私は写真は全くの素人ですから、
ごく普通の人の視点でこの写真集を見ていますが、
不思議な感動を覚えます。
「人には見えないけれど、
この辺りいったいに生活のリズムのような空気が動いている（以下略）」
という筆者の前書きに惹かれて、めくっていった写真は、
行ったことはないのに、知らないところなのに、
自分のどこかが、妙な懐かしさを覚えます。
人はいっさい写していないのに、じっと見ていると、
目の前を自転車に乗った、知らないおじさんが通り過ぎて行ったり、
雨の舗道の向こうから、学校帰りの子供達の傘が近づいてきたり、
玄関の戸をガラガラと開けて、おばあちゃんが出てきたりする。
ナミトタンのサビの色、瓦の鈍い黒、板壁の感触など、
モノクロ写真なのに、いやモノクロ写真だから、
それらがどんどん目に入ってくる。
この写真たちは、普通のカメラで撮影しているのはないと聞きました。
きっと、実際この場所にいても近視の私に、
遙か遠くの家の軒などきっと見えない。
普段見えないで、あるいは見ないで生きているものにとって、
こんなに細かくものが見えることが既に驚きなのかもしれない。
「在所」の在は、そこにある、生きて居ることで、
写真を見ていると、確かに前書きのように、
そこは生きて居ると感じるのです。
センチメンタルな気分になるということではなく、
日本の何がどうなろうと、
確かにそこには人が生きて居る（在る）と感じる写真達です。
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