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グラン=ギニョル傑作選: ベル・エポックの恐怖演劇 単行本 – 2010/11/1

4.0 5つ星のうち4.0 1個の評価

闇の中の接吻,幻覚の実験室,悪魔に会った男,未亡人,安宿の一夜 他
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 水声社 (2010/11/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2010/11/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 267ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4891768088
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4891768089
  • カスタマーレビュー:
    4.0 5つ星のうち4.0 1個の評価

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上位レビュー、対象国: 日本

2011年2月20日に日本でレビュー済み
一読して感じるのは、捻じ曲げられそうな狂気と胡散臭いお化け屋敷的な退廃の匂いである。そこでは
人間の業と欲が渦巻き、剥き出しの恐怖が描かれる。どうして恐怖を感じるのか?人はその演劇を見て
身体的な苦痛を感じるのである。描かれるのは硫酸をかけられ焼け爛れた顔や、切り刻まれる身体やギ
ロチンによって落とされる首だ。容赦のない目にあまる惨劇。観客はそれを見て心底震え上がる。実際
、観劇中に恐怖のあまり失神することもあったそうだ。
こういった恐怖を売り物にする見世物は連綿と続く人類の歴史と共に歩んできた。それは闘技場での決
闘から公開処刑にいたるまで、残虐をもとめる裏返しの恐怖として人類が求めてきたものなのだ。
人は血に餓えている。そこにスリルと快楽を見出す。そして安心するのである。自分は大丈夫だ、と。
いくら痛い場面でも、いくら血が流れてもそれは自分とは隔たった世界での出来事である。だから、人
はスリルと恐怖を求めるのだ。
本書に収録されている作品は物語展開が安易なものが多く、ラストの予想がつくものも少なくない。そ
ういった点では完成度は低いのかもしれない。だが、そこに至るまでの過程を愉しみ、予想のつくラス
トの場面(それは惨劇で締めくくられる場合が多い)のカタルシスを味わうのがこの小劇の醍醐味なの
だ。本書の中でおもしろかったのは「責苦の庭」だ。このミルボー原作の世紀末文学をネタにした劇は
オリジナル要素も多分に含み、その残虐な『肉ひもの刑』の効果も相まってなかなか刺激的な一編とな
っている。あとは、巻頭の「闇の中の接吻」の演出が素晴らしい。恋人に硫酸をかけられた男の話なの
だが、これがラストの一瞬まで男の顔が見えないように配置されており、惨劇の頂点と相まって公開さ
れる男の爛れた顔の効果が絶大なのだ。
というわけで、本書はミステリファンにとっては必読の戯曲集であることは間違いない。いろんな意味
で刺激的な一冊なのである。
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