初代SFC版『フロントミッション』を取り扱った攻略本として本書がいかなるポジションを占めるのか?
また、移植を取り巻く諸事情などについては上巻の方で記述差し上げました。
加えて上巻が攻略本として疑問符が付く部分があったことも当該商品のレビューに記しておきました。
よって省略します。もしお時間が許すならば、そちらからご参照いただけましたら幸いです。
とはいえ、先にひとつ前言撤回しておきますか。
以前は下巻単独でも高評価が付けづらいと申し上げましたが、それは攻略本としての観点でした。
攻略本ではなく、設定資料集として読み込む方に割り切れば本書はかなりの良書に化けると思います。
それから身も蓋もないことを言ってしまえば、初代『フロントミッション』は序盤を除けばそれほど難しいゲームではありません。上巻をすっ飛ばして下巻のみを購入いただくという選択も生まれるとは存じます。
もちろんそれは極論ですが、そう思うくらい私が本書のことを買っているということでなにとぞ。
改めて読み込んだことで、ページ数からは思ってもみないくらいに詰め込まれた情報の量に魅了されてしまったのですね。それから上巻と違って、下巻単独では特にマイナス点が見当たりませんでしたし。
その一方で、上下分冊にせず一冊にまとめてほしかった。それもまた私の偽らざる感想だったりしますが。
おそらくは値段が高騰するので上下分冊に至ったと私は考察するのですが、真相は不明です。
と、それはそれ。アスペクト刊、初代『フロントミッション』攻略本下巻のレビューをはじめていきます。
まず攻略面について。「ハフマン最後の戦い」というサブタイトルも付いている通り、単純な攻略としてはロングリバース島を決戦地として因縁を断ち切る「ミッション30」、そこ一点に絞られています。
というより、この場合は攻略というより本書を彩る演出の一環なのでしょうね。
冗談抜きで初代『フロントミッション』のラスボスはシリーズ最弱といわれています。
ただ、ラスボスの本質は強さではありません。むしろおぞましさの方だったりします。
ヤツを見た瞬間、プレイヤーの誰もが嫌悪感とそれ以上の虚無感を覚えることになるのだと断言できます。
……それがなぜかについて、ここで述べることはしません。
ただ、初見の衝撃を奪うことなく、紹介の任を果たしてくれたことに安堵する私がいたりもしました。
続く、主人公たちが尽力した先のハフマン島の未来予想図についても同じです。けして安穏とは言えない、影を落とすのかもしれないと締めくくられており、苦く切ない結末を迎えた本作にふさわしい語られ方でした。
まぁそれもまた、さておきましょう。
本書の本領は攻略本でなく、設定資料集の方です。冒頭に立ち返って観点から紹介するのが筋というもの。
実のところ本書のシリーズに占める資料的価値はかなり高いため、設定派の方は必読といえます。
そんなわけで巻頭を飾るのはキャラクターデザインを務めた「天野喜孝」氏の画が14Pほど躍ります。
ほかの攻略本には載っていないラフ寄りの構図もみられますね。
氏の画風を活かしながら、しっかりゲーム画面に落としこんだスタッフの手腕をたたえつつ。
続いて、ジオラマ提供などで初代『フロントミッション』の世界観を表現してくださったイラストレーターにしてモデラーである「横山宏」氏、こちらはインタビュー記事と合算して24P配置されています。
作中に登場するヴァンツァーを独自の切り口で立体化しつつ、横山氏の足跡を追った記事内容は門外漢である私でもなかなか興味深く読み解くことができました。時代性もありますが、今読んでも色あせないのでは?
当時の販促で目にすることも多かったビザントやクリントン型はこれからも心に残り続けることでしょう。
時に、シリーズはキャラクターデザインに外部からビッグネームを招聘することが多かったりします。
例としては「末弥純」氏や「山田章博」氏など。けれども発端が天野氏と横山氏の両名だったことの衝撃もまた、ナンバリング作品がここからの十年で継続的にリリースされた一因であったと語れるのかもしれません。
「橋本真司」氏と「土田俊郎」氏、両プロデューサーの対談記事6Pが載っているのも見逃せない。
ゲーム制作の最前線からは少しだけ距離を取って、企画を通すトップ層の視点から制作秘話が語られるのもなかなかに面白いとも思います。今も昔もロボットゲームは売れないと言われて久しい。
成否も定かならぬまったく新たな試みを振り返っただけに、当時の熱量が伝わってきて胸が熱くなりました。
とまれ、ここまででページのうち半数を消化です。ここからはこまごまとしたコーナーが続きます。
ラスボス周りの演出については先述したほか、ヴァンツァー開発史については後年の資料で幾度も語られているので割愛します。視認しやすくよくまとまっていると思いますけどね。
ハフマン島の高精度ジオラマと合わせ、島内の主要都市と主要地形が解説されているのは個人的に嬉しい。
都市、密林、山地、砂漠など。我々がヴァンツァーを駆ったのはこのようなところであったと、思いを馳せても良いかもしれません。豊富な地下資源に恵まれた産業、それ以上に圧倒的な大自然があったんだと。
なお、巻末にはやり込み的なキャラの育成方法や幻となった武器腕「ドラゴンハンド」&「ハープーンボルト」についてなどが言及されています(※のちに移植版で本当に取得できるようになりました)。
ゲーム的な仕様といってしまえばそれまでですが、格闘武器が中盤から意味がなくなってしまう問題を含め、粗削りゆえに改善の余地が生まれた初代の面影を感じ取れますね。続編できっちり解消してくるわけですが。
そして、ある意味本書の目玉コンテンツとして挙げられるのが巻末一歩手前の「パーツリスト」です。
ここではゲーム中に登場する全ヴァンツァーパーツとその武器が一口コメントと共に収録されています。
作中で入手できるタイミングではなくメーカーごとに分けてまとめて収録されている辺り、攻略を目的としていません。ゲーム的な数値は兵器の性能を測るためのフレーバーと割り切っているのが一目瞭然です。
基本、メーカーが試行錯誤する中で型番が進んでいたりで後年に発売されたものの方が性能が上の中、失敗作と設定されているパーツが実際に前の型番より性能的に劣るものだったりするのが面白いですね。
表沙汰になるとも限らないのに、そういった目に見えない作り込みをした当時のスタッフの熱意を感じます。
一部ヘンな設定もないことはないのですが、これらを知った後だとヴァンツァーに対する思い入れもひとしおでしょう。ゲーム的な都合とフレーバー設定を見事に噛み合わせてきています。
こういった設定は継続してほしかったのですが、ほとんどを網羅的する試みは次回作以降みられなくなりました、残念です。設定にとらわれ過ぎるとゲーム作りに制約が生まれてしまうのもわかるのですけどね……。
以上。
極彩色をプレイヤーの網膜に叩き込み衝撃的なストーリー展開を下支えした天野氏とカーキ色のミリタリズムで後方から世界観への没入を援護する横山氏に象徴された――、なるほど攻略本らしくない攻略本です。
もっとも、両氏のファン向けにはより充実した内容の『フロントミッション―in Huffman』なる画集が別個に存在します。
この本だけことさらにおススメするわけにはいかないのですが、あちらは高額な分価格的には満足いくかと。
時に、ゲームを遊んだだけでは表に出ないメーカーなどフレーバー要素の充実っぷりがこの当時からの『フロントミッション』の特色であったわけですね。シナリオの要請もあったとはいえ、この作り込みはすごい。
試みは以後も継続していくわけですが、その辺を語ると長くなるので後年の攻略本の紹介にお任せください。
そんなわけで、もしよろしければNTT出版から発売された『ミリタリーガイド』と合わせ、ハフマン島の歴史、改めてご賞味いただけましたら幸いです。関連書籍のエネルギーはさしずめ造山活動のごとし?
次があるかもわからないからこそ、すべてを叩きつけた原点たる「ハフマン島」があなたを待っていますよ。
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フロントミッション公式ガイドブック (下巻) 単行本 – 1995/7/13
- 本の長さ95ページ
- 言語日本語
- 出版社アスペクト
- 発売日1995/7/13
- ISBN-104893663879
- ISBN-13978-4893663870
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
スーパーファミコンソフト「フロントミッション」の公式ガイドの下巻。キャラクター設定や開発秘話、ゲーム世界のメーカー別パーツカタログなど、関連情報が満載。
登録情報
- 出版社 : アスペクト (1995/7/13)
- 発売日 : 1995/7/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 95ページ
- ISBN-10 : 4893663879
- ISBN-13 : 978-4893663870
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