小松左京の初期作品だが、今から60年近く前にこれほど壮大で濃密なSF小説が書かれていたとは驚異としか思えない。明晰な洞察力と緻密な分析。果てない想像力と哲学的な深い思考力。それにも増して、人間への切ないほどの愛着心を込めて書かれているので、単なる娯楽的なSF作品とは一線を画している。
最高の知的生物である人間の意識を最大限にレベルアップすることにより、時間と空間への挑戦と支配を試みる、ということが作品のテーマである。滅亡した地球から逃れ、宇宙に漂い生きる人間の苦悩と破滅。人間の限りのない欲望と傲慢による破壊と再建の繰り返し。ときに難解過ぎて混乱する箇所もあるが、ストーリーの発想と展開の面白さに引き込まれて、一気に読み終えた。多分、今後もまた読み返すだろう。
日本の戦中と戦後を生き抜いて、確かな洞察力で日本を直視してきた作者の渾身の思いが、現代を生きる者への伝言として感じられるからだ。
小松左京といえば「日本沈没」が代表作品だが、初期の作品にも傑作が多い。この作品が筆頭に挙げられると思う。
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果しなき流れの果に (ハルキ文庫 こ 1-1) 文庫 – 1997/12/1
小松 左京
(著)
N大学理論物理研究所助手の野々村は、ある日、研究所の大泉教授とその友人・番匠谷教授から一つの砂時計を見せられる。それは永遠に砂の落ち続ける砂時計だった! 白堊紀の地層から出土されたというその砂時計のなぞを解明すべく発掘現場へと向かう一行だったが、彼らは知る由もなかった──その背後で十億年もの時空を超えた壮大な戦いが展開されていようとは。「宇宙」とは、「時の流れ」とは何かを問うSFの傑作。(解説・大原まり子)
- 本の長さ437ページ
- 言語日本語
- 出版社角川春樹事務所
- 発売日1997/12/1
- ISBN-10489456369X
- ISBN-13978-4894563698
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登録情報
- 出版社 : 角川春樹事務所 (1997/12/1)
- 発売日 : 1997/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 437ページ
- ISBN-10 : 489456369X
- ISBN-13 : 978-4894563698
- Amazon 売れ筋ランキング: - 319,660位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1931年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。星新一、筒井康隆とともに「御三家」と呼ばれる、日本を代表するSF作家(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 小松左京セレクション1 宇宙漂流 (ISBN-13: 978-4591118603)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年3月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
若き日の小松左京の代表作。今もって、ヒストリカルベストに選ばれているという。40年ぶりに再読した。
「全ての時間、全ての空間を認識する」とはどういうものなのか、小松左京らしい壮大な誇大妄想に圧倒される。
ところどころに時間と空間にまつわる論理が記されているが、正直、意味不明である。「これ、書いた本人も意味わかってへんのとちゃうか」という失礼な考えも沸いてくる。物理学や数学の素養があれば、違うのかもしれないが。
全ての時間と全ての空間、これを表現するために、「歴史を根本から改変して、知的生命体をより速やかに高次のレベルに移行させようとする」集団と、それを阻止する側の追跡劇の程を成しているが、いわゆるタイムパトロール物ではない。
ここに記されているのは、「進化することも、淘汰されることも、いづれも突き詰めれば残酷な現象なのだ」という認識だ。
また、この「物語」の登場者は、誰一人として報われない。何かを成しえたとか、幸せを手に入れたとか、そういう世俗の求める展開は一切、ない。
そして、この追跡劇も、それを監視する存在も、更なる高次の存在に支配され、更にはその高次の存在もまた・・・という、無限の階層の連なりにさらされ、読者は途方に暮れることになる。
しかし、その壮大な舞台の幕を引くのは、結局は人の小さな情愛であることに、このテーマを取り扱うには人間がいかに小さな存在であるかを思い知らされる。
それだけではない。「全ての時間、全ての空間」を網羅する追跡劇を「時系列」として記載せざるをえないという矛盾が立ちはだかる。
「全ての時間、全ての空間」を監視できるなら、反乱者をどこで追い詰めたかは、既に「わかっているはず」だからだ。
その矛盾を孕んでなお、瞠目に値する作品なのだ。
「全ての時間、全ての空間を認識する」とはどういうものなのか、小松左京らしい壮大な誇大妄想に圧倒される。
ところどころに時間と空間にまつわる論理が記されているが、正直、意味不明である。「これ、書いた本人も意味わかってへんのとちゃうか」という失礼な考えも沸いてくる。物理学や数学の素養があれば、違うのかもしれないが。
全ての時間と全ての空間、これを表現するために、「歴史を根本から改変して、知的生命体をより速やかに高次のレベルに移行させようとする」集団と、それを阻止する側の追跡劇の程を成しているが、いわゆるタイムパトロール物ではない。
ここに記されているのは、「進化することも、淘汰されることも、いづれも突き詰めれば残酷な現象なのだ」という認識だ。
また、この「物語」の登場者は、誰一人として報われない。何かを成しえたとか、幸せを手に入れたとか、そういう世俗の求める展開は一切、ない。
そして、この追跡劇も、それを監視する存在も、更なる高次の存在に支配され、更にはその高次の存在もまた・・・という、無限の階層の連なりにさらされ、読者は途方に暮れることになる。
しかし、その壮大な舞台の幕を引くのは、結局は人の小さな情愛であることに、このテーマを取り扱うには人間がいかに小さな存在であるかを思い知らされる。
それだけではない。「全ての時間、全ての空間」を網羅する追跡劇を「時系列」として記載せざるをえないという矛盾が立ちはだかる。
「全ての時間、全ての空間」を監視できるなら、反乱者をどこで追い詰めたかは、既に「わかっているはず」だからだ。
その矛盾を孕んでなお、瞠目に値する作品なのだ。
2023年9月13日に日本でレビュー済み
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この本きっかけでズッポシ
小松左京のSFにハマりました。
言い回しがとても楽しい。
分かりやすく面白い。
面白いSF読みたいなら
絶対に小松左京読むべき!
小松左京のSFにハマりました。
言い回しがとても楽しい。
分かりやすく面白い。
面白いSF読みたいなら
絶対に小松左京読むべき!
2019年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とにかく、スケールが大きい。
神がかり的な装置類を分かりやすい単語で表現(置き換え)しているが、僕にはわかりずらかった。
想像力がない僕は、読んでいてしばし本の中(4次元)で迷子になってしまいました。
神がかり的な装置類を分かりやすい単語で表現(置き換え)しているが、僕にはわかりずらかった。
想像力がない僕は、読んでいてしばし本の中(4次元)で迷子になってしまいました。
2022年12月13日に日本でレビュー済み
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最高でしたラストシーンにつながる瞬間、驚愕しました、読んでよかったです
2020年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
永遠に砂の落ち続ける砂時計が白亜紀の地層から見つかる第一章。
実際に話題となった何百万年も前の地層からネジが見つかったというオーパーツ(Out Of Place Artifacts)に関する記述や世界中の謎の事件などを取り込むことで、「ムー」的な古代ロマンに思いをはせるワクワク感もあり、非常に面白いです。
そしてこの謎に近づくものが次々と事件に巻き込まれる展開を経たあとのエピローグ(その2)における感動的な最初の結末。
この前半部分の物語はサスペンス&ミステリー的で、エピローグにおける物悲しさも相まって、ある意味分かりやすく親しみやすい感動を味わえます。
しかし、本作の本領が発揮されるのは、第3章から。
ここからとてつもなく壮大な物語へと発展していきます。
その壮大さは、読者を置いてけぼりにしてしまう感があるほどで、実は私自身も十分理解できているわけではありません。
例えば、前半の主人公野々村が、なぜこのような立場の活動をとるようになったのか、その経緯が記述されていないことも原因かもしれません。
ただ、いったいこの物語はどうなっていくのかという謎は謎のままでも、様々な時代や場所における個々の物語はそれぞれ面白く、この多少の難解さを含む点がかえって本作の人気の要因なのかもしれません。
特に、本作執筆時にはまだ書かれていなかった小松左京の大傑作「日本沈没」におけるその後の日本人が、この作品ですでに書かれていたことには驚きました。
「日本沈没」で田所博士が「日本人は幸せな幼児だった。日本民族はこれから大人にならなければならない。日本民族が実質的になくなってしまうのか、それとも本当に新しい意味での大人民族に大きく育っていけるのか」と述べる場面がありますが、まさに、日本という母なる土地を失った日本民族がその後どうなっていくのか、という点について、超長期的視点で書かれていて、この点非常に興味深かったです。
その意味で、本作は「日本沈没第三部」としての面白みもあります。
そして、前半のエピローグ(その2)とつながるエピローグ(その1)での締めくくり方の巧さに物語の余韻を味わいつつ、誰かと本作について語り合いたくなる、そんな作品です。
実際に話題となった何百万年も前の地層からネジが見つかったというオーパーツ(Out Of Place Artifacts)に関する記述や世界中の謎の事件などを取り込むことで、「ムー」的な古代ロマンに思いをはせるワクワク感もあり、非常に面白いです。
そしてこの謎に近づくものが次々と事件に巻き込まれる展開を経たあとのエピローグ(その2)における感動的な最初の結末。
この前半部分の物語はサスペンス&ミステリー的で、エピローグにおける物悲しさも相まって、ある意味分かりやすく親しみやすい感動を味わえます。
しかし、本作の本領が発揮されるのは、第3章から。
ここからとてつもなく壮大な物語へと発展していきます。
その壮大さは、読者を置いてけぼりにしてしまう感があるほどで、実は私自身も十分理解できているわけではありません。
例えば、前半の主人公野々村が、なぜこのような立場の活動をとるようになったのか、その経緯が記述されていないことも原因かもしれません。
ただ、いったいこの物語はどうなっていくのかという謎は謎のままでも、様々な時代や場所における個々の物語はそれぞれ面白く、この多少の難解さを含む点がかえって本作の人気の要因なのかもしれません。
特に、本作執筆時にはまだ書かれていなかった小松左京の大傑作「日本沈没」におけるその後の日本人が、この作品ですでに書かれていたことには驚きました。
「日本沈没」で田所博士が「日本人は幸せな幼児だった。日本民族はこれから大人にならなければならない。日本民族が実質的になくなってしまうのか、それとも本当に新しい意味での大人民族に大きく育っていけるのか」と述べる場面がありますが、まさに、日本という母なる土地を失った日本民族がその後どうなっていくのか、という点について、超長期的視点で書かれていて、この点非常に興味深かったです。
その意味で、本作は「日本沈没第三部」としての面白みもあります。
そして、前半のエピローグ(その2)とつながるエピローグ(その1)での締めくくり方の巧さに物語の余韻を味わいつつ、誰かと本作について語り合いたくなる、そんな作品です。
2022年4月23日に日本でレビュー済み
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私は今年55歳にして、ほんの2~3年前から小松左京氏の作品に本格的に着手し始めた「にわか」読者だが、「名作」の呼び声高い本作品をkindleで購入し、四日間かけてゆっくり読み、たった今読了。
ん~これは噂に違わない名作ですね。これは凄いのではないでしょうか?
何が凄いって、小松左京という人は、「自身の作品の意味や価値」などを「意識しないで」書いてしまう、という「無意識」的傾向があることから、この作品だって決して「名作をものしよう」などという目的で書かれたものではないにもかかわらず、おそらく本人すら完全には理解していないだろうと思われる域にまで到達してしまっている作品だからです。
「無限遠点」という概念があります。
文字通り、「今自分が存在する時間と空間の現地点から、最も遠い地点」に関する考察です。
これについて、私はかつて考察(思考実験)したことがありますが、「無限遠点」はどこか、その答えは、「自分の背中」、つまり「自分自身」即ち「今、ここ」というものでした。結局それは、漫画でよくあるように、自分が撃った弾が地球を一周して、自分の背中に命中するというあのイメージです。
円環。循環。無限の宇宙の時空間においても、「直線」を無限に果てしなく進んだ果ては、知らず曲線を描いて「今、ここの自分」に戻る、と。敷衍すれば、「人は最初から「目的地」にいた」あるいは「最初から「欲しいもの(探し物)」は手にしていた」という、あのパラドックスです。
私の本作品に対する解釈に「読み違え」がないならば、この作品は、私の「無限遠点に関する思考実験から導き出された答え」と一致することに、唸った、というわけです。
それとは別に、この作品って、「2001年宇宙の旅」より以前に書かれたものですよね?
「日本のSFのレベルの高さ」を云々する以前に、もはや謙虚に押し黙るしかありません。。。
ん~これは噂に違わない名作ですね。これは凄いのではないでしょうか?
何が凄いって、小松左京という人は、「自身の作品の意味や価値」などを「意識しないで」書いてしまう、という「無意識」的傾向があることから、この作品だって決して「名作をものしよう」などという目的で書かれたものではないにもかかわらず、おそらく本人すら完全には理解していないだろうと思われる域にまで到達してしまっている作品だからです。
「無限遠点」という概念があります。
文字通り、「今自分が存在する時間と空間の現地点から、最も遠い地点」に関する考察です。
これについて、私はかつて考察(思考実験)したことがありますが、「無限遠点」はどこか、その答えは、「自分の背中」、つまり「自分自身」即ち「今、ここ」というものでした。結局それは、漫画でよくあるように、自分が撃った弾が地球を一周して、自分の背中に命中するというあのイメージです。
円環。循環。無限の宇宙の時空間においても、「直線」を無限に果てしなく進んだ果ては、知らず曲線を描いて「今、ここの自分」に戻る、と。敷衍すれば、「人は最初から「目的地」にいた」あるいは「最初から「欲しいもの(探し物)」は手にしていた」という、あのパラドックスです。
私の本作品に対する解釈に「読み違え」がないならば、この作品は、私の「無限遠点に関する思考実験から導き出された答え」と一致することに、唸った、というわけです。
それとは別に、この作品って、「2001年宇宙の旅」より以前に書かれたものですよね?
「日本のSFのレベルの高さ」を云々する以前に、もはや謙虚に押し黙るしかありません。。。
2022年1月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
40年前、中学生の時に夢中で読みました。
スケールの大きいSFです。
スケールの大きいSFです。