この本は、原発の問題点、特に福島第一原子力発電所の事故に対する国の対応の問題点、脱原発の可能性と再生可能エネルギーの拡大のための具体的対応、などについて分かりやすく具体的に述べたもので、優れた内容になっている。本の後半には、福島第一原発の事故を受けて、ドイツでは脱原発の方針を打ち出したが、それに至る過程での、安全なエネルギー供給に関する倫理委員会の議論の内容をまとめた報告の全部の和訳が載せられていて、大変参考になった。表題に「北海道」と限定的に書かれているが、内容の大半は我が国全体に関わるものであり、北海道の外の人にとっても興味深いものである。
著者は環境経済学、産業技術論を専門としており、原発の科学的・工学的観点からというのではなく、環境・公害・経済・社会制度のマクロレベルでの多面的な観点から、脱原発に至るための再生可能エネルギーの拡大の方策を論じている。福島第一原発事故に対しては、公害問題として見た場合に、国のとってきた対応が、これまでの我が国での4大公害裁判の結果と比して、どこがおかしいのかを明確に論じている。被害者救済に優先して加害者救済の対策がなされたこと、住民帰還の目途さえ立たないうちの「事故収束」宣言など、いくつものそうした例がある。「原子力損害賠償支援機構法」が持つ問題点が具体的に指摘されているところも勉強になる。一方、建設的な議論として、再生可能エネルギーは地域密着型であり、それが地域経済活性化につながっているドイツとデンマークの例を示しつつ、北海道での具体的な取り組みの現状とこれからの課題が述べられている。北欧の自然と多くの共通点のある北海道において、ドイツやデンマークでの自然再生エネルギー振興の経緯を参考にしつつ、我が国における一つのモデルを作っていこうという、著者の強い思いが感じられる。
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脱原発時代の北海道: これからのエネルギーの話をしよう 単行本 – 2012/5/1
吉田 文和
(著)
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社北海道新聞社
- 発売日2012/5/1
- ISBN-104894536536
- ISBN-13978-4894536531
登録情報
- 出版社 : 北海道新聞社 (2012/5/1)
- 発売日 : 2012/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 222ページ
- ISBN-10 : 4894536536
- ISBN-13 : 978-4894536531
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