「まったく、何てことをしてくれた」と言わねばならない。ラヴィニアとジョオ、２人のすれ違う想いがシリーズ最大の悲劇として描かれてしまった。前半と後半とで大きく異なる様相を見せるが、相変わらずな茸味とセーラのラヴラヴっぷりが全開な前半はさすがに今回に限りどーでもいい。幕間で突如描かれる５年前の出来事。これまでずっとチラ見せ程度でしか触れられてこなかった、セーラがこの後茸味と出会うまでＢ.Ｏ.Ｄ.を抜けなくなったエピソード、ラヴィニアの暴走が綴られる。これがまた水脈の人生を辿っており【運命鏡転写理論】（フランシスセオリー）の信憑性を裏付けてしまっているのだが、むしろ、この理論の結末が本遍最後に描かれたようなものならばあまりに無慈悲というか、宿命にしてはあまりに残酷との思いを禁じ得ない。後半の全てを割いて描かれるバトルは、超鋼機武闘会（スティールアーツ）としては勝敗が決しているのである。なので、後半のさらに後半は単なるデスマッチ。ラヴィの側から見れば相互理解を試みるも受け入れてもらえない理不尽な戦いであり、ジョオの側からは積年の恨みを晴らし、ようやく手に掴みつつある念願を果たすための、傍から見れば身勝手な戦いとなる。しかも、ラヴィの実情、その裏表のない善人振りを知って心が揺れるジョオなのだが、止まれない想いと後押しする存在がさらに悲しい結末へのトリガーとなる。
そもそもジョオの想いには何となく引っかかるものを感じるのだが、それは、ジョオの想いを利用しているようにも思える人物の冷酷な言動と、最後の最後に描かれたご無体な引きによってジョオが体のいい“犬”にされているのでは？とも見えてしまうからである。ならば哀し過ぎる。茸味の動向も気になる。やけに明るいテンションで書かれたあとがきに今後の希望を見出したい。
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