「
幻想症候群 (一迅社文庫 に 2-1)
」なんかの流れの中で書かれた「具現化された人の想い」をテーマに書かれた
いかにもな感じの西村悠作品。他のレビュワーの方も触れられているように上記の「幻想症候群」をはじめ
「
妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
」、「
秋津楓はアたらない! (一迅社文庫)
」を読んできた読者には「ああ、いつもの」という印象
ヒロインのルータが幻想病で人が滅んだ時代、箱根の山奥にある研究所跡で目を覚まし、自分の記憶の欠落に気付く所から物語は始まる
目覚めた彼女の傍にいたシノツクという青年から代々木にある最大のシェルター兼研究所へ向かうよう告げられ、旅を始めるが
その道程で様々な人が滅んだ後もなお残り続ける「人の想い」に触れていく中で彼女自身に変化が起きていくが、その先にあるのは…
改めて西村悠という作家は「やさしさ」が売りなんだなあと実感した。人類がその文明を失い、恐らくは最後の男女となったであろう二人は
客観的に見れば過酷で悲劇的な立場にある訳なのだろうけど、そんな彼らを取り巻く世界はどこまでも優しいのである
その象徴的なエピソードが前半の幻想病によって危険区域に指定された小田原を舞台にした親子の互いを探し求める想いの名残であったり
後半の「人とは何か？」というＳＦでは繰り返し語られてきた問いに対するシノツクの口を借りた作者なりの答えであったかと
ラストエピソードはやや唐突で、駆け足気味の展開だったのが惜しまれるが残酷すぎる真相を突き付けられ、シノツクさえも失いかけた
ルータに作者はやっぱり「やさしさ」で答えるのである。ヌルいといえばその通りかもしれない。だが、西村悠の作品となれば、こういう
落とし所に至るのは仕方ないし、読者の側もそれを期待している部分があるのだからたぶんこれで良いのだろう
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