、立派という言葉に対して斜に構えた考え方に対して批判をしているのだ。
キャリア官僚が不祥事を起こしたときに「エリートが悪事をした。エリートは悪い」と言ったりするが、著者はこの論調を嫌う。
「悪いことをするのはエリートではない。キャリア官僚はエリートにふさわしい生き方をしろ」と論じていこうよという方向で述べている。
ほかに、「運動会で足の遅い子がかわいそうだからみんな同時にゴールしよう」、という考えはまちがいだと書いている。
足の遅い子がかわいそうだという考えは誤りだという。優れた能力の持ち主はその能力を自分の為だけに使うのではなく、みんなのために使うという前提が以前はあった。だから、ほめられたし名誉も与えられ、負けた子も一緒になって讃えたと語る。
わたしは、この本のどのページを読んでも納得いくことばかりだった。
「良い子は危うい」とか「エリートは尊大」だとかいう、立派という言葉に対して斜に構えた考え方に対して批判をしているのだ。
キャリア官僚が不祥事を起こしたときに「エリートが悪事をした。エリートは悪い」と言ったりするが、著者はこの論調を嫌う。
「悪いことをするのはエリートではない。キャリア官僚はエリートにふさわしい生き方をしろ」と論じていこうよという方向で述べている。
ほかに、「運動会で足の遅い子がかわいそうだからみんな同時にゴールしよう」、という考えはまちがいだと書いている。
足の遅い子がかわいそうだという考えは誤りだという。優れた能力の持ち主はその能力を自分の為だけに使うのではなく、みんなのために使うという前提が以前はあった。だから、ほめられたし名誉も与えられ、負けた子も一緒になって讃えたと語る。
わたしは、この本のどのページを読んでも納得いくことばかりだった。
2020年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三島由紀夫の『潮騒』みたいな感じですかね。
あるいは、マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』にも似ている。
私のような凡夫の心に、何も残らない文章を書くというのは、それも一つの天稟なんでしょうね。
あるいは、マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』にも似ている。
私のような凡夫の心に、何も残らない文章を書くというのは、それも一つの天稟なんでしょうね。
2016年4月22日に日本でレビュー済み
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納得いく素晴らしい本でした。
未来ある子供、孫たちのためにバイブルにして欲しいと思い購入してプレゼントしました。
未来ある子供、孫たちのためにバイブルにして欲しいと思い購入してプレゼントしました。
2014年2月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これから父親になる自分に、父親とはどうあるべきなのかという一つの答えを
出してくれる本でした。
嘘を憎み、正しく生きる知恵をもち、礼節を重んじる。
立派な父親になります!
出してくれる本でした。
嘘を憎み、正しく生きる知恵をもち、礼節を重んじる。
立派な父親になります!
2012年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「父親とは何か考えたことありますか?」
父親の考えが、子供にも強く影響してきます。はじめて父親になると、不思議な感覚で、改めて父親として考えることはありません。
ですが、「しつけ」について、考える機会があった30歳前後の新米パパには、ぜひ、読んでもらいたい本です!今の接し方とのギャップを感じ、新たな気づきを得られるでしょう!
父親の考えが、子供にも強く影響してきます。はじめて父親になると、不思議な感覚で、改めて父親として考えることはありません。
ですが、「しつけ」について、考える機会があった30歳前後の新米パパには、ぜひ、読んでもらいたい本です!今の接し方とのギャップを感じ、新たな気づきを得られるでしょう!
2010年7月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
書いてあることは当たり前のことですが、忘れている事を思い出させてくれた一冊。子どもを甘やかせることを良しとしている父親に“喝”を与える為にも本書を薦めたい。