ニコライ・フョードロフは、19世紀後半のロシア宇宙主義哲学者です。フョードロフは日本ではマイナーな存在だと思いますが、ドストエフスキーやトルストイに影響を与えました。ドゥルーズ&ガタリやニック・ランドらの加速主義者と、フョードロフの哲学は親和性が高いとも言われています。さすがロシア発の思想なだけあって、フョードロフの思想は宇宙スケールで規模がデカイです。
この『フョードロフ伝』は、「I 人物と生涯」「II 教義」「III 理念の運命」の三部に分かれています。第I部の伝記が長めでしたが、フョードロフの人生はさほど波瀾万丈ではないので、読み物としては大して面白くなかったですね……(苦笑)。この本のクライマックスは、フョードロフの思想が要約された第II部だと思います。第III部はフョードロフの影響を受けた後進の文化人の紹介で、頁数はさほど多くありません。訳文が全体的に読みやすく、良質な思想書だと思いました。
フョードロフは死を克服し、全ての死者を復活させることを目指しました。当時は臨死者が電気ショックで蘇生した事例があったので、フョードロフはそこに注目しました。私たちは死を研究し死者を復活させるためにありとあらゆる努力を試し尽くし、どうしてもお手上げだったら死を認めろとフョードロフは考えました。この世には「人間、死んだらもうおしまいだ」「死ぬ前に悔いの残らない人生を送ることが大切だ」とか言った具合に、死に対してあきらめる論者が多いと思いますが、フョードロフの死に対する「不屈の思想」には感銘を受けました。
フョードロフは人間を、「全宇宙の主人と変革者の役割を担うべき存在」だと見なしました。フョードロフは全人類を復活させるだけでなく、人類を地球外に移住させたり人類によって宇宙を統治することすらも志向しました。さらにフョードロフは人類の器官を変容させ、飛翔力や遠視力などを身に付けることが必要だと考えました。「増えすぎた人類の地球外への移住」「宇宙に適応するための人類の進化」など、フョードロフの思想はガンダムとの親和性が高いです。ヲタク文化やSFに興味が無い人はロシア宇宙主義にアレルギーを催すかもしれませんが、ガンダムヲタクならフョードロフの思想をスンナリ受け入れられるのではないでしょうか……!?
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フョードロフ伝 単行本 – 1998/6/1
- 本の長さ355ページ
- 言語日本語
- 出版社水声社
- 発売日1998/6/1
- ISBN-104891763647
- ISBN-13978-4891763640
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
死せる父祖の復活、不死の獲得、自然・身体・宇宙の科学的統御…その夢想的理念によってドストエフスキー、トルストイらにも多大なイマジネーションを与えた19世紀末ロシアの幻の思想家ニコライ・フョードロフの本格的評伝。
登録情報
- 出版社 : 水声社 (1998/6/1)
- 発売日 : 1998/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 355ページ
- ISBN-10 : 4891763647
- ISBN-13 : 978-4891763640
- Amazon 売れ筋ランキング: - 972,327位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2023年3月3日に日本でレビュー済み
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2012年9月5日に日本でレビュー済み
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ドストエフスキーの解説本などを読んでいると、ロシアの民衆宗教や思想の風土が気になり始めました。この本がその欲求をぴったり満たしてくれたわけではありませんが、「カラマーゾフの兄弟」でアリョーシャが大地に身を投げ出す場面には、フョードロフの思想が反映されていることなどが述べられており、当たりでもないがはずれでもない、といったところです。
さて、フョードロフという人は奇想天外なことを言います。人間には先祖を復活させる義務があり、その技術を開発しなくてはならないと。
科学や社会が進歩し人間の生活が発展すると信じられた時代には生きていないわたしたちには、そういう時代の無邪気なたわごとにも聞こえますが、じつは、そこには、耳を傾けるべき思想があります。
フョードロフは「われわれには独自なものはなく、すべては授けられたものである」(p.283)と言います。先祖を復活させることの前提には、フョードロフが「人類全体の精神的財産が万人共通のものであるという特別の感覚をいだき、個々の著者の創作は、時代、環境、先駆者たち、そして、最後には、かつてこの地上に生きたすべての人々にどれほどのものを負っているか、ということを理解していた」(p.123)ことがあります。
人間を復活させる技術(これはキリスト教の終末的復活とは区別されるようです)の目的は、「他の生きものを押し退けたり殺したり食べたりする必然性を取り除く」(p.230)という倫理的なものであり、「復活による肉体の変容の後、肉体が、感覚器官や腐敗など、物質としてのさまざまな制約を免れた後はじめて、自由意志による自覚的かつ全面的な悪の拒否が可能となる」(同)と言います。
自然現象の脅威、科学技術の限界、政治、思想、倫理など人文社会科学、人間の精神の未熟さを見せつけられているわたしたちですが、人類全体の精神財産、「すべては授けられたものである」というフョードロフの思想にはまだ学ぶところがありそうです。
さて、フョードロフという人は奇想天外なことを言います。人間には先祖を復活させる義務があり、その技術を開発しなくてはならないと。
科学や社会が進歩し人間の生活が発展すると信じられた時代には生きていないわたしたちには、そういう時代の無邪気なたわごとにも聞こえますが、じつは、そこには、耳を傾けるべき思想があります。
フョードロフは「われわれには独自なものはなく、すべては授けられたものである」(p.283)と言います。先祖を復活させることの前提には、フョードロフが「人類全体の精神的財産が万人共通のものであるという特別の感覚をいだき、個々の著者の創作は、時代、環境、先駆者たち、そして、最後には、かつてこの地上に生きたすべての人々にどれほどのものを負っているか、ということを理解していた」(p.123)ことがあります。
人間を復活させる技術(これはキリスト教の終末的復活とは区別されるようです)の目的は、「他の生きものを押し退けたり殺したり食べたりする必然性を取り除く」(p.230)という倫理的なものであり、「復活による肉体の変容の後、肉体が、感覚器官や腐敗など、物質としてのさまざまな制約を免れた後はじめて、自由意志による自覚的かつ全面的な悪の拒否が可能となる」(同)と言います。
自然現象の脅威、科学技術の限界、政治、思想、倫理など人文社会科学、人間の精神の未熟さを見せつけられているわたしたちですが、人類全体の精神財産、「すべては授けられたものである」というフョードロフの思想にはまだ学ぶところがありそうです。
2020年4月12日に日本でレビュー済み
立花隆氏の「読書脳 ぼくの深読み300冊の記録」でリコメンドしていたので読んでみた。まず、前半はまったく無駄。そして後半は彼の教義について記載してあるのだが内容がまったくの南海ホークスである。誰か分かり易く解説してもらえないものか。