ヤニスはアテネの街なかである書店を偶然みつけて立ち寄る。そこにはリオという名の不思議な雰囲気をたたえた女性がいた。リオと書物について言葉を交わすうち、すっかり魅了されたヤニスは、寝ても覚めても彼女のことが忘れられなくなり、書店に通い詰めるようになる。しかし、ある日、リオは店から忽然と姿を消してしまう…。
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作者のアンドレアス・セシェはドイツ出身の作家。書を読むことをめぐって繰り広げられる幻想色の強い物語です。
ヤニスの物語と並行して、アーサーという男の謎めいた事件が語られていきます。このアーサーが何者であるか、実は私は即座にわかりました。これからこの書を手に取る読者のためにその答えをここに書くのは控えますが、このアーサーをはじめ、様々な謎の人物が入れ替わり立ち替わり登場し、それが一体誰を指すのかを探っていくという楽しさがこの小説にはあります。本のことが三度の飯より好きだという読者にはたまらない仕掛けがほどこされている、と同時に、自らの読書体験を問い質される思いを味わうことになるだとう、とだけ記しておきましょう。
“彼”と“彼”の没年月日が同一だとは私も聞いていましたが、この小説によれば、片やユリウス暦、かたやグレゴリウス暦による日付だったということを初めて知りました。自らの不明を恥じた次第です。
この物語をドイツ語から日本語へと見事なまでに移し替えたのは、酒寄進一氏です。私はここ数年、酒寄進一氏の翻訳だという理由ひとつでドイツ語圏のミステリー小説を読み続けてきました。
フェルディナント・フォン・シーラッハ『
犯罪
』、『
罪悪
』、『
コリーニ事件
』
ネレ・ノイハウス『
深い疵
』、『
白雪姫には死んでもらう
』、『
悪女は自殺しない
』
アンドレアス・グルーバー『
夏を殺す少女
』、『
黒のクイーン
』、『
月の夜は暗く
』
ハラルト・ギルバース『
ゲルマニア
』
どれも大いに堪能させられた作品ばかりです。
今回も、虚実ないまぜのこの幻惑的な掌編を、豊かな日本語によってさらに一段上へと押し上げてくれている気がします。氏によって私は「たおやかな顔(かんばせ)」「睦言(むつごと)」「刊記(かんき)」といった日本語と出会うことができました。
有史以来紡がれてきた数々の物語が、多くの人生を確かに豊かにしてきた。その思いを強くさせる小説です。
西村書店という小さな出版社が、書を読むことを慈しむこの物語をみつけて日本に届けてくれたことに、敬意を表したいと思います。
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囀(さえず)る魚 単行本 – 2016/5/27
Andreas Séché
(著),
酒寄進一
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
ドイツを代表する語り部作家ラフィク・シャミも愛する
アンドレアス・セシェが贈る、本好きのための物語。
無類の本好きにして内気な青年ヤニスはアテネの旧市街の古びた書店に迷い込み、神秘的な女主人リオに出会う。本を熟知する彼女にいざなわれ、果てしない本の愉しみを分かち合う喜びに熱中するヤニスだったが、それも束の間、リオはふいに消息を絶つ。彼女は、本当はいったいだれなのだろう。手がかりを探すヤニスが辿り着いた世界とは?
ちりばめられた実在の書物の数々、作家たちの逸話、古典の断片。現実と虚構と謎とが織り込まれ、読む者を不思議な読後感へと誘うエブリデイ・ファンタジー。
<本書あとがきより>
主人公ヤニスは他人には思えない。
本棚の並びまでぼくの本棚を見ているようなのだ。
翻訳家・酒寄進一さん
<推薦の言葉>
前編に満ち溢れた知的な刺激。これぞまさに文学の力!
読むものを惹きつけて離さない、不思議な魔法のような魅力がここにある。
(三省堂書店 営業企画室 内田剛さん)
<海外の書評>
アンドレアス・セシェの傑作小説では読書の喜びを満喫できる。『囀る魚』では含蓄に富んだ文学談義が楽しめる。いままで読んだことのないものが読め、いままで考えたこともないことが考えられる。言葉に心震える発見もある。
(ニュルンベルガー・ナーハリヒテン紙)
アンドレアス・セシェはリサーチされた現実と虚構をないまぜにし、ジャーナリストの手法をスリリングな謎解きと見事に融合させ、冒険に満ちた世界を情感たっぷりに描いている。
(シュヴァービッシェ・ポスト紙)
読みだしたらやめられない本というものがある。文学が好きなら、この詩情にあふれたこの小さな小説をきっと愛するだろう。
(メーディエンプロフィーレ)
アンドレアス・セシェが贈る、本好きのための物語。
無類の本好きにして内気な青年ヤニスはアテネの旧市街の古びた書店に迷い込み、神秘的な女主人リオに出会う。本を熟知する彼女にいざなわれ、果てしない本の愉しみを分かち合う喜びに熱中するヤニスだったが、それも束の間、リオはふいに消息を絶つ。彼女は、本当はいったいだれなのだろう。手がかりを探すヤニスが辿り着いた世界とは?
ちりばめられた実在の書物の数々、作家たちの逸話、古典の断片。現実と虚構と謎とが織り込まれ、読む者を不思議な読後感へと誘うエブリデイ・ファンタジー。
<本書あとがきより>
主人公ヤニスは他人には思えない。
本棚の並びまでぼくの本棚を見ているようなのだ。
翻訳家・酒寄進一さん
<推薦の言葉>
前編に満ち溢れた知的な刺激。これぞまさに文学の力!
読むものを惹きつけて離さない、不思議な魔法のような魅力がここにある。
(三省堂書店 営業企画室 内田剛さん)
<海外の書評>
アンドレアス・セシェの傑作小説では読書の喜びを満喫できる。『囀る魚』では含蓄に富んだ文学談義が楽しめる。いままで読んだことのないものが読め、いままで考えたこともないことが考えられる。言葉に心震える発見もある。
(ニュルンベルガー・ナーハリヒテン紙)
アンドレアス・セシェはリサーチされた現実と虚構をないまぜにし、ジャーナリストの手法をスリリングな謎解きと見事に融合させ、冒険に満ちた世界を情感たっぷりに描いている。
(シュヴァービッシェ・ポスト紙)
読みだしたらやめられない本というものがある。文学が好きなら、この詩情にあふれたこの小さな小説をきっと愛するだろう。
(メーディエンプロフィーレ)
- 本の長さ227ページ
- 言語日本語
- 出版社西村書店
- 発売日2016/5/27
- ISBN-104890137262
- ISBN-13978-4890137268
商品の説明
著者について
【アンドレアス・セシェ】
1968年生まれ。大学で政治学、法学、メディア学を学ぶ。ジャーナリストであり、新聞社で働いた経験がある。ミュンヘンの科学雑誌の編集者を数年間つとめた後、デュッセルドルフ近郊にある故郷へ戻り、パートナーと田舎に暮らしながら小説を書いている。日本を頻繁に旅行し、東京、京都、日本文化に魅了される。作品は本書のほかに、京都の庭にインスパイアされて書いた『ナミコとささやき声』、『蝉時雨の刻』がある(ともに小社より刊行予定)。
【酒寄 進一】
1958年茨城県生まれ。和光大学教授・ドイツ文学翻訳家。
主な訳書にシーラッハ『犯罪』『罪悪』『コリー二事件』『禁忌』『カールの降誕祭』、ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』、クッチャー『濡れた魚』、グルーバー『月の夜は暗く』、ギルバース『ゲルマニア』、マイヤー『魔人の地』、イーザウ『盗まれた記憶の博物館』など。
1968年生まれ。大学で政治学、法学、メディア学を学ぶ。ジャーナリストであり、新聞社で働いた経験がある。ミュンヘンの科学雑誌の編集者を数年間つとめた後、デュッセルドルフ近郊にある故郷へ戻り、パートナーと田舎に暮らしながら小説を書いている。日本を頻繁に旅行し、東京、京都、日本文化に魅了される。作品は本書のほかに、京都の庭にインスパイアされて書いた『ナミコとささやき声』、『蝉時雨の刻』がある(ともに小社より刊行予定)。
【酒寄 進一】
1958年茨城県生まれ。和光大学教授・ドイツ文学翻訳家。
主な訳書にシーラッハ『犯罪』『罪悪』『コリー二事件』『禁忌』『カールの降誕祭』、ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』、クッチャー『濡れた魚』、グルーバー『月の夜は暗く』、ギルバース『ゲルマニア』、マイヤー『魔人の地』、イーザウ『盗まれた記憶の博物館』など。
登録情報
- 出版社 : 西村書店 (2016/5/27)
- 発売日 : 2016/5/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 227ページ
- ISBN-10 : 4890137262
- ISBN-13 : 978-4890137268
- Amazon 売れ筋ランキング: - 232,278位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
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評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年7月3日に日本でレビュー済み
2016年6月12日に日本でレビュー済み
偶然に入った本屋さんで、偶然に手にした本で、きらめくようなことに出会う。まさに、そんな本。
本好きのための物語という帯に魅かれたわけではないが、確かに納得させられた。
たぶん、この本の題名がいいのだ。
という事は、翻訳をした酒寄進一さんの力もすごいのだ。
そして、本の中身も面白いので、作者のアンドレアス・セシュ氏もすごいのだ。
本屋さんを訪れることの楽しさを満喫させられたいい本に出会えてとてもうれしい。
ちなみに翻訳の酒寄進一氏は、「犯罪」などのシーラッハの翻訳されていた。
本屋さんで本を買うことに楽しみと喜びと、希望を持てる本。
本好きのための物語という帯に魅かれたわけではないが、確かに納得させられた。
たぶん、この本の題名がいいのだ。
という事は、翻訳をした酒寄進一さんの力もすごいのだ。
そして、本の中身も面白いので、作者のアンドレアス・セシュ氏もすごいのだ。
本屋さんを訪れることの楽しさを満喫させられたいい本に出会えてとてもうれしい。
ちなみに翻訳の酒寄進一氏は、「犯罪」などのシーラッハの翻訳されていた。
本屋さんで本を買うことに楽しみと喜びと、希望を持てる本。
2016年6月3日に日本でレビュー済み
子ども向けではありませんが本好きのYAなら読めます。
たくさんの古典や名作と呼ばれる作品が物語の中で扱われ、史実もフィクションもない交ぜに、「物語」を考える物語になっています。邪道でしょうけれど、ブックガイドとして読んでもいいと思います。
ウンベルト・エーコのように時代時代の歴史や政治、言語まで絡んでこないので、軽く本好きにも楽しめます。
たくさんの古典や名作と呼ばれる作品が物語の中で扱われ、史実もフィクションもない交ぜに、「物語」を考える物語になっています。邪道でしょうけれど、ブックガイドとして読んでもいいと思います。
ウンベルト・エーコのように時代時代の歴史や政治、言語まで絡んでこないので、軽く本好きにも楽しめます。
2016年6月4日に日本でレビュー済み
訳者がこの本のことを「新しいファンタジー」というような紹介をされていたので手に取った。
物語と本の造りの共通点や、さまざまな小説への言及、地続きの神話世界。
本好き、小説好きの心を鷲づかみにするモチーフの数々に終始ため息。
目の前で次々ととびらが開かれていくような読書体験だった。
読み終わって本を閉じても、一度大きく開かれた物語のとびらは閉じることがない。
物語と本の造りの共通点や、さまざまな小説への言及、地続きの神話世界。
本好き、小説好きの心を鷲づかみにするモチーフの数々に終始ため息。
目の前で次々ととびらが開かれていくような読書体験だった。
読み終わって本を閉じても、一度大きく開かれた物語のとびらは閉じることがない。